A.ブルックナー 交響曲第9番 ニ短調

指揮カール・シューリヒト
演奏バイエルン放送交響楽団
録音1963年3月8日
発売ORFEO
CD番号C 548 001 B


このCDを聴いた感想です。


 シューリヒトのブルックナー第9番というと、晩年にウィーン・フィルと録音したステレオでのスタジオ録音が圧倒的な名演としてよく知られています。
 ブルックナーのステレオ録音は、第9番の他に第3,7,8番の全部で4種類がありますが(第7番のみハーグ・レジデンティ管)、第9番はその中でも第一の出来といわれることが多いようです。

 しかし、実はわたし、このウィーン・フィルとの第9番の演奏はあまり好きではありません(汗)
 といっても、シューリヒトのブルックナーが嫌いな訳ではなく、他の3,7,8番の演奏はむしろ好きなほうですし、特に第8番は今まで聴いた第8番の演奏の中で、たぶんもっとも好きなものの一つです。
 だから、ウィーン・フィルとの第9番を初めて聴いたときには、非常に期待して聴きました。でも、どうも今一つだったのです。
 もちろん悪い演奏ではありませんし、上手いとも思うのですが、なぜかあまり印象に残りませんでした。
 そのまま、シューリヒトの第9番はわたしには合わないのかな、と思っていたところに、今回取り上げるバイエルン放送響との第9番を聴いたのです。
 スタジオのステレオ録音と、ライブのモノラル録音という差はありますが、時期的にはほぼ一緒ですし、演奏の傾向にもそれほど大きな差はありません。
 しかし、こちらのバイエルン放送響とのライブは一発で好きになりました。
 では、ウィーン・フィルとの演奏ではダメで、バイエルン放送響との演奏が気に入った、その差は何かと考えてみると、どうやら『粘り』にあるようです。
 どちらの演奏も、晩年のシューリヒトらしい自然体で淡々とした演奏ですが、なかでもウィーン・フィルの方がより自然で、早い話が作為的な盛り上げをほとんどやっていません。
 音がポーンと出た後は、自然に減衰していくのに任せるという感じですね。
 金管の伸ばしにしろ、弦楽器のメロディーにしろ、ゆるやかに下降していく流れがあり、それに沿って自然と落ち着くべきところに落ち着いていきます。
 それに較べてバイエルン放送響の方は、音が出た後、自然に減衰していくのに任せるのではなく、そこからもう一押し二押しして、さらに一段階上まで盛り上げているのです。
 例えば金管の伸ばしなら、音が出た後、さらにクレッシェンドしていき、これでもかとばかりに盛り上げ、弦楽器のメロディーは、メロディーの終わりに近づくほど表情が濃くなり、テンポまで巻き込んでより大きく歌いこんでいきます。
 こうやって手を加える分人工的な色合いが強くなり、よりあるがままの自然な音楽を好まれる方にとっては不満な点だと思いますが、わたしは逆にこの部分が音楽に起伏と輝きをもたらしているため好きなのです。
 それに、シューリヒトの演奏はもともとがゴチャゴチャと手を加えない音楽なので、多少粘らせても嫌味にならず、ウィーン・フィルとの超然としている演奏よりも、むしろこれぐらい作為があるバイエルン放送響との演奏の方が人間的で、魅力を感じました。

 今のところ、バイエルン放送響との演奏に較べて、あまり好きではないウィーン・フィルとの演奏ですが、まだまだ聴いていくつもりです。
 わたしは『こりゃダメだ』と思っていた演奏でも、何度も聴いているうちにだんだん『実は良い演奏じゃないか』と考えを改めることが非常に多いので、このウィーン・フィルとの第9番もそうなるのではないかと密かに期待しています(笑)(2004/7/31)


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