戻る

※このSSは「シスタープリンセス」のパロディーです。「電撃G'sマガジン」か、「シスタープリンセス」のゲームをプレイされていないと意味不明だと思います。


鈴凛テレビ


 
『……日本列島は高気圧におおわれ、あすは全国的に晴れとなるでしょう……』
 
 俺は、夕食後のひと時を居間でテレビを見ながらすごしていた。
 もちろん、妹たちもまわりでおもいおもいにくつろいでいる。
 
 『…それでは、つ「ザザッ!」…ュースで「ザザザッ!!」…』
 
 画面がグニャっと歪んで雑音が入る。
 
 またか…
 
 俺はため息をついた。
「あれっ!? 兄君さま、どうしたのでしょうか?」
 いっしょにテレビを見ていた春歌が不思議そうに首をひねる。
「姉上様は来られたばっかりでまだご存じないでしょうが、このテレビはあんまり調子が良くないんです。電波の状態が少しでも悪くなると、すぐにこうやって画面がみだれてしまうんです。」
 横で一緒に見ていた鞠絵が俺のかわりに説明してくれた。
「そうなんですか。ワタクシせっかく日本の風土の勉強をしていたのに残念です」
 
 ……天気予報でか?
 
「何いってるのよっ! テレビっていうものは、ドラえもんの時代から叩けば直ると決まってるのよっ!」
 怒りに燃えて立ち上がったのは咲耶だ。
 そのままテレビに近づいていって……
 
 バシッ! バシッッ!!
 
 ピタッ。
 
 おおっ! 画面が安定したっ!!
 
「すごいわ! 咲耶さん。ワタクシ尊敬しますわ!」
 春歌も鞠絵も、咲耶を尊敬のまなざしでみつめている。
「ふふん♪ まあ、わたしにかかればこんなテレビぐらいイチコロよ♪」
 得意満面の咲耶。
 
 ブツンッ
 
 急に画面が真っ暗になり、静寂があたりを包み込む……
 
「…………………」
「…………………」
「…………………」
「…………………たしかにイチコロだったな…」
 
 バンッ!
 
「お兄様! そこまで言うことないじゃない! それじゃ、まるで私が止めをさしたみたいじゃないっ!」
「で、でも、やっぱり姉上様の叩いたのがいちばんの原因じゃないかと……」
「なーに、鞠絵までそういこというの。ふんっ! いいわよっ! 私が悪者になればいいんでしょっ!」
 そっぽを向いて咲耶が拗ねる。
「いいけどさ、咲耶。お前が手をついてるテレビから煙が出てるぞ」
「えっ!? わっ!? きゃーーー!!」
 俺の指摘に、咲耶はあわててテレビから飛びのく。
 テレビの後ろからうっすらと煙が立ち昇っている。
 慌てて春歌がコンセントを抜くと、煙はじきにおさまった。
「ふぅー、なんとか火事にならずにすんでよかったな…」
 俺はとりあえず安堵の息をついた。
 
 しかし…
 
「……テレビ壊れちゃったの」
 今までの騒ぎを遠巻きに見ていた可憐がおずおずと聞く。
「……うむ。」
 俺は重々しくうなずいた。
 重々しく言ったところで事態が変わるわけじゃないんだけど……
 
 ガチャッッ!!
 
「こんなときこそ私の出番! アニキ! こーいうことは私におまかせっ!」
 
「鈴凛か…」
 勢いよく扉を開けて、台車を押しながら中に入ってくるのは鈴凛。
 まあ、こういう機械物については、頼りになるのは鈴凛だからな……って、おおっ!!
「その台車の上に載っているものはっ!?」
「ふっふっふ。こんなこともあろうかと思ってテレビをつくっておいたの」
「えらいぞ! 鈴凛」
「ちゃんと名前だってあるのよ」
「名前?」
「うん。その名も……スーパーデリシャス遊星ゴールデンスペシャルリザーブゴージャスアフターケアーTV!! どう? カッコイイでしょ?」
 そう言って鈴凛は胸を張る。
「……それを使うと正義の味方になれるとか?」
「へっ? なに言ってるのアニキ?」
 不思議そうな顔をする鈴凛。
「いや、このギャグを理解するには鈴凛は若すぎたか…… まあいいや、鈴凛、スイッチをいれてくれ。」
「じゃあ、はいっ!」
 鈴凛はニッコリ笑って俺に手を出した。
「…………は?」
「アニキ〜 だめだよ。テレビをよく見て」
 へっ!?
 ……テレビの横にちっちゃな箱がついている。その箱には……コイン投入口!?
「あのー…鈴凛さん。もしかして、これにお金を入れろと?」
「さっしがいいねえアニキ! ささっ、パパーっとお金を入れて!」
「誰がいれるかーーーっっ!!」
「えーっ!? なんでーーっ!! 私のは100円でなんと2時間も見られてとってもお得なんだよ!」
「旅館のテレビじゃあるまいし、なにが悲しゅうて、自宅でテレビ見る時にお金を入れなきゃなんないんだっ!!」
「ちぇー、しょうがないな〜」
 鈴凛は渋々機械を取り外した。
「んじゃ、改めてスイッチON! ポチッとな」
 
 ブーン……
 画面が明るくなっていく……
 
 ジャジャ〜ン
 『鈴凛テレビ〜』
 バーンッ!!
 鈴凛の顔のイラストとロゴが大写しになる。
 
 バタバタバターーーーッッッ!!!!
 俺を含めて見ている妹全員がずっこける。
 
「あ、あのなあ、OSの起動画面じゃあるまいし…」
「えー、カッコイイのに〜」
 またしても不満そうである。
「俺はスイッチを入れたらすぐ番組が見たい……」
「んー、じゃあ、それは今後の課題ということで」
 
 だんだん番組が現れてくる。
 
 『☆□○×△……』
 
「「「「「「「「「「「「何語だーーーーっっ!!!」」」」」」」」」」」」
 
「スゴイでしょ。日本語からスワヒリ語への完全通訳を標準装備してるんだよ」
「いらんわっ!」
「だったら、ウイグル語完全通訳はどう?」
「ダメ」
「んじゃ、ラテン語完全通訳…」
「却下」
「アニキわがままだよ〜」
「だーーっっっ!! 俺は普通に日本語で聞きたいんだーーっっ!!!」
 俺は思わず頭をかきむしる。
「と言われてもね〜 標準装備だからね〜」
「ま、まさか取り外せないとか」
「うん! 通訳装置が受信機なんだよ!」
「しょうがない…… スワヒリ語から日本語への通訳装置をかましてくれ…」
「ゴメンねアニキ。それはまだできてないんだ♪」
 ニッコリ笑う鈴凛と、がっくりとくずれ落ちる俺。
「じゃ、じゃあ、まさか日本語で聞くことはできないとか……」
「ふっふっふ。その辺はちゃんと考えてあるわよ。見よっ! 取り出しましたるこの通訳装置。これをつければOKよっ!」
 と言って鈴凛はポケットから機械を出す。
「なんだちゃんとあるじゃないか……って、なんでいくつも出してくるんだ!」
 鈴凛はポケットからおんなじ機械を後から後から取り出している。
「それはね。直接翻訳できないから他の言葉を経由させて翻訳させようっていう訳♪」
「………具体的には」
「えーとね。まずスワヒリ語からハンガリー語、ハンガリー語からアンダマン語、アンダマン語からバスク語、バスク語からポリネシア語、ポリネシア語からフィンランド語……」
「………もういい、とにかく日本語になるんだな」
「うん。これでつけ終わったよ。スイッチ入れてみようか」
 やっと、まともにテレビがみられそうだな。おっ! 天気予報か。
 
 『……ジャパン島は、潰されたところによる空気が上にのっかり、今日の次の日は世界中がひでりになり申し候……』
 
「……鈴凛」
「なぁに、アニキ?」
「……これって日本語か?」
「あはは……ちょこっと言い回しが変わっちゃたかな?」
「……俺もう寝るわ」
「ちょ、ちょっとアニキ、どこ行くの!」
「……俺、頭痛くなってきた…」
「じゃ、その間にテレビを改良しておくからね〜 お大事にねっ! アニキ!」
 何だか不安だな〜
 
 〜次の朝〜
 
 俺は、昨日早く寝たせいで、いつもより早く目が覚めてしまった。
 フラッと居間の前を通りかかると……
 
 『………日本列島を寒冷前線が通過し、一時的に激しい雨が降る地域があります……』
 
 おっ。テレビが直ったんだ。
 
 ガチャ
 
 中に入ると、つけっぱなしテレビの前で、スパナを握り締めたまま鈴凛が眠り込んでいる。
 
 鈴凛……徹夜までしてテレビを直してくれたんだ……ありがとうな…
 
 俺はそっと鈴凛の頭を撫でてやる。
 
「う? う〜ん………もう朝か……あれっ? アニキ?」
 鈴凛はうっすらと目を開け、まだ焦点の合わない目で俺を見てニッコリ笑う。
「エヘヘ、アニキ、私がんばったよ…… 早くアニキのよろこぶ顔見たかったんだ……」
 
 鈴凛、鈴凛……俺のためにがんばってくれたんだ。
 
 思わず目頭が熱くなる。
 
 鈴凛っ! 俺はもう、内からわき起こる感情を抑えられそうにないっっ!!
 
「鈴凛っっ!」
 
「なに? アニキ」
 俺の顔を不思議そうに見る。
 
「小遣いをやろうっっ!!」
「ホント!? さすがアニキうれしいよ!」
 
 鈴凛はパッと顔を輝かせる。
 鈴凛の嬉しがってる姿を見るのは楽しい……けど、
 俺は鈴凛っていうと、お金っていう発想しかできないのかな……
 
「あれ、テレビ直ったのね」
 咲耶が部屋に入ってきた。
 時計を見ると、そろそろみんな起き出す時間だった。
「さすが鈴凛ね。よし、この咲耶姉さんからお小遣いをあげよう」
 まったく……咲耶も俺と同じ発想しかできないらしいな。
 
「あ、テレビ直ったんだね」
 可憐の声に振り返ると、他の妹たちも直ったテレビを見に、部屋に入ってきている。
 
「じゃあ、可憐から鈴凛お姉ちゃんにお小遣いあげるね。はいっ!」
 
 へっ!? 可憐が?
 
「鈴凛姉さま、さすがですわね。姫からもお小遣い差し上げますわ」
 
 し、白雪まで!?
 
「ワタクシからも、差し上げますわ」
「じゃ、花穂からも」
「ずるいー、ヒナもあげるー」
「はいっ、これはボクから」
「くすん……亞里亞のも受け取ってくれますよね……?」
 ……………
 
 な、なんだーーーっっっ!!!
 みんなして鈴凛に小遣いをあげようとしてるぞっ!!
 
「みんな、私にお小遣いをくれるなんて…… 私、とっても幸せだよ……」
 鈴凛はもう涙ぐんでいる。
 
 ツカツカツカ……
 
 その時、一人だけ騒ぎに加わらず、まっすぐにテレビに歩み寄った人物がいた………千影だ。
「……兄くん。……これだよ」
 千影はテレビの横の蓋を開けて、中の機械のボタンを押した。
 
 ピタッ。
 
 画面が止まる。
 
 そして、止まった画面は……
 
『鈴凛にお小遣いをあげよう!!』
 
 おまけに文字と一緒に鈴凛の顔のイラストが画面いっぱい映っている……
 
「……人間の目には見えない割合でメッセージを入れる。……サブリミナル効果というやつだね」
 淡々と説明する千影。
 
 ギギッ
 
 全員の顔が、音をたてそうなほどゆっくりと鈴凛の方を向く。
「…………(じろっ)」
「あ、あはは、や、やっぱりバレちゃった?」
「…………(じー)」
「い、いやー、最近、手元が淋しいな〜 なんて思ってたりなんかして」
「…………………(じーーー)」
「そ、それじゃ、私はこの辺で失礼させてもらうということで……」
 
 ガシッ!
 
 じりじりと部屋を抜け出そうとする鈴凛の肩を咲耶がつかむ。
「まあ、急いでどこに行こうっていうのかしら、鈴凛ちゃん…」
「い、いやあ、ちょっと用事を思い出しちゃってね。あは、あはは…」
「……用事なら、みんなもあるみたいよ……あなたにねっ!!」
「ひ、ひぇ〜 お助け〜」
 
 その後…
 
「鈴凛ちゃーん。お茶持ってきてー」
「はーい。ただいま持っていきまーす(汗)」
「鈴凛。荷物持ちについてきてね」
「はーい。かしこまりました(汗)」
「鈴凛おねえたま、ヒナ、ベッドまでかかえていってね」
「はーい。わかりました(汗)」
「鈴凛お姉ちゃま、花穂の繕い手伝ってー」
「はーい。いま行きまーす(汗)」
 …………
 
 鈴凛は、廊下の壁によりかかりため息をつく。
「はあ〜 なんで私がこういう目にあわなきゃならないのよ……まったく…」
「あら、鈴凛。それならもう一度教えて差し上げましょうか?」
「い、いえ! け、結構ですぅ………」
「そう。じゃあ、次はワタクシの稽古の相手ね」
「え、えーーっっ! それはいくらなんでも……」
 
 ギロリッ
 
「何か文句でもあって?」
「め、めっそうもございませんです。ハイ……」
「じゃあ、行きますわよ」
「ひーん!」
 
 こうして鈴凛は、その後何日間を、妹たち全員の奴隷………もといメイドとしてすごすのであった。
 
 
 〜 完 〜
 
あとがき
いちおう鈴凛のBD記念SSということでSPSSさんに投稿した話です。
ちなみに、鈴凛がつけたテレビの名前がわかってしまった人は……
あなた! 若くはないですね(笑)

 
2000年7月9日発表
2001年8月2日改訂

戻る