『メサイア』の版による違い詳細


 年代別版一覧 
1741:初演より前の初稿
1742:ダブリンでの初演時の版です。
スザンナ・マリア・シバ(A)が参加したことで第17曲がアルトのアリアに変更されました。
1743:ロンドンのコヴェントガーデンで演奏された際の版です。
キティ・クライブ(S)が参加したことで第13曲がアリオーソに変更されました。
1745:ロンドンのコヴェントガーデンで演奏された際の版です。
1749:ロンドンのコヴェントガーデンで演奏された際の版です。
イタリア人のジュリア・フラシ(S)が参加したことで第16曲が4/4拍子に変更されました。
1750:ロンドンのコヴェントガーデン(捨子養育院という説もあり)で演奏された際の版です。
ガエタノ・グァダーニ(A)が参加したことで第6曲と第32曲が変更されました。
1754:ロンドンの捨子養育院で演奏された際の版です。
パッセリーニ夫人(S)が参加してグァダーニが担当していた曲を移調して肩代わりしました。
1759:ロンドンの捨子養育院で演奏された際の版です。
総譜:ヘンデルの指揮用の総譜による版です。何回も使いまわされてさまざまな加筆修正削除があるそうです。
1761:ダブリンで演奏された際の版です。ヘンデル自身は既に1759年に死去しています。


曲別の版による違い詳細

第1部

 
第5曲:『Thus saith the Lord』(万軍の主はこう言われた)
 これは次の『But whi may abide the day』の前にくるバスのアコンパニャート(レチタティーヴォ)で、ほとんどの演奏が同じ楽譜を使っていますが、一部の稿のみ冒頭に4小節の導入がつきその後の3小節も若干異なります。
導入無しにアコンパニャートに入る稿で、もっとも一般的なものです。
4小節の導入が入る稿で、1742年初演版でのみ使用されています。
録音はマギーガン盤を除けば1976年録音のマリナー盤のみで、現在ではほとんど演奏されていません。
『無』『有』の両方とも網羅した録音で、マギーガン盤です。
変遷:1741(初稿)『無』、1742(初演)『有』、1743(ロンドン)〜『無』 参考:年代別版一覧へ

 
第6曲:『But who may abide the day of His coming』(その来る日には誰が耐え得よう)
 これは、数曲後の『O thou that tellest good tidings to Zion』のメロディーの短調版のアリアです。多くの場合アルトかカウンターテナーで歌われます。
アルトによる、途中と最後にプレスティッシモになるバージョンで、1750年ロンドン版のみの採用ながら、もっとも一般的に使われています。
通常はニ短調ですがソプラノの場合はイ短調になり、1754年捨子養育版等で使用されています。
また、バスで歌われるパターンは、モーツァルト編曲版やプラウト編曲版でも採用されています。
バスによるアリアで、1743年ロンドン版等で使用されています。『A』と違って速いプレスティッシモの部分が無く、伴奏に8分音符の『タッタ、タッタ』というリズム系の音型が登場するのが特徴です。
B-rバスによる6小節の短いレチタティーヴォで、1742年初演版等で使用されています。しかし、録音としてはマギーガン盤とバット盤のみで現在はほとんど採用されていません。
『A』『A(S)』『B』『B−r』の4種類を網羅した録音で、マギーガン盤です。
変遷:1741(初稿)『B』、1742(初演)『B−r』、1743(ロンドン)〜1745『B』、1749(ロンドン)『B−r』、1750(ロンドン)『A』、1754(捨子養育院)〜1759,総譜『A(S)』、1761(ダブリン)『B−r』 参考:年代別版一覧へ

 
第12曲:『Pifa』(田園交響曲)
 歌がなく、管弦楽のみの曲です。これは長短2種類があります。
33小節の長い版で、A-B-Aというシンプルな3部形式です。初演以降の版で使われています。
11小節の短い版で、上記の版のAの部分のみにあたります。草稿及び最終稿はこちらのようです。
変遷:1741(初稿)『短』?、1742(初演)〜1750『長』?、1754(捨子養育院)〜『短』 参考:年代別版一覧へ
 ※とりあえず最初と最後は短い版で間では長い版が使われていたのは確かなようですが、いつ切り替わったのか正確な時期は特定できませんでした。

 
第13曲:『And lo,the angel of the Lord came upon them』(天使が現れ)
 田園交響曲の次に通奏低音のみの伴奏による短いレチタティーヴォがあり、その次の弦楽器が分散和音で伴奏するアコンパニャート(レチタティーヴォ)です。これも2種類ありますが、歌っているのはどちらもソプラノ(ボーイソプラノ)です。
S1上に上がっていく分散和音の伴奏によるアコンパニャートで、一般的なタイプです。まれにレチタティーヴォとアコンパニャートが別の歌手によって歌われる場合もあります。
S2『S1』の稿が7小節に対して、この稿は31小節もあり名称もアリオーソとなっています。また歌詞も「And lo」ではなく「But lo」で始まり、伴奏も弦楽器の分散和音はなく通奏低音のみです。メロディーは冒頭だけ『S1』とほとんど同じです。1743年ロンドン版等で使用されたらしいのですが、現在こちらを採用している演奏はほとんどありません。
『S1』『S2』の両方とも網羅した録音で、マギーガン盤です。
変遷:1741(初稿)〜1742(初演)『S1』、1743(ロンドン)〜1745(ロンドン)『S2』、1749(ロンドン)〜『S1』 参考:年代別版一覧へ

 
第16曲:『Rejoice greatly,O daughter of Zion』(シオンの娘よ、大いに喜べ)
 トランペットも入る派手な『Glory to God』の合唱の次の曲です。明るい雰囲気のソプラノアリアで、これは拍子の違いで2種類あります。
4/44分の4拍子で書かれていて、こちらの方がより格式ばった感じに聴こえます。1749年ロンドン版以降に使われている版で、現在もこちらの方を採用する場合が比較的多いように思います。
また、モーツァルト編曲版のみテナーによって歌われています。
12/88分の12拍子で書かれていて、こちらの方が柔らかく舞曲に近い印象を受けます。1749年ロンドン版より前に使われていた版です。
これも長さによって2種類に分かれます。
(長)は全156小節(繰り返しも含む)を完全に演奏する版です。
(短)は全156小節から第41〜91小節をカットしたもので、このカットはヘンデル自身によって行なわれています。
『4/4』『12/8(長)』の両方とも網羅した録音で、マギーガン盤です。
変遷:1741(初稿)〜1745(ロンドン)『12/8』、1749(ロンドン)〜『4/4』 参考:年代別版一覧へ

 
第17曲:『Then shall the eyes of the blind be opened』(その時、目が見えない者の目は開かれ)、
『He shall feed His flock』(主は牧者のようにその群れを養い)
 『The shall the eyes〜』の方は短いレチタティーヴォで、『He shall feed〜』は12/8拍子のゆったりとしたアリアです。二重唱版が一種類、独唱版が二種類あります。メロディーはどの版でも同じです。
レチタティーヴォはアルト(カウンターテナー)、アリアは前半がアルト(カウンターテナー)で、後半に転調してソプラノで歌われます。現在もほとんどこの版が使われています。
レチタティーヴォ、アリアともソプラノにより歌われ、調も変ロ長調になっています。1754年捨子養育院版等で使われています。
A(CT)レチタティーヴォ、アリアともアルト(カウンターテナー)により歌われ、調はヘ長調です(レチタティーヴォは『2』と同一)。1742年初演版や1743年ロンドン版等で使われていたようです。ヤーコブス盤は、調はヘ長調のままで、前半をアルト、後半をカウンターテナーが担当しています。
『2』『CT』の2種類を網羅した録音で、マギーガン盤です。
変遷:1741(初稿)『2』、1742(初演)〜1743(ロンドン)『A』、1745(ロンドン)〜1749(ロンドン)『2』、1750(ロンドン)『A』、1754(捨子養育院)『S』、1759(捨子養育院)〜『2』 参考:年代別版一覧へ
 ※ホグウッド盤の解説によると初稿は『S』となっています。

 

第2部


 
第20曲:『He was despised』(彼は侮られて人に捨てられ)
 第2部の第2曲目にあたる繰り返しを伴う長いアリアです。おそらくメサイアの中で最も長い曲ではないでしょうか。ただ、あまりの長さのためかカットされる場合もよくあり、A-B-A形式のBの部分が終って曲の冒頭に戻った際、本来なら2回目のABの前まで完全にもう一度繰り返すはずなのに冒頭で終らせたり、場合によってはBに入らず、最初にAを演奏しただけで終らせているもののあります。また、歌い手については、ほとんどの場合はアルト(カウンターテナー)によって歌われますが、ごく一部の演奏に、メロディーは同じもののソプラノによって歌われたものもあります。
A-B-A繰り返しを完全に行っているもので、これが標準的な演奏です。
A-B-a1回目のABは楽譜通り演奏し、冒頭に戻ってからAを一部カットしているものです。カットの部分や小節数は演奏によって大きく違いがあります。冒頭の前奏部分のみを繰り返したものや、逆に前奏部分をカットして歌が入る部分に戻るものなど、いろいろです。
A1回目のAのみ演奏し、B自体カットした演奏です
a-B-a1回目のAの部分から既に一部カットしている演奏です。この版を使っているのは現在のところメンデ盤のみです。
A-BBの最後まで普通に演奏したところで、ダ・カーポせずにそのまま終わっている演奏です。この版を使っているのは現在のところバーンスタイン盤のみです。
『A-B-A(A)』『A-B-A(S)』の2種類を網羅した録音で、マギーガン盤です。
変遷:1741(初稿)〜1759(捨子養育院)『アルト』、総譜『ソプラノ』、1761(ダブリン)〜『ソプラノ』 参考:年代別版一覧へ
 ※A-B-AA-B-a等のどのパターンを採用するかは版に関係なく、演奏者の裁量と思われます。

 
第24曲:『All they that see Him』(彼を見るもの全てが彼をあざ笑い)
 華やかな『All we like sheep』の次にある、短いレチタティーヴォです。メロディーはどの版でも共通ですが、歌手がテナーの場合とソプラノの場合があります。
テナーによる演奏で、こちらを採用している方がほとんどです。
ソプラノによる演奏で、基本的にモーツァルト編曲版のみこちらです。モーツァルト編曲版以外では現在のところ武久版のみ採用しています。
変遷:テナーなのかソプラノなのかは版に関係なく、演奏者の裁量によるものだと思います。 参考:年代別版一覧へ

 
第26曲:『Thy rebuke hath broken His heart』(そしりが彼の心を砕いたので)
第27曲:『Behold,And see if there be any sorrow』(彼に下された苦しみほどの苦しみが、他にあるだろうか)
 第24曲の『All they that see Him』の後、合唱を一曲挟んで、また登場するレチタティーヴォとその次のアリオーソ(解説によってはアリア)です。これも、メロディーはどの版でも共通ですが、歌手がテナーの場合とソプラノの場合があります。
テナーによる演奏で、こちらを採用している場合が多いようです。
ソプラノによる演奏で、まれにこちらの場合があります。モーツァルト編曲版はこちらの版です。
変遷:テナーなのかソプラノなのかは版に関係なく、演奏者の裁量によるものだと思います。 参考:年代別版一覧へ

 
第28曲:『He was cut off out of the land of the living』(彼は生けるものの地から断たれた)
第29曲:『But Thou didst not leave His soul in hell』(あなたは彼を黄泉に捨ておかず)
 『Behold,And see if there be any sorrow』のアリオーソに続くアコンパニャート(解説によってはレチタティーヴォ)とアリアで、この曲辺りから雰囲気が明るくなり始めます。
これもメロディーは共通で、歌手がテナーの場合とソプラノの場合がありますが、ごく一部の演奏のみ第28曲と第29曲で歌手が異なっています。そういう演奏については『TS』(この場合はアコンパニャートがテナーでアリアがソプラノ)というふうに表記します。
テナーによる演奏で、こちらを採用している場合が多いようです。
ソプラノによる演奏で、たまにこちらの場合もあります。モーツァルト編曲版はこちらの版です。
変遷:テナーなのかソプラノなのかは版に関係なく、演奏者の裁量によるものだと思います。 参考:年代別版一覧へ

 
第32曲:『Thou art gone up on high』(あなたは虜を率いて高い山に登られた)
 『Let all the angels of God worship him』と『The Lord gave the word』の両合唱の間にある3/4拍子のアリアで、たいていはアルト(カウンターテナー)、まれにソプラノやバスでも歌われます。また、アルトで歌われる場合でも2種類の楽譜があり、しかも歌が出てくるまではほとんど同じです。歌が登場してからはかなり違うのですが、一番手っ取り早い見分け方は歌の登場するタイミングで、3拍子の2拍目にあたるか3拍目にあたるかでどちらかわかります。
A1アルトによる1種類目の版で、歌が3拍子の2拍目から登場するものです。1742年初演版や1750年ロンドン版以降で使われています。
ソプラノによって歌われる場合は、メロディー等はほぼ同じですが、伴奏やメロディーに一部オクターブ上に上がっている部分があります。1754年捨子養育院版で使われています。
A2アルトによる2種類目の版で、歌が3拍子の3拍目から登場するものです。1743年から1749年までのロンドン版で使われています。
録音としてはマギーガン盤のみで現在ではほとんど採用されていません。
バスによる演奏で、アルトの2種類とはまた別の楽譜です。歌は3拍子の3拍目から登場しますが、A2よりも一小節前です。1741年初稿で使われています。
『A1(CT)』『A2』『B』の3種類を網羅した録音で、マギーガン盤です。
変遷:1741(初稿)『B』、1742(初演)『A1』、1743(ロンドン)〜1749(ロンドン)『A2』、1750(ロンドン)『A1』、1754(捨子養育院)『A1(S)』、1759(捨子養育院)〜『A1』 参考:年代別版一覧へ

 
第34曲:『How beautiful are the feet』(ああ麗しいかな)
 『The Lord gave the word』の合唱の次に来るアリアですが、たぶんこれと、次の『Their sound is gone』の2曲がメサイアの中でもっとも異稿の多い曲だと思います。
 『How beautiful』はソプラノのアリアとして歌われる場合が多いのですが、ソプラノでも2種類あり、A-B-A形式のAだけで終わるものと(これが一般的)、アリアがBの部分の『Their sound is gone』(メロディーは第35曲の合唱のものとほぼ同じ)に入り、その後ダル・セーニョして『How beautiful』に戻るものがあります。
 また、アリアがアルトで歌われるもののあり、これはまたソプラノの場合とメロディーが若干異なっています。
 さらにそれ以外に、アリアのソロが一人ではなくソプラノとアルト(あるいはソプラノ二人かアルト二人)の二重唱になっている稿もあり、これは曲の切れ目なしに合唱が入ってきて、そのメロディーは第35曲の『Their sound is gone』とほぼ同じですが、歌詞は『Break forth into joy』となっています。また他の単独のアリアの場合は拍子は12/8ですがこの曲のみは3/4です。ただ表記上は大きく違っていても耳で聞いた時には拍子の違いはほとんど感じられません。むしろ最初の音がDではなく5度高いAで始まるという違いの方が耳につきます。
S1ソプラノによるアリアで、A-B-A形式のAのみの版です。大半がこの版を使っています。
S2同じくソプラノによるアリアですが、A-B-A形式のBの『Their sound is gone』もソロが歌い、ダル・セーニョしてまた「How beautiful」に戻ってくる版です。一部の演奏でのみ採用されています。
アルトによるアリアでメロディーが若干異なっています。
録音としては、マギーガン盤を除けばドラティ盤とポープル盤とヤーコブス盤とナイデノフ盤の4種類のみで、現在ではほとんど使われていません。
3/4拍子のアルト二人による二重唱で『Their sound』の代わりにほぼ同じメロディーで合唱の『Break forth into joy』が入っています。これも採用している演奏はあまりありません。
『S1』『S2』『A』『2』の4種類を網羅した録音で、マギーガン盤です。
変遷は第35曲と合わせて表記します。

 
第35曲:『Their sound is gone out into all lands』(その声は全地に響き渡り)
 『How beautiful are the feet』のアリアの次に来る曲で、合唱によるものとテナーのアリオーソによるものの2種類の版があります。
 また、第34曲が『S2』か『2』の場合は、その曲に既に『Their sound is gone』が含まれていることもあって、カットされる場合もあります。
合唱によるもので、大半はこれを採用しています。
テナーによるアリオーソで、一部の演奏でのみ採用されています。
『合』『T』の両方とも網羅した録音で、マギーガン盤です。
変遷:第34曲と第35曲セットで記載します。
例えば『S1合』となっていれば、第34曲が『S1』で第35曲が『合』を使用した版となります。
ただし、一部の版では、第35曲の代わりに第34曲を2曲演奏したものもあり、例えば『S22』となっていれば、第34曲『S2』の次にまた第34曲の『2』を演奏する版となります。

1741(初稿)『S22』、1742(初演)『2』、1743(ロンドン)〜1745(ロンドン)『2T』、1749(ロンドン)『S1合』、1750(ロンドン)『A1T』、1754(捨子養育院)〜1759(捨子養育院)、総譜『S1合』、1761(ダブリン)『2T』 参考:年代別版一覧へ

 
第36曲:『Why do the nations so furiously rage together』(何ゆえに、諸々の国の人々は騒ぎ立て)
 『Their sound is gone out』の次にあたるバスのアリアで、弦楽器が16分音符で音を細かく刻んでいるスピード感にあふれた威勢の良い曲です。これは全てバスのソロですが楽譜は2種類あり、前半は両者とも全く一緒ですが、長いものと短く途中でレチタティーヴォになってしまうものがあります。
 また、モーツァルト版もまた少し異なっています。
全96小節の、ほぼ最後まで弦楽器の細かい刻みがある長い方の稿です。
全45小節の、途中からレチタティーヴォになる短い方の稿です。
モーツァルト版。形式としては『長』に近いのですが、『長』の96小節が終わった後冒頭に戻り、また最初から第74小節までを繰り返しているので別扱いにしました。
変遷:1741(初稿)『長』、1742(初演)『短』、1743(ロンドン)〜1750(ロンドン)『長』、1754(捨子養育院)〜1759(捨子養育院)、総譜『短』、1761(ダブリン)『長』 参考:年代別版一覧へ

 
第38曲:『He that dwelleth in heaven』(天に座する者は笑い)、
『Thou shalt break them』(おまえは鉄の杖をもって彼らを打ち破り)
 『Thou shalt』はハレルヤコーラス直前のテナーのアリアで、『He shall feed』はその一つ前の同じくテナーによるレチタティーヴォです。
 レチタティーヴォに続いてアリアという形の他に、アリア部分も含めてレチタティーヴォにした稿があります。
レチタティーヴォに続いてアリアに入る稿です。ほとんどの演奏はこちらの稿です。
アリアも含めてレチタティーヴォになっている稿で1743年ロンドン版のみに存在します。録音としてはマギーガン盤とバット盤のみで現在はほとんど採用されていません。
『ア』『レ』の両方とも網羅した録音で、『レ』版を収録しているマギーガン盤及びバット盤は2つとも両方を録音しています。
変遷:1741(初稿)〜1742(初演)『ア』、1743(ロンドン)『レ』、1745(ロンドン)〜『ア』 参考:年代別版一覧へ

 

第3部


 
第43曲:『The trumpet shall sound』(喇叭(ラッパ)が鳴りて)
 トランペットが独唱並みに活躍する曲で、第20曲の『He was despised』と並んでダル・セーニョ(繰り返し)の指定がある長大なバスのアリアです。A-B-Aの形式で後半のAが前半のAの繰り返しにあたります。
 このアリアも第20曲同様、繰り返し部分にカットが多い曲で、本来ならAの部分をほぼ完全に繰り返すはずが一部のみだったり、Bに入らずAのみで終っていたりします。ちなみにモーツァルト版も大幅に改訂されていますが、形式的には最初のAのみということになります。
 また、ダル・セーニョでの繰り返しは第29小節目に戻るよう指定されていますが、作曲当初はダル・セーニョではなくダ・カーポして冒頭まで戻るようになっていたようです。それがダル・セーニョに改められたのは比較的早い時期らしいのですが、一部の演奏ではダ・カーポにしているものもあります。
 一方、歌詞の『be rais'd incorruptible』の部分の歌い方も二種類に分けられます。一つが最後の『ruptible』の『ru』が小節の頭に来て「タンタタン」と跳ねるようなリズムをつくる歌い方で、もう一つは『ru』が一拍早い前の小節の3拍目に来て『ti』が小節の頭になり『tible』が「タンタン」とストレートに下に降りる歌い方です。スコアで見る限りではどちらかというと二つ目の方が本稿で一つ目の方が異稿のような扱いになっていますが、実際には一つ目のパターンが使われることが多いようです。本当はこの点は稿の違いというほどではないのかもしれませんが聴いた感じがかなり異なるので分けました。
A-B-A
(ru)(ti)
楽譜の指定通り完全に繰り返していて、(ru)は『ruptible』の『ru』が小節の頭に来る演奏、(ti)は『ruptible』の『ti』が小節の頭に来る演奏です。(以下同様)
A-B-aAの部分を繰り返す際に省略がある演奏です。
ABの部分に入らずAの部分だけ終っている演奏です。
a1回目のAの部分さえ一部カットがある演奏です。
A-B-C繰り返しがダル・セーニョではなくダ・カーポして冒頭まで戻っている演奏です。
モーツァルト版。形式的にはAのみですが、楽器編成だけでなく山ほど手が入り半分別の曲に聞こえるほど編曲されているため別扱いにします。
変遷:短縮するかどうかや小節の頭を『ru』にするか『ti』するかは版に関係なく、演奏者の裁量によるものだと思います。 参考:年代別版一覧へ

 
第44曲:『O Death,where is thy sting?』(おお死よ。おまえの棘はどこにあるのか?)
 アルトとテナーの二重唱でこの曲の次の『But thanks be to God』の合唱とほぼ同じメロディーです。
 一般的な演奏では二人のソロが同時に登場する唯一の曲です(他は採用されることが少ない第34曲の二人バージョンぐらいです。ちなみに第17曲はソロが二人いますが同時には登場しません)。
 このアルトとテナーの二重唱は長短二種類あります。
 さらに、それ以外に二重唱ではなくアルトのレチタティーヴォになった稿もあります。
全41小節の長いパターンです。
長い方の全41小節の内、第6〜22小節がカットされて全24小節になっています。
アルトのレチタティーヴォで二重唱に較べて大幅に短縮されています。1761年ダブリン版のみの稿です。録音としてはマギーガン盤のみで現在はほとんど採用されていません。
『長』『レ』の2種類を網羅した録音で、マギーガン盤です。
変遷:1741(初稿)〜1749(ロンドン)頃『長』、1750(ロンドン)頃〜1759(捨子養育院)、総譜『短』、1761(ダブリン)『レ』 参考:年代別版一覧へ
※『長』と『短』が切り替わったのは1750年頃ですが正確には特定できませんでした。

 
第46曲:『If God be for us』(もし神が我々の味方ならば)
 終曲の『Worthy is the Lamb』の前にあたるアリアで、メロディーはどの稿も同じですがソプラノによる演奏とアルトによる演奏があります。
 なおモーツァルト版ではアリアでなく全く新たに作曲されたレチタティーヴォになっています。
ソプラノによる演奏で、ト短調です。
A(CT)アルト(カウンターテナー)による演奏で、ハ短調です。
テナーによる演奏で、現在のところマルシック指揮による一種類のみです。
モーツァルト版です。完全に別のレチタティーヴォになっています。
ソプラノによる演奏ですが、原曲を編曲した独自の楽譜を使っています。ウッドサイド版のみです。
変遷:調が異なるということはおそらくそれぞれ別の稿のはずですが、どの版にどちらの稿が使われたかは特定できませんでした。継続調査中です。 参考:年代別版一覧へ

 
第47曲:『Worthy is the Lamb that was slain』(捧げられた子羊は)
 終曲です。『Worthy is the Lamb』から始まる荘厳なホモフォニーの音楽、『Blessing and honor,』の動きのあるポリフォニーの音楽、そしてアーメンコーラスの3部に分かれています。
 2番目の『Blessing and honor,』の音楽は第23小節から始まり、第53小節の4拍目でトランペットとティンパニーが入ってくるところで最高潮に盛り上がりますが(小節番号はWorth is the Lambから通しになっています)、ヘンデルの自身の指示で、第39小節の4拍目からトラペット等が入る直前の第53小節の3拍目までのまる14小節分をカットしても構わないようになっています。
 一部の演奏でこのカットを行なっているもののあります。
カットせずに楽譜通り演奏しているものです。
第39〜53小節をカットしている演奏です。
変遷:いつの時代にカットの指示が書き込まれたかわかりませんし、そもそもオプション的な扱いでどちらでも良かったようです。 参考:年代別版一覧へ



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