L.v.ベートーヴェン 交響曲第4番 変ロ長調

指揮コリン・デイヴィス
演奏BBC交響楽団
録音1975年2月
カップリングベートーヴェン 交響曲第7番
発売ユニバーサルミュージック(PHILIPS)
CD番号UCCP-3116(473 771-2)


このCDを聴いた感想です。


 コリン・デイヴィスのベートーヴェンの交響曲第4番は、1991〜93年にかけてドレスデン国立歌劇場管との交響曲全集に含まれている録音がありますが、この演奏は、それより16〜18年前の1975年に、BBC交響楽団と録音したものです。これも本来は全集になる予定だったらしいのですが(一部はロンドン響)、残念ながら途中で中止になってしまったようです。この2種類以外の録音となると、もしかしたらライブ録音などがあるのかもしれませんが、今まで見かけたことはありません。
 そこで、その新旧の2枚を聴き較べてみることにしました。といっても、聴く前は、安定感のあるコリン・デイヴィスのことだから、20年近く年代が開いていてもそう大きな違いはないだろうなと予想していましたが、これがまた冒頭から大きく違うのです。というより序奏のアダージョが一番違います。
 BBC響との旧録音の方が、ドレスデンとの新録音に較べ、ずいぶんテンポが遅いのです。
 いや、他の指揮者の演奏と較べても、BBC響との録音は、極端に遅い方です。
 序奏は第38小節までが遅いテンポのアダージョで、第39小節から速いテンポのアレグロ・ヴィヴァーチェになり、5小節後の第43小節目で、音楽が完全に軌道に乗ります。
 この第43小節目に到達するのが、BBC響との演奏では、4分5秒前後。ドレスデンとの演奏では、3分5秒前後と、1分も違うのです。それだけで、いかにテンポが異なるか想像付くと思います。
 ちなみに、他の指揮者だと、2分30秒から3分ぐらいがざっとの平均で、速いものだと2分過ぎにはもうアレグロに入ってしまうものさえあります。そう考えると、ドレスデンとの録音でさえ、極端とはいえないものの少し遅めです。さらに3分半を超えるものとなると数がぐっと少なくなり、ましてや4分オーバーともなると、このBBC響との演奏の他には、もう一種類しか聴いたことがありません。ちなみにそのもう一種類は、バルビローリが戦前の1936年にニューヨーク・フィル響を指揮したおそらくライブ録音で、これはコリン・デイヴィスよりさらに輪をかけて遅く、なんと4分30秒近くかかっています。たぶんわたしが聴いたことがない演奏を含めても最も遅いうちの一つでしょう。
 さらに、コリン・デイヴィスの新旧盤を聴いて気づいたのは、BBC響との演奏の力の入りっぷりです。いや、これはドレスデンとの演奏に力が入っていないという意味ではありません。BBC響との演奏では、力の入り方が直に表面に出ているのです。
 ドレスデンとの演奏は、芸風も円熟してきたのか、力の入れ方が自然で、音楽の流れもスムーズです。聴いていても素直に音楽が耳に入ってきます。
 一方、BBC響との演奏は、多少まだ若いこともあってか、緊張感が高く、音楽の端々まで力強さが溢れています。序奏のテンポの遅い部分などは、上記にもあるように極端にテンポは遅いのですが、常にピンと緊張感が張り詰めていて、弱いピアノの音でも、柔らかさは保ちながら、力が乗っています。さらに、アレグロ直前の、フォルティッシモで全体が大きく伸ばすところなどは、全力の分厚い響きで圧倒し、それをスパッと切って、テンポ以上に沈黙を長く取り、また全力の分厚い響きが登場してきます。分厚い響きはもちろん、間の長い沈黙も無言の緊張感があり、その繰り返しは、まるでブルックナーでも聴いているかと思えてくるほどです。
 力が入っているのは、序奏を過ぎてアレグロの呈示部に入って以降も、常に伝わってきます。速いテンポになってからは、一歩一歩地面をしっかり踏みしめながらも、ズンズンと前に進んでいくように、テンポとしてはそこそこ快速ながら、フレーズには力があります。古楽器系の演奏にあるような、跳ねるようなリズムの良さではなく、グンと前に突き出すような重みが乗っています。
 また、色彩としても、ドレスデンとの新盤に較べるとより鮮やかです。
 これは、BBC響との旧盤の方が力強さが前面に出ていることと、録音の違い(といっても両者ともPHILIPSですが)もあるのでしょうが、ドレスデンの方は、色彩が淡く全体の音色が溶け込んでいるのに対して、BBC響との方は、それぞれの楽器の音色がよりダイレクトに出ているため、音のエッジがはっきりとしていて、全体として色彩も鮮やかになっています。
 実は、テンポについては、序奏以外は、新旧盤ともそう大きな違いはありませんが、力の見え方や響きの色合いが異なるため、聴いた印象は、意外と大きく異なります。
 両者ともそれぞれの良さがあり、このBBC響との録音は、コリン・デイヴィスのアクティブな面での魅力が出ています。(2010/7/31)


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