H.ベルリオーズ 幻想交響曲

指揮エンリケ・バティス
演奏ロイヤル・フィルハーモニック管弦楽団
録音不明(1987年頃?)
カップリングベルリオーズ 序曲「海賊」 他
発売ASV
CD番号CD QS 6090


このCDを聴いた感想です。


 バティスというと、爆裂な演奏することで有名らしいのですが、この演奏では、むしろ響きがスッキリと整い、きれいに響いているという印象を受けました。
 厚みはたしかにありますが、輪郭のぼけたボワッとした重い響きではなく、ギュッと締まって形のハッキリとした強靭な響きで、それがピタッと揃ってキレ良く進んでいきます。
 細かいところまで指揮者の考えが行き届いていて、全体に一体感もあります。
 録音はおそらく1987年頃で、この頃のロイヤル・フィルは結構危なかしい演奏も少なくないのですが、この演奏は、言ってはなんですが、とてもロイヤル・フィルとは思えないくらいピタリと揃っています。
 高い合奏能力の一方で、バティスの本領……と言って良いのかはわかりませんが、強烈なアクセントも聞かせてくれます。
 というと、派手な第4・5楽章を思い浮かべる方も多いと思いますが、実は、第4・5楽章は、それほど強烈ではありません。
 もちろん、大人しいなんてことは全然無く、金管を中心にパンチの効いた硬いアクセントを連発しているのですが、なまじ響きがきれいに揃っているために、『立派』という印象が先にたち、インパクトはそれほど強くないのです。
 音色もずいぶん平たく吹いて、あからさまな生々しい音にしようとしているのはわかるのですが、元がイギリスのオーケストラだけに、きちんとしたしつけを受けた上流階級出身者のようにどうしても育ちの良さが出て上品さが残っています。
 むしろ第1〜3楽章の方が、一見大人しそうに見えて実は意外な凶暴性を秘めているといった感じで、アタックの強さにインパクトがあります。
 さらに、第1〜3楽章は、フォルテからピアノまでのダイナミクスの違いを少し極端なぐらいにつけて良く歌っています。
 特に第3楽章は、じっくりと念入りに歌わせています。
 あまりにも力を入れて歌わせるあまり、テンポはかなり遅く、この楽章の演奏時間は19分16秒と、ほぼ20分近くかかっています。わたしもそれほど多くの演奏を聞いたことがあるわけではありませんが、わたしが持っている12〜13種類のCDの中では断トツの長さです。
 これだけ時間がかかる遅いテンポの演奏というのは、本当はわたしが最も苦手とするタイプの演奏なのですが、この演奏に限っては、それほど長い演奏とは感じませんでした。
 一つ一つのメロディーが良く歌われ、出るところは出て落とすところは落とすというメリハリがきっちりとついていることもあって、テンポの遅さはほとんど気になりませんでした。
 この演奏は、バティスにしては大人しい方かもしれませんが、内容は充実していて十分に聴き応えがあると思います。(2006/6/24)


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