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※このSSは「シスタープリンセス」のパロディーです。「電撃G'sマガジン」か、「シスタープリンセス」のゲームをプレイされていないと意味不明だと思います。
 
※このSSはA Partの続編ではありません。
※でも、先にA Partを読んでからでないと、おそらく意味不明だと思います(汗)
※ちなみに、二つウインドウを開いて、読み比べると、より一層お楽しみ頂ける………といいな(笑)


咲耶の想い − B Part −


『……ジングルベール、ジングルベール、ジングルオールザウェ〜イ♪』
 
 店先の小型スピーカーからはクリスマスソングが絶え間なく流れている。
 街は様々なイルミネーションで彩られ、クリスマス一色…
 でも、私の心は……
 
「ねえねえ、咲耶ちゃん。あれってなかなか良いと思いません?」
 横を歩いている白雪が肉屋のショーケースの中の骨付きカルビを指す。
「うーん……、そうねえ、色がもう一つね」
 私はちょっと考えて、首を横に振った。
「いつもならもっといっぱい買うのに、今日はどうしたんですの?」
 白雪が小首をかしげる。
「まあ、あんまり良さそうなのが無かったしね」
「ふふっ、それだけですの?」
「……どういう意味?」
「姫は知ってますのよ。実は咲耶ちゃん……ずっと便秘なんでしょう? だからもっと繊維質のものを買おうかと悩んで……」
 
 バキッッッッ!!!
 グシャァッッ!!
 
「んなこと、大声でベラベラしゃべるんじゃないっ!! 恥ずかしいでしょっ!!」
 私の一撃で歩道に沈んだ白雪が頭を押えながらやっとのことで起き上がる。
「イタタタタ……せっかく姫が咲耶ちゃんの気持ちを代弁してあげただけですのに……」 
「いらんことは言わんでよろしい!」
「……はーい」
 まったく……そんなんじゃないわよ。
 私が気になっているのはお兄様。
 そう、私の誕生日も間近だっていうのに、最近、お兄様ったら、私が『ねぇ、デートしましょう』って誘っても、いっつも『忙しい』とか『後で』とか言って、逃げちゃうんだから。
 今日も、せっかく『一緒にお買い物に行きたいの』って誘ったのに、『ちょっと今日は用事があるんだ』って言って、断っちゃうし。
 しょうがないんで、衝動買いでもして気晴らしでもしようかなって思って、白雪に付き合ってもらっていろんな店を見て回って歩いている。
 だけど、いつもなら夢中になって覗き込むショーウインドーのディスプレイも、今日は私の目の前を通り過ぎるだけ。
 心はずっと別のところにあった。
 だから、気がつくとディスプレイを通り過ぎて、ピザ屋さんのガラスをじっと見つめていたり……
 
 きゃー♪ 私ってなんて健気♪
 
 こんな私を知ったら、お兄様はきっと、私の手を握って、
 『咲耶、お前の気持ちに気付かなかったなんて、俺はなんて鈍感なんだ! どうか俺と結婚してくれっっ!!』
 ってなんか言ってくれたりして、
 そしてら私も『…はい』なんてしおらしく答えちゃったりして、そして二人の距離が近づいて……
 きゃー、これ以上はとても恥ずかしくて言えないわ〜
 
 ガンガンガンガン……
 
「わっ、わっ、そこの姉ちゃん! いきなり逝った目になって、ウチの店のショーウインドウに頭をぶつけるのはやめてくれっ!!」
「ご、ごめんなさい。咲耶ちゃんってこうなっちゃうと手がつけられなくなっちゃうんですの。ほ、ほら咲耶ちゃん!」
 
 ガンガンガンガン……パリン!
 
 あれっ?
 
「あーっ! ついにこいつウインドウぶち破りやがったっ!! なんてことしやがるっ!!」
「あー! あー! あー!」
 
 これぐらいで割れるなんてなんだか柔なガラスねぇ。
 
「まったくとんでもないヤツだ。ちょっとこっちへ来いっ! そこのお前もだ。一人で逃げようとするんじゃないっ!!」
「あーん、姫は関係ないですのに〜」
 
 結局、弁償代わりに、割れてないウインドウのガラス磨きをさせられることになってしまった。
 
 店の制服に着替えてる間中、白雪はブツブツ言っている。
「うー……、姫は何もしてないのに……」
「まあまあ、これこそ『旅は道連れ』ってやつよ」
「……咲耶ちゃん。それ、全然違う…」
 そうだったかしら?
 
「白雪ー、冷たいよー、寒いよー、冷たいよー、寒いよー」
「…もとはといえば、咲耶ちゃんが悪いんですのよ。さ、手を動かさないと終りませんわよ!」
 うー、そんなに冷たく言うことないじゃない〜
 だいたい、あれぐらいで簡単に割れちゃうようなガラスがいけないのよぉ。
 は〜… それを、この冬空の下の凍てつくような寒さの中で、乙女に水を扱わせるなんて〜
 もう、霜焼けでもできたら、逆に賠償してもらうわよっ! ………って、ん!?
 車道を挟んで反対側の歩道を歩いているのは……お兄様!?
 
 反対側の歩道を、確かにお兄様が歩いている。そしてその隣には……
 
 千影!?
 
 お兄様の隣を歩いているのは千影だ…
 
 ……千影は、あんまり外に出るのが好きじゃなかったはずよ。
 それなのに、お兄様と一緒に歩いている……
 そのうえ、二人楽しそうに笑い合ってる……
 
 どういうことっっ!!
 
「あらっ!? にいさまと千影ちゃんですわ」
 白雪も気付いて声をあげる。
 
「くっ……お兄様……用事って言うのは千影だったのねっ!!!」
 
 私は、ガードレールに足をかけ、一気に乗り越え……
 
「あぶないわっ! 咲耶ちゃん!」
 
 グイッ!
 ズルズルズル……
 
 白雪を引きずったままガードレールを乗り越え、車道を突っ切る!
 
 キキーッッ!!
 ガシャッ!
 ドカッ!!
 ドカーン!!
 ピーポー、ピーポー……
 
 ようやく、お兄様のところへたどり着き…
「みつけたわよっ!!」
 お兄様は驚いて振り返り、不思議そうな表情を浮かべる。
「……俺には、ピザ屋の店員の知り合いはいなかったと思うが…」
 あ、そういえば制服のままだったわね。
「お兄様! 私よ私っ! さ、く、やっ!!」
 帽子を跳ね上げて見せる。
「ああ咲耶か……って、お前いつからバイトなんて始めたんだ?」
「うん、つい10分前からよ♪ ……って、そんなことはどうでもいいのよっ! だいたいお兄様、今日は用事があるとか言って私の誘いを断ったくせに、千影と歩いてるっていうのは、どういうことっ!!」
「うん? ああ……あーーーっ! しまったっ! 見つかっちまったかーーーっ!!」
 バキベキボキ…
 指を鳴らしながら、ゆっくりとお兄様に近づく。
「さあ、じーっくりと、説明してもらいましょうか。納得のい・く・ま・でっっ!!」
「ま、待て、咲耶。これは、その、ほら、なんて言うか…」
 私がグイッと近づくと、お兄様はずるずる後ろに下がる。
 スッ……
 ん?
 私とお兄様の間に千影が割って入る。
「邪魔しないでよ。千影! これはお兄様とわたしの問題なんだからっ!」
「咲耶君こそ………邪魔しないで欲しいな……せっかく…私が……兄くんとデートしてたん…だから…」
 な、なにーーーーー!!?
 で、デートですって!!
 私の前でそんな抜けぬけと!
「だから……咲耶君には……消えてもらう…」
「ふふん。そんなことできるもんなら、やってみなさいよ」
「後ろを…振り返って……見たまえ」
 後ろ?
 振り返ると、お巡りさんが二人、こっちに向かっている。
「おまえかっ! 車道を突っ切って、大惨事を巻き起こしたのはっ!」
「ちょっと署まで来いっ!!」
 えっ? えっ? えっ?
 ガチャン
 いつのまにか私の手首に銀色の輪っかがはまってる。
「じゃあ……咲耶君……ゆっくりしていって……くれたまえ」
「ちょ、ちょっと、待ちなさいよっ! 千影!」
 ガチャガチャガチャ
「こ、こら、暴れるんじゃないっ!」
「大人しく連行されるんだ!」
 そうこうしている内に、お兄様たちは、角を曲がって見えなくなってしまった。
 くーーーっ! 千影っ! この借りは絶対お返しするわよっ!!
 メラメラメラ……
 背後に巻き起こる炎をバックにそう誓うのだった。
「おい、車に火がついてるぞ。早く消防車よんでこい!」
「わ、わかりました!」
 
 〜その夜〜
 
 トントン。
 
「……誰?」
 ようやく、解放された私は、疲れきってベッドに突っ伏していた。
「……姫ですの。入ってもいい?」
 うっ! ……そういえば、思い切り引きずって車道を横断した挙句、その場で置き去りにしたような気が……
「い、いいわよ」
 
 ガチャ? ガチャガチャガチャ……バキッ!
 
「あら、ごめんなさい。鍵が掛かってたみたいですわね。強引に開けちゃいました♪」
 扉がちょうつがいのところでブラブラしてるのは、き、きっと気のせいよね……
 
 明るい光が差し込んでくる。
 ……眩しい
 私は手で顔を覆う。
 
「って、白雪! その手に持った強力なライトは何!」
「あらっ! 咲耶ちゃん、気にしないで。ほら、よく取調室でやってるように、犯人の顔に光を当ててるだけですの♪」
「……もしかして、昼間置き去りにしたこと、まだおこってる?」
「ぜーんぜん、おこってませんのよ。通行人から指差して笑われたり、店長からこっぴどく叱られたりしたことなんて(にっこり)」
 白雪……その笑顔がとても怖いわ……
「どうしたんですの? みんな咲耶ちゃんが夕食に出てこられないので、心配………あっ!」
 白雪は自分の頭をコツンと叩いて、片目をつぶる。
「いけないいけない。咲耶ちゃんは警察に連れて行かれたから、夕食までに帰って来れなかったんですよね♪」
 こ、この女……なんてわざとらしい……
「ねえ、にいさまも心配してましたわよ。当分帰って来れないんじゃないかって」
 お兄様……私のこと何だと思ってるの……
「でも、大丈夫ですわっ。姫がちゃんとフォローしておきましたわっ! 『たとえ咲耶ちゃんが前科者になっても、温かく見守ってあげましょうね。姫たち、家族ですから☆』って」
「それ…フォローになってないわよ」
「ええっ!? この姫の天使のような広い気持ちがわかってくれないんですのっ!」
 だ、誰が天使よ……
「と、ところで、一つ訊いてもいいかしら?」
「何ですの?」
「今日夕食の時に、お兄様は、私たちに会った後のことについて、何かおっしゃてた?」
「?? 別に何も言われなかったと思いますわ」
 白雪はなんでそんなことを訊かれるのか不思議そうにしている。
「……そう。じゃ、やっぱりお兄様と千影はいい仲なのね…」
「な、なぜですの? どうしてそう思うんですの!?」
 白雪はびっくりして目をパチクリさせる。
「だってそうじゃないっ! その後のことを言わなかったのは、ぜぇーったい、人に言えないようなところに行ったからに決まってるわっ!!」
 私は一気にまくしたてた。
「そんことありませんわっ!」
 えっ?
 白雪の思いもかけない強い言葉に私の方が驚く。
「咲耶ちゃん。咲耶ちゃんはにいさまの事を理解してるようで、ほんとは全然わかってないんですわっ!!」
 ……私がお兄様の事をわかってない?
「にいさまがほんとに好きなのは……姫に決まってますわっ!
 
 バタバタバターーーっ!!
 思いっきり床にずっこける私。
 
「ああ〜ん。にいさまの気持ちは、姫がいちばんわかってますわよぉ。千影ちゃんといたのもお遊びに決まってますわぁ。にいさまが本当に好きなのは、ひ・め・だ・けっ♪ いや〜んですの♪」
 こ、この妄想大魔人がーーーっっっ!!!
「あ、そうだ。咲耶ちゃんにも、姫のお兄様への愛情たーーっぷりのお料理のおこぼれをあげますわぁ。ちゃーんと、咲耶ちゃんの分のごはんは残してありますのよ」
「あ、後で食べに行くわ……」
 今はとてもじゃないけど、食欲なんてないし。
「あっといけない、もうこんな時間ですの。夜更かしはお肌に大敵! じゃあ、姫は先に休ませてもらいますの。おやすみなさ〜い」
「お、おやすみ……」
 
 しょうがない食べに行くか…
 
 ガチャリ。
 パチッ。
 
 食堂は真っ暗だった。
 食卓の上に一人分の食事が残されている。
 私は壁の時計を見上げる。
「……もう、11時半なのね」
 道理で誰もいないはずである。
 みんな寝ちゃったんだろうな……
 冷え切ったおかずを口に運ぶ。
 私の目に、知らず知らずのうちに涙が浮かんでいた。
 
 ツーーーーーーーーンッッッ!!!
 
 こ、これはワサビっ!?
 おかずの一つ一つに丁寧にもワサビが仕込んである。
 くーーーーっっっっ!! 油断したわっ!
 食べ終わって食器を洗ってるときも、頭に浮かぶのは一つ…
 ……白雪! 覚えてなさいよっ! いつかぜぇーったい泣かすっっ!!……
 …それだけ。
 最後の食器を漱いで洗い籠に立てる。
 そして、水を止め振り返ると……
 
「ち、千影!?」
 
 さっきまで誰もいなかった筈の食堂に千影が立っている。
 
「も、もう。ビックリさせないでよ、千影」
「……いや、ちょうど。儀式が一段落ついたところでね」
 そういえば、千影って、儀式とかなんとかで、こんな時間に起きてることもあるって言ってたわね。
「……咲耶くん」
 ん!?
「フフ…今日は楽しかったよ……なかなか面白い見世物を……ありがとう」
 な、なんですってっ!!
「おっと……咲耶くん。そんなにおこると……シワに…なるよ」
 ギ、ギクッ!
 おもわず、両頬に手をあてて確認する。
 
 フニフニフニ
 
「うん。まだ大丈夫…って、そんなことしてる場合じゃなくて!」
 だいたい、よーく考えてみれば、千影がお兄様と一緒に歩いていたのが原因じゃない!
「まあまあ咲耶くん。……私が……なぜ、こんな時間まで……起きてると……思う?」
「さっき、儀式って言ってたじゃないっ!」
 私は口を尖らせる。
 ん?……儀式…儀式………って!
「まさかっ!!」
「フフ……その表情だと…私が……なんのために…儀式を行なっているか……わかったようだね…」
 お、お兄様を振り向かせるため…
 
「兄くんは……いい生け贄になりそうだよ」
 
 ズデーーーーーンッッ!!
 
「い、生け贄なの…?」
「……そうだが。……どうしたのかな?」
 ずっこけてる私を、さも不思議そうに見る千影。
「ひ、昼間、デートしてるって言ってたじゃない……」
 わたしはヨロヨロと起き上がった。
「ああ…あれは、デートで…回るコースが……ちょうど悪魔の紋章の……形なんだ。…歩いてなぞる事で……生け贄の効果が……とても高まるんだよ」
 そ、そーですか…
「そうだ……咲耶くんも…一つ生け贄になって…みないかい……」
 はあっ!?
「兄くんで…やる前に……一回……練習しおきたいからね」
 
 ガシッ!
 いきなり、手を掴まれる。
 
「さあ…すぐ…私の部屋へ…行こう!」
「ちょ、ちょっと千影! 何考えてんのよっ!!!」
「遠慮することは無いよ……君が、本当は…生け贄になりたいことぐらい……ちゃんと知ってるよ」
「なりたくなーーーーーーーーいぃぃぃぃっっっ!!!!」
 ズルズルズル……
 私の絶叫も空しく、千影に引きずられていく……
 ううっ、千影って、意外と力が強かったのね……シクシクシク……
 
 〜翌日〜
 
「……ま、というわけで、千影に無理やり引きずられていったって訳よ」
「ふーん。そうなんですの」
 白雪は目をパチパチっとさせた。
「じゃあ、咲耶ちゃんは、生け贄にされちゃったんですね♪」
 
 ガクッ
 
「どうしてそーなるのっ! だいたい、ほんとに生け贄にされちゃったんなら、ここで話してる私は何っっ!」
「お化け♪」
 にっこり笑って答える白雪。
 
 バキッ!!
「私、まだ、い・き・て・る・わ・よっ!!」
 
 床に沈んだ白雪が頭を押えながら起き上がる。
「イタタタタ……いやですわ。ちょっとしたお茶目な冗談ですのに」
「……ほー……」
「……咲耶ちゃん…目がコワーイ……」
 まあ、それはそれとして、私が何で白雪と会ってるかというと…
「で、白雪……昨日の夕ご飯のアレは何?」
「夕ご飯って…何か?」
 しらじらしく首をかしげる白雪。
「とぼけないでよっ!! 昨日のワサビだらけのおかずは何っ!! 昼間の仕返しなのっっ!!」
 私の剣幕にも、白雪はますます首をひねっている。
「昨日のご飯っていうと……ああっ、姫特製の『わさびづくし☆』ですわね」
 何が『わさびづくし☆』よっっ!!
「みんなも、とっても喜んでくれましたわ」
 へっ!? みんなって?
「……もしかして、アレ、みんなも……食べたの?」
 おそるおそる聞いてみる。
「うんっ! みんな涙を流して感動してくれましたわぁ」
 ……違うわっ! ワサビが効きすぎてるだけよっ!
「泣きながら感想を言ってましたので、なんと言ってるかは聞き取れませんでしたが、きっと褒めてくださってるんですわぁ」
 ……それ、絶対に褒めてないと思う……
「亞里亞ちゃんなんか、感動のあまり気絶していましたわぁ☆」
 …………
「……あれっ? 咲耶ちゃん、どうしました?」
「…い、いえ、なんでもないですぅ……」
 私は、めまいがして、思わず手摺にもたれかかっていた……
「そうですの? あらっ!? そろそろお食事の用意をする時間ですわ。もう行きますわね!」
 飛び跳ねるような足取りで、台所に向かう白雪に、最後の力を振り絞って声をかける。
「待って…白雪…」
 白雪はクルッと振り返った。
「何ですの? 咲耶ちゃん」
「今日の……今日の料理は…何?」
「今日の献立は……姫特製『タバスコづくし☆』…ですの♪」
 ニッコリ笑った笑顔が悪魔のようだ。
 軽やかに立ち去る足音を聞きながら、私は力尽きて崩れ落ちた……
 
 
 やっとのことで、起き上がり廊下をフラフラ歩いてると…
 
 あれはっ! お兄様っ!
 
 向こうから、外で遊んできた帰りらしい、お兄様(…と可憐と花穂)が歩いてきた。
 
「おかえりなさい。お兄様」
「おっ、咲耶か。ちょうどいい、ちょっと俺の部屋に来てくれるか?」
 なんだろう?
 もしかして……もしかしてかな?
「やっぱりお兄様、私の事をっっ!! いきなり部屋だなんて、まあ☆ だ・い・た・ん♪」
「……言っとくが、たいした用事じゃないぞ…」
 ちぇーーっ。
 
 ガチャ
 
 お兄様について、部屋に入る。
 
「咲耶」
「なに? お兄様」
「誕生日プレゼントだよ」
 そう言って、お兄様は私に小さな包みを渡してくれた。
「えっ!? 誕生日プレゼントってお兄様自身じゃなかったのっ!?」
 
 ズルッ…
 思いっきりズッコケルお兄様。
 
「……と、とにかく、それは咲耶のイメージに合わせて選んだんだぞ」
 わたしのイメージ?
「開けてもいいかしら?」
「もちろんいいとも」
 
 カサカサカサ……
 
「わぁっ!!」
 包みを開くと……小さなオルゴールが現れる。
 
 ねじを巻くと不気味な音楽が流れ始める。
 
 ♪ドシラ、ドシラ、ドシラソラシドシラ、レドシ、レドシ、レドシラシドレドシ、……… 
 
「……お兄様…この曲は………なにっっ!」
「なんだ、知らないのか? この曲は、伊福部先生の名曲、『ゴジラ』だっ!!」
 
 バキッ!
 私の右ストレートが、お兄様の顔面に炸裂する。
 
「そんなこと訊いてるんじゃないわよぉっっ!!」
 めり込んだ壁の中から、首だけこっちに向けるお兄様。
「どこが気に入らないんだっ! 俺が一所懸命探したのにっ!」
「世の中のどこに、ゴジラの曲のオルゴールをもらって喜ぶ妹がいると思ってるのよっっ!!」
 
 バキッ!!
 ポコッ  
 私の左ストレートが隣の壁をぶち抜いた反動で、お兄様が飛び出てきた。
「俺が悪かったよ。咲耶」
 ヨロヨロと近づいて来たお兄様が、そっと私の手を握る。
「な、なによ!」
「考えてみれば、ゴジラだなんて咲耶に失礼だったな」
「当たり前じゃないっ!」
「咲耶に相応しいのは…」
「うんうん」
『ガメラ』だっっっ!!!」
 ………  ……… 「……お兄様……言いたい事は、そ・れ・だ・け?」
「えっ? ほら、火を吹くところがそっくりかなー なんて、あはは…はは……」
 ………
 ………
「……お兄様、いっしょについて来て」
「えっ!? な、何かな?」
「いいから、私についてくるのっっ!!」
 お兄様の首根っこを引っ捕まえて、お兄様の部屋を出る。
 そのまま、廊下を歩いていって、目指すは…
 
 ガチャ
 
「千影いるー?」
「おや……咲耶くんの方から…来てくれるとは……思わなかったな」
 そう、千影の部屋。
「生け贄候補連れてきたわよ。はいっ」
 お兄様を目の前に突き出す。
「おおっ!…これは……ありがたいね…」
「ちょ、ちょっと待て、咲耶、千影」
「さあ、兄くん……遠慮せずに……こっちに来たまえ…」
 お兄様は、千影にズルズル引きずられていく
「な、何だ、あの魔方陣は。ち、千影、じょ、冗談だよな。お、おいっ、咲耶、さっきの事は謝るから助けてくれーっ!」
「……さようなら。私の愛しい人」
 私はハンカチを出して、目を押えるフリをする。
「アデュ〜♪」
 バタン。
 ハンカチを振りながら、私は妖しい部屋を後にした。
 
 その後お兄様がどうなったか………とりあえず、私は知らない。
 
 〜終わり〜
あとがき
パロディーで、誰にでもわかってもらえる元ネタはないかなー……と考えた末、だったら、いっそのこと元ネタから自分で書いちゃえー(笑) という、とんでもない理由から書いてしまいました。
……しかし、相変わらず、どの妹もヒドイ性格になってますね(笑)
2000年12月20日発表
2001年8月3日改訂

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