L.v.ベートーヴェン ピアノ協奏曲第5番 変ホ長調 <皇帝>

指揮カール・シューリヒト
独奏ピアノ:ヴィルヘルム・バックハウス
演奏スイス・イタリア語放送管弦楽団
録音1961年4月27日
カップリングモーツァルト 交響曲第40番 他
発売ERMITAGE
CD番号ERM 144


このCDを聴いた感想です。


 伴奏のシューリヒトとスイス・イタリア語放送管も十分素晴らしいのですが、なによりソロのバックハウスに惹かれました。
 演奏当時、既に80歳近いのに全然枯れきった演奏ではなく、逆にパワフルと言って良いぐらい力強く弾いています。歌い方も積極的で、ゆったりとした第2楽章でも、感傷に浸って音楽を淀ませたりはしません。常に前へ前へという流れがあります。
 速い楽章の第1・3楽章は、さらに攻撃的で、指揮者のシューリヒトもテンポ良く進めているのに、それをさらにリードして引っ張っていっているかのようです。
 テクニックは、たしかにミスタッチがちょこちょこあったりと幾分衰えているようですが、ライブという点を考えればそうひどいものではありませんし、第3楽章にある速いテンポで3オクターブに渡って降りてくる音階をジェットコースターのように非常に滑らかに均一の音で一気に駆け下りてくる辺り、まだまだ健在だなと唸らされました。
 さらに音色では、高音の澄んだ響きが魅力的です。
 澄んでいるといっても水晶のような硬質なものではなく、清流の流れのような優しいもので、第1楽章終盤のカデンツァでのピアノが弱い音で分散和音のようなメロディーを弾くような部分など、フワッとして幻想的な感じがしてくるほどです。
 中低音は高音に較べると多少濁っていますが、それでも荒れてはいません。
 特に、ずっとフォルティッシモだったりするのではなく一発だけアクセントで強く出てくる和音など、ピアノが壊れそうなぐらい全力でバシーンと叩きつけているのにもかかわらず、荒くならず意外なほど澄んでいるのには驚きました。
 これだけの力強さときれいな響きなら、たしかに死ぬ間際まで現役を続けていても不思議ではないと納得した次第です。

 伴奏のシューリヒトは、80歳近いどころか正真正銘の80歳オーバーと、バックハウス以上にいい年齢ですが、積極的なところはバックハウスに負けていません。
 もともとそういうタイプの音楽が持ち味ですが、速いテンポでキレ良く進めていきます。
 しかも速いといっても無理矢理とか焦ったような不安定さは全く無く、確固たる足取りで安定しています。
 響きが締まっていて緊張感の高い点はライブならではの集中力の表れといったところでしょうか。
 ちなみに、オーケストラのスイス・イタリア語放送管は、シェルヘン指揮の強烈なベートーヴェン全集で有名なルガノ放送管弦楽団と同じ団体です。

 録音状態は、モノラルのライブ録音ではありますが、1960年代ということもあって雑音も少なく聞きやすいものです。(2005/9/17)


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