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サフィズムの舷窓

メーカージャンル発売時期対象年齢
ライアーソフト
耽美推理ADV
2001年5月18日
18歳以上

 ライアーソフトの音楽といえば、ゲーム中の音楽よりも、まずオープニングにどうしても目が行ってしまうのですが、初めてこの「サフィズムの舷窓」のオープニングを見た時、正直言って「あれっ!?」と思いました。
 なにせ、前作の「ブルマー2000」と前々作の「行殺☆新選組」のオープニングが強烈だっただけに、「サフィズムの舷窓」のパッと見は大人しく見えるオープニングに、何だか肩透かしを喰らったような気がしました。
 ところが、何度か聴いているうちに、なんだかだんだん気に入ってしまい、終いには知らず知らずのうちに口ずさんでいる自分に気がついたりします………むむっ、やるな! ライアー!(笑)

 この曲は学校でもある「ハンギング・バスケット・ポーラースター」の校歌という形をとっているので、すごく形式ばっていて、曲を聞いていても、「次はこういう展開になるんだろうなー」と考えた予想をほぼ裏切らない形で曲が進んで行くのです。
 でも、形式ばっているからといって、決して面白くない曲というわけではありません。
 もともとこういう形式というのは、聴いている人が最も心地よい展開をパターン化したものですから、聴いた感じがとても爽やかですし、予想通りの展開で進むところが、いかにも「校歌」といった、ちょっとフォーマルな雰囲気があり、18禁ゲームと裏腹なところがいい対称になっています。
 また、オープニングの歌というと大抵は一人で歌うものですが、校歌らしく何人かが斉唱で歌っているように聞こえます。(部分的に二部合唱になるところもありますが)
 ただ、この斉唱、もしかしたらエコーを大幅にかけているから複数の人数に聞こえるだけで、実際に歌っているのは一人かもしれません。修正
 さらに、声も、全く歌用の声にしていなくて、いかにも「学生達が何かの行事で歌ってますよ」といった感じの素朴な声です。歌い方すら、プロの歌手や合唱部とかがおよそしないような、半ば棒読みと言ってしまいたくなるような音と音の繋がりを無視した歌い方なのですが、それが逆に、普通の学生達が歌っているような、より学校らしさを感じさせてくれます。
 たぶんこの曲、上手く歌ったら却って雰囲気が出ないでしょう。
 伴奏も、ピアノを主体にして、いかにも校歌っぽい作りです。特に歌詞の「いと艶やかに咲き誇る」の部分の伴奏は最高です。これほど典型的な形式の伴奏というのも、なかなかお目にかかれないのではないでしょうか。

 映像の方も、ド頭の「美少女は……世界の宝だぁっ!!」という杏里の叫びはさておくとしても(笑)、いきなり「ライアーソフト名作『激情』」と銘打ってくれます。
 しかも、この雰囲気が昔懐かしい「世界名作劇場」にそっくりなものですから、18禁の内容とのギャップでひっくり返りそうになります。
 歌の部分での映像は、それほど目を引くような特殊な効果は使っていないのですが、登場人物紹介のキャッチコピーや背景の名前の壁紙などはなかなか楽しめます。
 この部分は、杏里のテンションのぶっちぎれたナレーターが入っているところも、「うんうん。やっぱりライアーだな」という思いがして、なかなかポイントが高い点です。

 ところで、一つだけ気になるのが、オープニングの最後の絵です。
 この最後の絵だけは、それまでの画像と全く異なる単色の絵で、昔の映画のフィルムによくある、疵等から来るプチプチと表れる汚れをわざと出しています。
 はっきり言ってしまえば他と全く異質なのですが、こうなると逆に何か特別な意味があるような気がしてきます。例えば……

 古い映画 → 昔の船 → 昔の豪華客船 → タイタニック!?(←そんなアホな(笑))

 ……H・B・ポーラースター号だったら、氷山と勝負しても勝てます(ドきっぱり)

 ……まあ、冗談はさておき、本当のところはよくわかりませんが、とりあえず映画のような雰囲気を出したかった……といったところでしょうか。


 さて、オープニング以外の音楽となりますと、まず最初に挙げられるのが、キャラクターのテーマ音楽なのですが、主人公である杏里、探偵の鼎さん、それに三人のヒロインだけにしかありません。
 6人いる子猫ちゃんたちには、キャラクター別の音楽が無いんです! 残念な事に!
 せっかく6人もいるのに……いや、6人もいるからか?(笑)
 まあ、ビジターズ達にも無いのですが……

 まず、杏里のテーマ音楽は「アンリエット・ウォーク」。  ただし、この音楽は杏里が出てくるときに必ずかかっているわけではありませんし(←当たり前です。杏里視点で話が進むのですから、必ず使っていた日には、この音楽ばっかりかかってしまう事になってしまいます)、タイトル画面でも使われている事からも、ゲーム全体のテーマ曲という意味合いも兼ねていると思われます。
 曲調は杏里らしく、明るくノリの良い華やかなものです。

 鼎さんのテーマ音楽である「推理論『珈琲思考』」は、ちょっと独特な音楽です。
 ゲームの中での鼎さんの位置付けの特殊さを表すかのように、他のキャラクターとは完全に一線を画す曲で、こういうのをジャジーと言うんでしょうかねえ、ちょっと大人っぽい深みのある曲です。とても通常のシーンには使えそうに無い曲ですね。

 さて次は三人のヒロインです。
 まず最初のファン・ソヨンのテーマ音楽である「ほほえみの猫曜日」は、他の二人のテーマ音楽とは全く方向性が異なる音楽です。
 ソヨンの明るく積極的な性格をそのまま表したかのような屈託の無い明るさがあり、ちょっと間が抜けているところもソヨンそのものです。
 ソヨンに比べて残りの二人のヒロインであるアルマとアイーシャのテーマ音楽は方向性がよく似ています。
 両方ともテンポがゆったりとしていてアンニュイな雰囲気が漂っています。
 その二曲の中でアルマの方のテーマ音楽である「森の扉」は、幾分明るくてのんびりとしています。
 アルマ本人の、割と何事にも動じなくてのんびりとしたマイペースな性格が表れています。
 一方、アイーシャの方のテーマ音楽である「Twinkle Talk」は、「森の扉」に較べて緊張感があり少し暗めです。
 アイーシャの悲惨な過去とそこからくる引っ込み思案な姿が曲からも伺えます。

 「美しい僕たち」「Wish You」は、共にHシーンの曲ですが、「美しい僕たち」が子猫ちゃんたちとのシーンで、「Wish You」がヒロイン達とのシーンというふうに、完全に分かれています。
 「美しい僕たち」の方は、妙に緊張感が漂う曲です。でもこの曲を聴いていると、何故かヘレナさんとのシーンばっかり頭に思い浮かんでしまいます。……うーん、たしか子猫ちゃん達とのシーンは全てこの曲だったと思うのですが、よっぱどヘレナさんに合っていたのか(笑)
 一方、「Wish You」の方は、いろいろな障害を乗り越えた末からか、反対に安らかな雰囲気に満ちています。おそらく「美しい僕たち」と対称になっているのでしょう。

 「ファニーターキー」は、別名「ビジターズのテーマ」(笑)
 ……いや、もちろんビジターズが出てくるときだけに使われているわけではありませんが。
 とりあえず、コミカルなシーンを一手に引き受けている曲です。それこそP.S.からマジカル・プリンセス(笑)まで手広くこなしています。
 なんとなーく、アメリカの南部デキシーとかを髣髴させます。
 ちなみにこの曲は、このゲームの中でわたしが一番好きな曲です。

 通常のマップ画面で使われている「波は穏やか」は、このゲームの中で、最も海らしさを感じさせてくれる曲です。
 もともと信じられないくらい大きな船なので、船とは思えないようなシーンも多いのですが、この曲は、ゆったりとした分散和音とストリングの音色でだんだん大きくなってまた小さくなっていく長い音符の和音とが寄せては返す波の様で、船が舞台だという事を思い出させてくれます。
 大きく包み込まれるような安心感が感じられます。

 「花達の語らい」は日常シーンの曲です。
 まあ、子猫ちゃんたちのテーマとでも言いましょうか、普通に会って話しているシーンとかは大抵この曲が使われています。
 適度に明るく適度にリラックスしているという、何も特別なものを感じさせないところに、『日常らしさ』という特徴がよく表れています。

 さて、「華毟」「華毟・影」ですが、早い話が各日曜日の夜に起こる事件の曲です。
 この二曲、よく似ていますが別の曲です。
 「華毟」の方が響きがあるため、迫力があり、肉体的な痛みを想像させます。一方「華毟・影」は、響きがない分一点に集中しており、不安感を感じさせるような精神面で訴えてくる曲です。
 実際に使われるところも、使い分けられており、ヒロイン達がレイプされる直前までの不安と恐怖に打ち震えている場面には「華毟・影」が使われており、レイプされてしまった後の衝撃と絶望感を感じる場面には「華毟」の方が使われています。
 こういう僅かな部分にも違いをつけているところに、製作者の拘りを感じます。

 最後の「人生はかくも素晴らしく美しい」は、エンディングの曲ですが、要するに「アンリエット・ウォーク」のバリエーションです。
 ただ、「アンリエット・ウォーク」との大きな違いは、短い前奏がついて、メロディーにオブリガード(対旋律)がついていることです。
 メロディーにオブリガードが付く事で、全体的に華やかになりエンディングに相応しくなりました。
 また、メロディー自体は「アンリエット・ウォーク」と同じという点で、「アンリエット・ウォーク」がこのゲームのテーマ曲である証明になっていると思います。

 さて、メインのタイトル画面の「BGM鑑賞」を選ぶと表示されるタイトルは以上で全てなのですが、実はゲームにはBGM鑑賞のタイトルの中に表示されない曲が一曲だけ使われています。
 どんな曲かといいますと、早い話がオープニングの「ハンギング・バスケット・ポーラースター」(BGM鑑賞のタイトルでは「舷窓の乙女達」)のインストルメンタル版です。
 この曲が使われているシーンというのは、ゲームの中でもたった一箇所だけで、それはアイーシャシナリオの最後です。
 またこのシーンは、ゲームの中で海上でない唯一のシーンで、使われる曲もこの曲だけです。
 この既に船から離れたシーンで、「ハンギング・バスケット・ポーラースター」の曲、しかもインストルメンタル版が使われているという点は、注目に値します。
 「H・B・ポーラースター」のメロディーが使われる事で、杏里とアイーシャのH・B・ポーラースター号への強い想いが表されていると共に、歌が無い事で、自分達が既にH・B・ポーラースター号の住人ではない事、そしてH・B・ポーラースター号との決別を表している……とまあ、わたしが勝手に思っているだけですが(笑)
 この曲は、CDを直接プレーヤーにかけると、最後のトラックに入っています。
 (※ CDを直接プレーヤーにかける際には、誤ってデータのトラックを再生すると、プレーヤーが壊れる恐れがありますので、十分注意してください)

 本当は、CDには、もう一つゲーム中では使われないトラックがあるのですが……
 まあ、こちらの方は、曲ではないので感想を書くのは止めておきましょう(笑)(2001/10/12)

追加
 ライアーさんの会報『うそ』2号によると、このオープニングは3人で歌っているとの事です。(2001/10/26追加)

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