M.A.バラキレフ 交響曲第1番 ハ長調

指揮トーマス・ビーチャム
演奏ロイヤル・フィルハーモニック管弦楽団
録音1955年11月26日、12月2,6,15日
カップリングバラキレフ 交響詩「タマーラ」
発売EMI
CD番号CDM 7 63375 2


このCDを聴いた感想です。


 バラキレフというと、曲の印象がどうこうというよりもムソルグスキーやリムスキー=コルサコフが加わっていた『ロシア五人組』のリーダーとしての活動で記憶されています。例えばモーツァルトやベートーヴェン辺りはもっと古い時代の人物ですが、曲に接する機会が多いため、現在でも身近に感じられるのに対して、バラキレフの場合は、ナポレオンやフリードリヒ大王のような歴史上の人物と同レベルで、歴史の教科書ならぬ音楽の教科書で試験のために覚えなければならない人物で、ほとんど、作曲『も』していた人というイメージしかありません。
 同じ五人組の中でも、ボロディン、ムソルグスキー、リムスキー=コルサコフが現代でも高く評価されているのに対して、バラキレフは最後の一人のキュイと並んで、ほとんどその3人が語られる際におまけで登場する程度で、現代ではリーダーだったとは思えないほど存在感が薄くなってしまいました。まあ、途中で喧嘩別れしたのもさらにイメージを悪化させたのかもしれませんが。
 そんなバラキレフの交響曲第1番ですが、これがまた評判が良くありません。
 バラキレフの代表曲は、どうやらピアノ曲の「イスメライ」のようで、交響曲第1番は完成まで33年も掛かっているのに今一つ受けが悪いようです。
 それどころか、その33年の間にあった10年ほどの隠遁生活の間に感性が硬直化してしまい後年の作品にはろくな物が無いなどと書かれる始末で、曲そのものもダラダラと長く冗長なだけとか構成や形式が陳腐とか、たいてい悲惨極まりない評価をされています。
 わたしの聴いた印象としても、そう評価されても仕方ないかな、と思いました。
 メロディーや雰囲気などロシアの民謡風で、その泥臭さが親しみやすいのですが、全曲(全4楽章、演奏時間40分程度)ほとんどそれ一本槍なのです。
 もちろん楽章によって(楽章の中でも)テンポの速い遅いはありますし、明るい部分も暗い部分もありますが、明るい部分でもどこか憂鬱感が漂い、かといって暗い部分も絶望的というほどでもない。結局、シベリア鉄道に乗って果てしなく続くタイガ(針葉樹林)を見ているようなもので、たしかに木の種類が多少変わったり、日が当たって明るかったり陰で暗かったりする部分もありますが、延々とタイガが続いていることには変わりはなく、この曲も最初から最後までどこか似た雰囲気のままなのです。
 これでは、同じ調子で長く続けだけと言われても、あまり否定できないでしょう。
 しかし、二度と聴く気がしないかというと、少なくともわたしはそうではありません。
 こういった同じような雰囲気がずっと続いてもあまり気にならないという個人的な好みも絡んでいますが、むしろ好きな方です。
 なによりメロディーと雰囲気の親しみやすさが好印象でした。
 世の有名作曲家のように高尚ではないかもしれませんが、メロディーは素朴で優しく、恥ずかしげもなく金管がべったりと出てきたり、チャイコフスキーの交響曲第4番の第4楽章のように派手に打楽器を鳴らして盛り上げていくところなど、いかにもロシアっぽく、明快で楽しくなってきます。
 個人的には結構面白く聴けたのですが、人に薦められるかというと……それはまあちょっと考えてしまうところです。(2005/9/24)


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