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※このSSは「シスタープリンセス」と某作品のパロディーです。「電撃G'sマガジン」か、「シスタープリンセス」のゲームをプレイされていないと意味不明だと思います。


ダブル


 俺には12人の妹がいる。
 その12人が12人とも俺を慕ってくるのはうれしいのだけど……
「お兄ちゃん。せっかくの日曜日ですし、可憐と一緒に楽器屋さんに行きませんか」
「お兄ちゃま。天気もいいし、花穂の花壇のお世話手伝って欲しいな」
「えー、あにぃ、ボクと一緒に、ジョギングに行こうよ!」
「あらっ、お兄様は、私とショッピングに出かけるのよ」
「おにいたまぁ、ヒナと遊ぶのぉ」
「兄上様が側にいてくださるだけで、わたくし、気分がずいぶん良くなりますのに」
「にいさま、もう少しで、姫特製の『激辛ブレインスパークピザ』が出来上がりますの。試食をお願いしますわ」
「あっ、アニキ。アニキの援助のおかげで、こんなロボットが作れたんだよ。ほら、見に来て」
「兄君さま。ワタクシの稽古の相手をぜひお願いしたいのですが」
「トゥデイもトゥモローも、兄チャマをチェキチェキチェキ!」
「くすん……兄や。……お馬さんごっこ……して」
 ………
 せっかくの日曜だからのんびりしようと思っていたが、そんな予定なんてあっという間に宇宙の彼方へ消え去ってしまった。
 朝からこんな調子であっちこっちに引っ張りまわされ、3時を回った頃にはすでにヘトヘト。みんなの誘いの嵐から逃れて、一人なんとか居間までたどり着いた俺は、ソファに倒れるように身を投げ出してつぶやく。
「……あーあ、みんな、俺に構ってくれるのはうれしいんだけど……」
「……だけど?」
「やっぱり、12人っていうのは、ちょっと多すぎるよなぁ」
「……そうかい?」
「ああ、そうだよ……って、おいっ!?」
 慌てて、跳ね起きると、目の前には……
「……やあ、兄くん……黄泉の国から戻ってきたところかい?」
 そこには、顔に微笑を貼り付けた千影が佇んでいた。
 ……目だけは笑っていないところが、メチャメチャ怖い。
「ち、ち、ちちち、千影! いいいい、一体いつからそこに!」
「……兄くんは、私達が多すぎると思うのだね」
 千影は俺の質問に答えず、さらに畳み掛けてくる。
「あ、いや、今のはそういう意味じゃなくて、あの、ほら、なんというか、その、口が滑っ……あわわわ……」
「兄くん……ちょっと、疲れてるんじゃないかな……」
 ふと、千影は凄みを和らげ、心配そうに俺の顔を覗き込んだ。
「むむ。たしかにそうかもしれないな。朝からあちこちを引っ張りまわされたし」
 千影が追求を止めてくれるとは。
 やっぱり、よほど、顔に疲れが出てたのかな。
「……そのソファーで……少し横になって一眠りでもしたら、どうかな? みんなには……邪魔しないように言っておくよ」
「おっ、それは助かる。じゃあ、よろしく頼むよ」
 千影も、さすが年長者だけあって、こういうところに気付いてくれるからありがたい。
 部屋を出ようとした千影は、扉のところで振り返って一言。
「それじゃ……また来世」
「やっぱり、最後はそれかい!」
 お約束のツッコミをかましつつ、俺はゆるゆると眠りに落ちていった。
 
 
「……ゃん」
 
「……ちゃん」
 
「……いちゃん」
 
「…おにいちゃん」
 
 気がつくと、声と一緒に身体がユサユサと揺すられている。
 この呼び方は、可憐か。
 うーん……せっかく、気持ちよく眠っていたのに。
 それに、千影に邪魔しないように言われていたんじゃなかったのか。
「ふわあぁぁ、可憐、もうちょっと寝かせておいてくれよ」
 俺は、大あくびと共にようやく身体を起こして、ぼんやりと声の主に目の焦点を合わせた。
 
 ……あれ?
 
 そこにいたのは、可憐ではなく、髪をおかっぱにしてリボンを結んだ大人しそうな少女だった。
「おにいちゃん……私達のこと、忘れちゃったの?」
「あ、輝(あきら)か!」
 淋しげに笑うその少女は、たしかに俺の病弱な妹の輝だった。
「あに〜 楓花(ふうか)もいるよ〜」
「ぐえっ!」
 横から思いっきり抱きついてきたのは、天然ボケ妹の楓花。
「あー、楓花ちゃんばっかり、にぃにぃに抱きついてずゆいー。にぃにぃ、ゆかりもー」
「うがぁ!」
 反対から飛びついてきたのは、一番年下で甘えん坊の由香里ちゃん。
「こら二人とも! お兄サンが困ってるじゃない!」
「あ、ありがとう、助かったよ」
 楓花と由香里ちゃんをたしなめたのは、背は一番低いけれど、最年長でお姉さん格の美月(みつき)。
「まあまあ美月。ほら、おにぃだって嬉しそうじゃない」
「あのなぁ」
 殺気立つ美月をなだめるのは、美月と同じ最年長だが逆に一番背が高い綾乃。
「でも、にいちゃんってすぐデレデレするんだもん」
「ちょ、ちょっと待て」
 プンとむくれているのは、明るく元気だけどすぐ拗ねる咲(さき)。
「そうよ、にいさんは私のモノなんだから浮気しちゃダメ!」
「おいコラ、いつ俺が若葉のモノになった」
 相変わらず妄想超特急なのは、自信満々の優等生の若葉。
「若葉さん。兄(にい)さまを困らせてはいけませんよ」
「おお、さすが倭(しずか)ちゃん」
 落ち着いて諭したのは、和風で管理人でもある倭ちゃん。
「わ、私知らなかった……あんちゃんが、若葉ちゃんのモノだったなんて……」
「……だから、違うって」
 わたわたと慌てているのは、優しく家庭的で、双子の姉でもある小春。
「せや! アニキはウチと小春の身体だけが目当てやったんやな! なあ、聞いてーな、かんな。ウチら純な心を弄ばれたんや。ヨヨヨ……」
「こらこら、勝手に話を捏造するんじゃない!」
 芝居がかったようすでウソ泣きをしてみせているのが、双子の妹で、お調子エセ関西人の小夏。
「おにいさん……私、信じていたのに……」
「ちょ、ちょーと待て! かんなも小夏の与太話を信じるんじゃない!」
 キッと思いっきり睨んでくるのは、動物好きで人見知りが激しいかんな。
「ふふっ……にいや。みんなに……愛されているわね」
「……一部、ぶっ飛んでいるのもいるのは俺の気のせいか?」
 ミステリアスな笑みを浮かべるのは、神出鬼没で謎が多い乙女ちゃん。
 
 そうやって、一人一人の顔を見ているうちにだんだん思い出してくる。
 そうだった。
 俺の妹は、可憐たち12人だけじゃない。
 輝たち12人もいるんだ。
 ……そうか。俺の妹は、合計24人いるんだな。
 ………
 ……
 …
 に、にぢゅうよにん!?
 ラグビーチームを組んでもまだお釣りがくるぞ。
 仮に、妹達が一人一日一回、一時間ずつ押しかけてくるとしたら……24時間!?
 トホホ、食事するヒマも、寝るヒマもないのか。
 あ、考えただけで眩暈がしてきた。
 クラクラクラ……
「ああっ! おにいちゃん大丈夫?」
 輝の叫び声を遠くに感じながら、俺はそのままソファーに倒れこみ、気を失った。
 
 
「……ゃん」
 
「……ちゃん」
 
「……いちゃん」
 
「…お兄ちゃん」
 
 気がつくと、声と一緒に身体がユサユサと揺すられている。
 俺は身体を起こしながら、いまだはっきりしない頭を振りつつ返事をする。
「ああ、ゴメンゴメン。ちょっと眩暈がしただけだよ。輝」
「……お兄ちゃん。輝って、誰?」
「へっ!?」
 思いがけない返答に、一瞬で意識が戻る。
 目の前にいたのは、俺を揺さぶる格好のまま固まった可憐だった。
「あっ! お兄様! まさかどこかの女じゃないでしょうね!」
 グイッ。
 いきなり、横から咲耶が俺の胸倉をつかむと、そのままキリキリと締め上げる。
「のわぁっ!待ってくれ咲耶! ロープ、ロープ! ちょ、ちょっと俺の話を聞いてくれ!」
「あ〜ら、言い訳なら私は聞きたくないわよっ!!」
 締める力がさらに強くなっていく。
「ち、違う、き、訊きたい事があるんだ」
「ほほー、お兄様。まあ、何かしらぁ」
 とりあえず、締める手を離してくれた。
 なんとか、咲耶の魔手から逃れた俺は、ゆっくりと周りを見回す。
 俺の周りには、可憐と咲耶以外にも、花穂、衛、雛子、鞠絵、白雪、鈴凛、千影、春歌、四葉、亞里亞と、妹達が揃っていた。
「えーと、変な事を訊くようだけど、俺の妹って、これで全員だっけ?」
「はあ? 今更何を言ってるの? お兄様。当たり前じゃない」
 咲耶は眉をひそめ、訝しげに首をひねった。
「じゃ、じゃあ、他にもう12人ほど妹がいたりしない?」
「いるわけないじゃない。お兄様の妹って、ここにいる12人だけに決まってるでしょ。……ちょ、ちょっと、お兄様どうしたの? 急に泣き出したりして」
 嬉しさのあまり、思わず号泣する。
「良かった……やっぱり、夢だったんだ。妹が24人もいなくて、本当に良かった。そうだよ、俺の妹は『たった』12人しかいないんだ。少ないものじゃないか」
 俺は、涙で曇る目で一人一人の顔を見ながら、じっくりと幸せをかみしめた。
 一方、そんな俺の姿を見ながら、微笑を浮かべる人物が一人。
「……ふふ………全ては……私の思った通りに……進んでくれたよ」
 そうつぶやく千影の手には、怪しげな薬の瓶があったという。
 
 
 〜 おわり 〜
 
 
 あとがき
 
 この話はシスプリパラダイスさんに投稿した話です。
 
 すみません。「カラフル・キッス」というゲームを知っている人限定のSSで、しかもやった人は誰でも一度は考えそうな一発ネタです。
 今回のSSは、いつもにまして読者を狭くしているのはわかっているのですが、このゲームを知ったからには、どーしても書きたくなって、つい書いてしまいました(汗)
 ちなみに、この「カラフル・キッス」というゲームは、12人の妹が登場して、その妹がみんな『お兄ちゃん大好き(はぁと)』という、非常にどこかで聞いた事があるようなシチュエーションのゲームです(笑)
 ただ設定自体はシスプリと同じでも、内容の方は、妹同士の関わり合いが多く書かれていたりと、シスプリとはまた異なる良さがありました。
 このゲームの発売は今年(2003年)の3月なので、本当はその時期に書いた方がタイムリーだったのですが、わたしは最近になってやっと終らせたもので(汗)
 それにしても、シスプリと兄の呼称が競合するのを避けるためとはいえ、『にぃにぃ』とは凄いよなぁ(笑)
 ……あっ、書き忘れていましたが、「カラフル・キッス」はシスプリと違い、18禁なので、お気をつけください。
 
 2003年10月9日完成
 2003年11月15日発表

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