B.バルトーク 管弦楽のための協奏曲

指揮アンドレ・プレヴィン
演奏ロサンジェルス・フィルハーモニック管弦楽団
録音1988年5月3日
カップリングヤナーチェク シンフォニエッタ
発売TELARC
CD番号CD-80174


このCDを聴いた感想です。


 たいへん明解な演奏です。
 定評のあるTELARCの録音によるものも大きいのかもしれません。音の一つ一つがクリアで、しかもくっきりとした輪郭がついています。
 いかにもアメリカらしい演奏というのでしょうかね。第1曲「序奏」や第3曲の「悲歌」でも民俗的な哀愁はほとんど感じられず、逆にドライでハッキリという都会的な雰囲気で、なにやら仕事を手際よく次々と片付けていく有能なビジネスマンの姿が浮かんできます。
 しかし、ドライといっても機械的にこなしているような無味乾燥な演奏ではありません。
 逆にこの第1曲と第3曲は、第5曲「終曲」と並んで全5曲の中でも良い印象を抱きました。
 たしかに都会風なのですが、都会らしい活力があり、エネルギーに満ちています。
 力強くても、腰が重く動きが鈍くなったりせず、素早く反応して、しかも何事も無かったかのように汗一つ見せず、軽々とこなして行くのです。
 響きも鋭く光るメタルのようで、木のような暖かみやホッとするような穏やかな雰囲気はありませんが、クリアで緊張感も高く隅々までビシッと整っています。
 細かい点ですが、特に素晴らしいと思ったのが金管の開放感のある響きです。
 なかでもトランペットの音の抜けはちょっと驚くほどでした。他のオーケストラのトランペットの高い音は、だいたい針のように鋭くなり、ギラギラと輝いていてもどうしても力んでしまい天井に頭を押さえられたかのような少し潰れた音色になりがちなのですが、このトランペットは天井なんて全く無く、軽くどこまでも高くきれいに抜けていくのです。ギラギラではなくてキラキラしています。
 他の金管の音色もほぼそれに準じたもので、第1曲の中盤に登場する金管がフーガのように次々にメロディーを重ねていく部分なども、いくら重なっても混ざってわからなくなったりせず、それぞれのメロディーはクリアのまま音楽だけがどんどん大きくなっていくあたり、思わず『まいりました』と言いたくなってしまったほどです。

 わたしは今までプレヴィンの演奏とは相性が悪く、どれを聴いても良い演奏だと思ったことがありませんでした。
 評判の高いウィーン・フィルとのR・シュトラウスを聴いてもダメで、これはもうよっぽど感覚が合わないものだと半分諦めかけていましたが、この演奏を聴いて、どうやらそうでもないようだと考えを改めました。もしかしたら意外といけるかもしれないとちょっとホッとした気分です。

 ついでにもう一つ補足を。
 この管弦楽のための協奏曲にはエンディングに初稿と改訂稿の二つのバージョンがあります。(Boosey&Hawkes社の総譜には両方とも掲載されているので別に知る人ぞ知るという話ではないでしょう)
 プレヴィンは、おそらく一般的と思われる改訂稿の方、小節数が少し長く、最後にトランペットが朗々とメロディーを吹き、他の楽器が一斉に駆け上っていくエンディングを採用しています。まあこれは初稿を採用する方が珍しいのでごくごく普通ですね。(2005/9/3)


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