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※このSSは「シスタープリンセス」のパロディーです。「電撃G'sマガジン」か、「シスタープリンセス」のゲームをプレイされていないと意味不明だと思います。


GO! GO! ショッピング with 白雪


 ある日曜日の午後……
 暖かい居間で、俺はソファに座って本を読んでいた。
 
 いやー、この『机で遊ぼう! 特選100集』はおもしろいなぁ。
 へぇ、「スチールデスクの引出しでこんなに遊べる」か、なになに……
 
 夢中になって、ページをめくった瞬間
 
 「にょえっ!?」
 
 急に目の前に紙切れが突き出された。
 
 ピラピラピラピラ…
 
 そのまま、目の前で左右に振られている。
 
 驚いて後ろを振り返ると……
 
「なんだ、白雪か」
 
 白雪がソファーの後ろに立ち、俺の頭の上から手を出して紙を振っていた。
 
「もうっ、なんだ、はないでしょう。にいさま」
 
 白雪は正面に回って、さっきの紙切れを両手に持って俺の方に見せる。
 
「これ、な〜んだ」
 
 んーなになに……
 
 紙切れかと思ったら、よく見ると綺麗に印刷された券である。
 そして、その中央には大きく……
 
「抽選券?」
「そうですの。今、ショッピングセンターで買い物すると、この抽選券がもらえるんですのよ。今日から抽選会が始まったことですし、にいさま、買い物がてら一緒に行きません?」
「まあ、別にかまわないが」
「よかった。お米のストックが切れかけてましたから、50キロぐらい買いたかったんですの」
 
 ……ちょっと待て
 
「それって、要するに、俺は荷物もちというわけか?」
「そんなっ、にいさまは荷物持ちなんかじゃありませんわっ!」
「違うのか?」
「にいさまは立派な召使ですわっ!」
 
 あ、あのなあ……
 
「な〜んて、も・ち・ろ・ん冗談ですわよ♪」
 
 ほ、ホントに冗談か?
 
「……まあいいや。一緒に行くよ。荷物持ちぐらいしてやろう」
「さすがにいさま。頼もしいですわぁ」
 
 俺が本をパタッと閉じて立ち上がろうとした時、
 
 くいくいっ
 
 裾が引っ張られる。
 
 ん?
 
 下を向くと…
 
「亞里亞も…いっしょにお買い物行きたいです」
 
 上目遣いで見上げる亞里亞。
 
 おおっ! かわいいかわいい亞里亞じゃないかぁっっ!
 
「ははは、俺が亞里亞の頼みを断るわけ無いじゃないか! よーし、買い物にレッツゴー」
 
 さっ、と亞里亞の手を取って玄関に向かおうとしたところで……
 
 グイッ
 
 肩を引っ張られる。
 
「………もしかして、姫のこと忘れてません?」
 
 チク
 
 頬に鋭い痛みが…
 
「ははは……、白雪。兄さんは、刺身包丁を持って買い物に行く必要はないと思うぞぅ」 
「……ええ、そうですわね。でも買い換える必要があるかどうか、切れ味を試したくなりましたのっ!」
 
 ……ツツー
 
 血を出さずに薄皮だけ切っていくところが、とってもエグイ。
 
「そ、それだけ切れれば、だ、大丈夫だと思うぞー。さ、さあ、一緒に買い物に行こう!」
 
 白雪もニッコリ笑う。
 
「そうですわね。じゃあ、行きましょう」
 
 やっと、凶器をしまう。
 
 ふー……危ないところだった。
 
 
 
「……で、どこから見て周るんだ?」
 
 俺と白雪と亞里亞は、郊外のショッピングセンターに入り口に立っている。
 このショッピングセンターはなかなか大きく、家電から食料品を扱う店まで、何でも揃っている。
 
「……亞里亞、動物屋さん行きたいです…」
「動物屋? ああ、ペットショップですわね。にいさま、どうします?」
 
 亞里亞の意見に俺が反対のわけがない。
 
「すぐ行こう」
 
 亞里亞の手を引っ張ってさっさとペットショップに向かう。
 
 ……白雪を置いてけぼりにしたまま。
 
「ちょ、ちょっと、待ってください。にいさまっ!」
 
 白雪があわてて追いかけてくる。
 
「待ってくださいったらぁ! にいさまぁぁ! ……ううー…こうなったら……えいっ!
 
 パコ〜ン
 
 痛ッ!
 
 後頭部に衝撃を受けて振り返ると、足元には白雪が俺に投げつけたものが落ちている。 
 
 縞々模様のステッキ…
 
 俺は、それを拾い上げ、やっと追いついて来た白雪に突きつける。
 
「……なんだ、これは」
 
「も・ち・ろ・ん、魔法少女には付き物のステッキに決まってるじゃないですの♪」 
 
 ポカポカポカポカッ!
 
 手にしたステッキで白雪の頭を連発で叩く。
 
「痛ぁい! 痛ぁい! ごめんなさ〜い! にいさまぁ! もうしませ〜ん!」
 
 まったく……どこから出してきたんだか……
 
 
 ペットショップには当然のことながら色々なペットがいる。
 しかし、一つの檻の前で、俺達の足がピタッと止まった。
 
「……変わったお猿さん?」
 
 首を傾げる亞里亞。
 檻には『珍獣!? アメリカ直輸入 ビッグフット』と書かれている。
 ……そして中には
 
「チェキー!」
 
 ユニオンジャックのネクタイを締めた生き物がいた。
 
「ひ、姫、知りませんでしたわ。まさか、四葉ちゃんが亜人間だったなんて……」
「……四葉。お前もしかして、成長すると身長3メートルとかになるのか?」
 
「うー…、みんな酷いデス。四葉は四葉デス」
 不満そうな声を上げるビッグフット……もとい、四葉。
 
「四葉はみんなをチェキしてただけなのに…」
「じゃあ、何でこんなところに入ってるんだ?」
「えっ!? それは……いやー、たまたま空の檻があったんで、これはやっぱり探偵としてはチェキしなくちゃと思って中を調べてたんデス。で、扉を閉めたら、これが何と中からは開かない造りになってたんデスネ〜 こりは四葉もビックリ、エヘヘヘ」
 
 ……そりゃ、そうだろ。中からも開いたら、檻の中の動物は逃げちまうだろ。
 
「……同情の余地無しですわね」
「うむ。全くその通り」
 
 頷きあう俺と白雪。
 
「ええーーっ、そんなーー! 店の人に開けてもらうようお願いしてきて欲しいデスーーーーッッ!!」
 
 そんな四葉をキッチリ無視し、
 
「さっ、いい時間だし、そろそろ行こうか」
「そうですわね」
 
 俺と白雪は腰を上げる。
 
「ううっ、四葉を見捨てるんデスか…」
 
 四葉は檻の中から、絶望的な表情で俺達を見つめる。
 
 クイクイ
 
 その時、じっと、檻の前で座って四葉を見ていた亞里亞が俺の裾を引っ張った。
 
「……兄や」
 
 そして、何かをお願いするような目で俺を見る。
 
「あ、亞里亞! 亞里亞だけは四葉のこと助けてくれるんデスね! やっぱり亞里亞は優しいデス!」
 
 
「……兄や、お猿さんに餌あげてもいい?」
 
 
 バタンッッ!!
 
 思いっきり檻の中で突っ伏す四葉。
 
 俺は、亞里亞の目線までかがんで優しく諭してあげる。
 
「亞里亞はやさしいなあ。でもね、野生動物に餌をあげちゃいけないんだよ。餌をあげると一人で生きられなくなっちゃうからね」
「ぐすん……わかりました。亞里亞、我慢します」
 俺は亞里亞の頭を優しく撫でてやる。
「よーし、よく我慢したな。ご褒美に何でも買ってやるぞ」
「兄や……ほんとう?」
「ははは、俺に二言は無いよ」
「亞里亞ばっかりズル〜イ! 姫だって買って欲しいですの!」
「あははは、しょうがないなぁ 白雪も何か買ってあげるよ」
「わぁ、さすがにいさま! 大好きですわぁ!」
「まったく、二人ともしょうがないなぁ。さあ、そろそろ行こうか」
「は〜い♪」
 
 亞里亞の手を引いてペットショップを後にする俺達。
 背後から、
 
「ペットは野生動物じゃないから、餌をやらないといけないんデスッ! っていうか、そもそも四葉は野生動物じゃないデスーーーーーッッッッ!!!」
 
 という声が聞こえてきたが、きっと気のせいだろう。
 
 
 さて…と……
 
「さあ、それじゃ、亞里亞。亞里亞は何が欲しいかい?」
「え、えーと……うーん、うーん……」
 
 一所懸命考えている。
 
「あの……兄や、……亞里亞、ケーキが欲しいです…」
 
 ……ケーキ?
 な、なんて慎ましい望みなんだ。
 まあ、ケーキってところが亞里亞らしいっちゃ、亞里亞らしいが……
 
「はい、はーい! 姫はー、全自動食器洗い機にー、オーブンレンジにー、大型冷蔵庫にー、システムキッチンにー……」
「……帰れ、お前」
「えーっ!! 何でも買ってくれるって言ったじゃないですのっっ!!!」
「あほかーーーいっっ!! そんなもの買える訳ないだろーがっ! だいたい亞里亞なんてケーキだぞ、ケーキ! 値段の差が激しいと思わないのかっ!!」
「にいさま! そんな金銭的な価値観に縛られてはいけませんわっ!」
「普通そーゆーことは金額の少ない方が言うセリフだ! 俺にカード破産しろってゆーのかっ!!」
「だいじょうぶですわ、にいさまっ! ちょーっと遠洋漁業のマグロ船に出稼ぎに行って返済してくだされば、問題ナッシングですわっ!!」
「大有りだっっ! そのまま帰って来れなくなるわっっっ!!!」
「ええっ! 愛する姫のためには、何でもしてくれるんじゃなかったんですのっ!! ……よよよ」
 顔を伏せて、泣き真似をする白雪。
 そして俺は…
 
「さあ、亞里亞。ケーキを買いに行こうな〜」
「……はい。兄や」
 
 亞里亞の手を引いて、さっさと食料品を扱っているスーパーの方へ歩き出していた。
 
「あ〜ん、にいさまぁ。ツッコミを入れてくださらないと、姫、すっごく間抜けなんですけどぉ〜」
 
 一人取り残された白雪は、慌てて俺達を追いかけてきた。
 
 
 スーパーの中は…
 
 『世界のケーキカーニバル! アミーゴケーキ! ビバケーキ!』
 
 というでっかい横断幕が張ってあった……
 そして、下には櫓がそびえ立ち、その周りをサンバの衣装を身に付けたダンサーが踊っている……
 
「……なあ、白雪」
「……なんです? にいさま」
「俺たち、もしかしてくるところ間違えたかなぁ」
「……姫もそう思いますわ…」
 
 二人とも疲れた声だった。
 
 一人、亞里亞だけは、
 
「ケーキがいっぱい……うれしい」
 
 目を輝かせていた。
 
 よく見ると、中ではちゃんと世界各国のケーキもたくさん売られている。
 
「早く…行きたいです」
 
 珍しく積極的な亞里亞に引っ張られるようにして、とりあえず、売ってるケーキをいろいろ見て回った。
 ところが、始めは目を輝かせていた亞里亞の表情が、だんだん曇ってくる。
 
「ん? どうした亞里亞」
「……亞里亞の欲しいケーキが…無いんです……くすん」
「えっ!? ここには世界各国のケーキがあるじゃないですの?」
 白雪が不思議そうに辺りを見回す。
 確かに、これだけ世界各国のケーキがあるんだから、亞里亞が欲しいケーキが無いっていうのはおかしいな。
「なあ、亞里亞。亞里亞が欲しいケーキはどんなケーキだ?」
 亞里亞は半ベソをかきながら俺を見上げた。
 
「……ホットケーキです…兄や」
 
 ズルッ!!
 
 白雪と二人してずっこける。
 
「そ、そりゃ確かに普通は売ってないよな」
「そ、そうですわね…」
 
 ヨロヨロと起き上がる。
 
「くすん……亞里亞の食べたいケーキって…どこにも売ってないんです…」
「あ、亞里亞。ホットケーキだったら姫がいーっぱい作ってあげますわよ」
「……ほんと?」
 亞里亞は上目遣いで白雪を見る。
 白雪はかがみこんで、亞里亞と同じ目線になり、優しく声をかける。
「ほんとほんと。帰ったらすぐ作ってあげますから、今はちょっと我慢してね。ね、亞里亞」
「……はい」
 亞里亞はゆっくり頷いた。
「よし、じゃあ材料を買いに行くか」
 俺たちは、亞里亞の手を引いて、食材売場に向かった。
 
 買い物カゴを手に、陳列棚を見て回る。
「えーとですねぇ……まずは薄力粉と」
「うんうん」
「それから……やっぱり、カレー粉ですわねっ!!」
「……は?」
 
 思いっきり固まる俺と亞里亞。
 
「それに、唐辛子と練りワサビと…」
「ちょ、ちょっと待て! なんでホットケーキを作るのにカレー粉とか唐辛子がいるんだ!」
「何言ってるんですの、にいさま! も・ち・ろ・ん・姫特製、『カレーホットケーキ激辛バージョン』をつくるために決まってるじゃないですの♪」
 
 スパコーン!
 
「痛〜い。麺棒なんてどっから出してきたんですの!」
「いや、その辺にあったから……って、あほかーーっっっ!! 辛いホットケーキなんて食いたくないわっ!」
 白雪は、ちっちっちっと指を振る。
「にいさま、わかってないですわね。今は、激辛がブームなんですのよ」
「そんなの、10年も前に終ったわぁーーーっっ!」
「ええっ!? そうだったんですのっ!? くっ、まさかもう流行ってないなんて… 姫としたことが、抜かってましたわ……」
 白雪がくやしそうにつぶやく。
 
 あ、あのなあ、抜かってるとか抜かってないとかの問題じゃないような……って、だいたいお前何歳だ?
 
「……亞里亞も、甘いホットケーキがいいです…」
 亞里亞が不安そうに白雪の服の裾をつかむ。
「うーん、亞里亞までそう言うんでしたら、しかたないですわね」
 白雪は、しぶしぶカレー粉だの練りワサビだのを棚に戻していく。
「しかし白雪、お前ほんとにまともな料理が作れるのか?」
「失礼ですわね、にいさま。わたしがまともじゃない料理を作ってるとでも言うんですの?」
 白雪は唐辛子を戻そうとしていた手を止めて、俺の方に向き直る。
「だってなあ、カレー羊羹とかダイナマイトミートパイとか、強烈なのばっかりじゃないか」
「いや、それはその、お料理研究部の一員としてはチャレンジして行かないといけませんもの」
 
 ……お料理研究部?
 
「それは、初耳だな。料理研究部に入ってるとは知らなかった」
「うふふ、こう見えても姫、いろいろ研究してますから」
「しかしだな〜 いままでの料理を見ていると、とても料理研究部に入ってるとは思えないんだよなぁ」
「何言ってるんですの、にいさま。姫、こう見えても部長なんですのよ!」
「ぶ、部長!?」
 思わず疑いの目で白雪を見る。
「ほ、ほんとに部長なんですわよっ!」
 白雪が躍起になって反論しようとした時、
 
「あれ、部長じゃないですか」
「どうしたんですか? こんなところで」
 白雪と同じ制服を着た、二人の女の子が親しげに白雪に近寄ってきた。
 
 ……二人とも白雪よりも年上に見える。
 
「あ、あなたたち丁度いいところに」
 白雪はホッとした表情になる。
「……おい、白雪。この二人は誰だ」
 白雪の袖を引っ張って耳打ちする。
「あっ、そうですわね。紹介しますわね。うちの学校のお料理研究部の洋子ちゃんとサトミちゃんですの」
 白雪はそういって、二人を紹介する。
「こんにちはー、いつも部長にはエライ目に……もとい、お世話になってまーす。洋食担当の洋子ちゃんでーーす」
「同じくデザート担当のサトミちゃんでーす」
 そういって二人はペコリと頭を下げる。
「はあ…こちらこそ、どうも…」
 俺もつられて頭を下げた。
 洋子ちゃんとかいう方の子が、明るくつづける。
「ウチのお料理研のお料理は、お店でも出してもらってるぐらい本格的なんですよ。よろしかったら一度食べに来てくださいね」
 
 おおっ、それはスゴイな。
 
「そうそう、今は餃子を売ってるんです。お兄さんにもきっと喜んでいただけると思いますよ。お値段の方も一皿たった10万……むぐっ!!
「おほほほ……にいさま、姫、ちょっとこの二人とお話しがありますの」
 そういって、白雪は二人の口を抑えたまま、向こうへ引きずって行く。
 
 バキッ!
 メキョ!
 ボコッ!!

 
 ……向こうから、なんだかすごい音が聞こえる。
 
 ほどなく、白雪が一人で戻ってきた。
「おほほほ、お待たせしました。さあ行きましょう」
「……さっきの二人はどうしたんだ?」
「え? そ、そう、用事があるから先に帰るって言ってましたわよ。うん」
 
 ……視線を合わせようとしないところがあからさまに怪しい。
 
「……まあ、とにかく料理研究部に入ってるのは確かのようだな」
「そ、そうでしょう」
「で、具体的にはどんな活動をしてるんだい?」
「えーとですわねえ。お料理をつくって、試食って名目で校長先生とかPTA会長を接待して、いろいろ便宜を図ってもら……っと、ゴホンゴホン、ま、まあそんなたいした活動じゃありませんから、にいさまにお話しするほどじゃありませんわ」
 
 ……一体どんな活動なんだか…
 
「そ、そうだ! せっかく抽選券を持ってきたんですから、抽選会に行きません?」
 白雪が家で見せてくれた抽選券を振って見せる。
「そうだな。何かおもしろいものが当たるかもしれないしな。といっても、ショッピングセンターの抽選会じゃ、そんなにおもしろいものがあるわけはないか」
 俺は苦笑する。
「でも、1等は外国旅行って書いてありますわよ」
「えっ、本当か!?」
 補助券をよく見ると、確かに『1等:豪華客船で行く海外旅行』と書いてある。
「よし、早速行こう」
「はいっ、にいさま♪」
 
 抽選会場は、ちょうど人波が途切れたところで、すいていた。
 壁には大きく『1等:豪華 香港旅行ご招待、2等:豪華リムジン……』と書かれている。
 そして、白いクロスのかかった机の上には、手でグルグル回す抽選器が置いてある。
 
「…兄や」
「ん?」
「あの、机の上にあるのは、何ですか?」
 亞里亞は不思議そうに抽選器を見ている。
「ああ、あれはね、抽選器っていって、取っ手を持ってグルグル回すと、中から球がでてくるんだよ」
「……おもしろそう」
「じゃあ、亞里亞、回してみるかい?」
「はい! グルグルしたいです!」
 亞里亞は、勢いよく頷いた。
 一方、白雪は、
「にいさま、にいさま」
「ん?」
 俺の袖を引っ張っている。
「にいさま! あれを見てくださいっ!」
 白雪が壁の方を指している。
「んー、なになに………おおっ!
 よく見るとスゴイことが書かれている。
「ねっ、すごいでしょう」
「うんうん。『ブ○マの世界の秋葉原。ブル○ーズ 新装オープン!』かぁ。いいねぇ」
 
 ボカッッ!!
 
「……にいさま、一体どこを見てるんですのっ!」
「……じょ、冗談だ」
「まったく……ホントに冗談でしたの? はあ〜、姫が見て欲しいって言ったのは、あの『香港旅行ご招待』の下です」
「えーと……ほぉ! 『30歳以下の女性の方は、何人同行されても無料です』か」
「ね、ね、すごいでしょ。これだったら、にいさまが当てればみんなで行けますわよ」
 はしゃぐ白雪の肩に、俺はポンと手を置いた。
「残念だったな、白雪。お前は対象外か」
「えっ?」
「だって白雪は、料理研の部長だから、年齢は4……」
 
 バキッッッ!!!
 
「本っ気で殴りますわよ。にいさま…」
 
 ……あの、歯、折れてんですけど。
 
「……まあ、冗談はさておき、一応本当かどうか確認しておくか」
 俺は、抽選係のおじさんに声をかけた。
「すみませーん。この香港旅行の『30歳以下の女性の方は、何人同行されても無料です』ってホントなんですか?」
 ハッピを着込んだおじさんはチケットを見せてくれる。
「ホントホント。ほら、チケットもこの通り」
 確かにチケットには『東京→香港』と書いてある。
船底の豪華船室だぜ」
 
 ……ちょっと待て。それって2等船室って言わないか?
 
「……そういえば、このチケット滞在日数が書いてないですわね」
 横からヒョコっと白雪が顔を出す。
「ウチら太っ腹だからな。3日4日なんてケチなことは言わん。一生行ってられるぞ」
 
 そ、それって、簡単に言うと『売られる』ってことでは。
 ……よく見ると、チケットが片道じゃないかっ!
 
「お嬢ちゃんは別嬪さんだから、ぜひ行ってほしいねぇ〜 …高く売れるし
「まあ、別嬪さんだなんて、そんな本当のこと。いや〜んですの☆」
 頬に手を当てて身体をクネクネさせる白雪。
 
 ……おーい白雪。トリップするのはいいけど、相手のセリフ、ちゃんと最後まで聞いてろよ…
 
「えーと……そ、そうだ! 2等の『豪華リムジン』って何ですか? 普通こういうのは車種まで書きませんか? だいたい目玉なんだから実物を目の前に置いた方が客寄せになるとおもうんですけど」
 俺のセリフを聞いたおっちゃんが俺に顔を近づけてヒソヒソ声で話し掛ける。
「……実はな、あまりにも高級車なんで、当たった時に教えてビックリさせてやりたいんだ」
「えっ!? そんなに高級な車なんですか?」
 俺も自然とヒソヒソ声になってくる。
「兄ちゃんも、名前ぐらいは知ってるだろう。アメリカの『リンカーン』だ」
 
 おおっ! 『リンカーン』! アメ車のなかでも、豪華さじゃ随一じゃないか!
 
 俺のビックリした表情に満足そうに笑みを浮かべながらおっちゃんは続ける。
「しかも、聴いて驚け、特注仕様だぞ」
「特注仕様! で、で、どんな仕様なんですか」
「うむ……なんと、疲れたときは、後ろで横になれるようになっている」
「おおっ、キャンピング仕様ってやつですか!」
「うーん……ちょっと違うのだが……まあいい。それと、他には無い豪華な飾りもある」 
「うんうん、豪華な飾りですか」
「うむ……何と言っても、白木作りの家の形の飾りだからな」
 
 白木作りの家の形の飾り………それって、霊柩車かいっ!
 
「しかも、環境に優しいリサイクル品だ」
 
 ……それって、使用済みでは……
 
 くいくい
 ん?
 
 下を向くと、亞里亞が不満そうに見ている。
 
「……兄や、亞里亞早く抽選器、グルグルしたいです…」
 
 うーん……なんだかあんまり抽選しない方が良いような気がしてきた……
 
「はい、お嬢ちゃん、いいよ」
「……はい」
 
 グルグルグルグル……
 
 あらっ?……亞里亞は既に抽選器を回し始めていた。
 
 コロン
 
「おめでとうーー!! 3等、大当たりーーーーっっ!!」
 
おじさんの明るい声が響き渡る。
 
「「えっ!? 3等?」」
 
 俺と白雪の目が壁の表の3等の商品に注目する。
 
 そこには……
 
 『3等: トロ』
 
 と書かれていた。
 
 ……良かった。マトモな景品だ。
 
「トロですか。じゃあ、今夜はお刺身にしますわね」
 白雪もニッコリ笑う。
「……わーい、うれしいです」
 亞里亞も喜んでおじさんの方に手を伸ばしている。
「おっ、お嬢ちゃんが受け取ろうっていうのかい。でも重い缶だから、お嬢ちゃんにはちょっと無理じゃないかなぁ」
 
 重い缶?
 最近はトロも缶に入ってるのか?
 
 おじさんは景品置き場から一斗缶を持ってきた。
 
 ……一斗缶?
 
「…あのー、すみません。これって本当に『トロ』何ですか?」
「おうともよっ! ほら、表にもちゃんと書いてあるだろう?」
 そういって壁の表を指差す。
 良く見ると、『トロ』の前にちっちゃく『純』と書いてある……って『純粋○○○○(自主規制)』じゃないかっ!
「……これって、おいしいの?」
 ……何も知らず無邪気におっちゃんに質問する亞里亞
「うーん。美味しいかなぁ?……そうだ! とりあえずアンパ○マ○にはなれるぞ」
「……わぁ、アン○ン○ンになれるんだぁ」
わーーっ!! だ、ダメですわよ! 亞里亞!」
「あ、亞里亞、さっさと帰るぞっ!!」
 俺と白雪、二人して亞里亞の腕を取ると、、一目散に抽選所を逃げ出した。
 
 
 ……ふー、あぶないところだった…
 
 何とか家に逃げ帰って、自室でくつろいでいると、白雪が呼びにきた。
 
「にいさま、亞里亞、ホットケーキができましたわよ」
 
 食堂に行ってみると、そこには…
 
 50cmぐらいの高さまで積み上げれたホットケーキの山。
 
 ……こんなに、食えるかよ…
 
「ホットケーキがいっぱい……亞里亞、うれしいです……くすん」
 
 ……亞里亞、嬉し涙を出すほどのものか?
 
「最後に仕上げとしまして…」
 白雪がゴソゴソと冷蔵庫からなにか取り出す。
「ジャジャ〜ン これを上からかけます」
 
 ドバドバドバ
 
 そういって上からかけたのは
 
 蜂蜜と練乳
 
 それもタップリ
 
「……ちょっと待て、白雪」
「あら? なんですの、にいさま」
「……なんで、そんなものを上からかけるんだ?」
「だって、亞里亞のご希望は『甘い』ホットケーキですよ。こうしないと甘くならないじゃないですの」
「だからって、かければいいってもんじゃないだろっ!」
「でも、亞里亞は喜んで食べてるみたいですのよ」
 
 ……へ?
 
 振り返ると、亞里亞はうれしそうにパクパク食べている。
 
「……甘くてとっても、おいしいです」
「ねー」 「う、うーん……確かにおいしそうに食べてるな」
「じゃ、にいさまもたくさーん召し上がってね。はいっ!」
 俺にも、蜂蜜と練乳がたっぷりかかったホットケーキが山積みになった皿を渡される。 
 
 ううっ……俺も食わなきゃいけないのか?
 えーいっ! 口にさえ入れてしまえば、どうにでもなるさっ!
 
 パクッ  
 こ、これは!
 
 一口かじっただけで、ガーンと頭を殴られたかのようなすごい頭痛と眩暈が俺を襲う。 
 
 …たった一口でも破壊力抜群だったか……
 
 平気でパクパク食べている白雪と亞里亞を視線の端に捉えながら、俺はゆっくりと視界が狭まっていった。
 
 ……そうか、急激に血糖値があがると、『普通の』人間は危ないんだ…
 
 俺が覚えているのはそこまでだった……
 
 〜おわり〜
 
あとがき
この話は白雪のBD記念SSということでシスプリパラダイスさんに投稿した話ですが、え、えーと……とりあえず、にいさまと兄やと兄チャマ、ゴメンナサイ。
特に兄チャマは……い、一応わたし、四葉が一番好きなんですよ〜 そうは見えないかもしれませんが(汗)
しかし、またしても思いっきり読者を選ぶ話を書いてしまいました… 相変わらずパロディばっかりです。うーん…改めて数えてみたら、5〜6個はネタが入ってました。
一体、どれぐらい皆様のわかるネタがありましたでしょうか?
2001年3月発表
2001年8月3日改訂

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