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※このSSは「シスタープリンセス」のパロディーです。「電撃G'sマガジン」か、「シスタープリンセス」のゲームをプレイされていないと意味不明だと思います。


可憐とゲームしよっ♪


 
「ね、お兄ちゃん。これ一緒にやってみない?」
 
 ん?
 
 居間でボーっとしてた俺は、後ろからの声に振り返った。
 そこには、ゲームを抱えてニコニコ笑っている可憐がいた。
 
「SCRABBLE」
 
 抱えたゲームのパッケージにはそう書いてある。
「…スクラブル? どういうゲームなんだい?」
「えーとね。まず、アルファベットが一文字づつ書いてあるたくさんのコマを全部袋の中につめて、そこからみんなが順番に取り出して、それを組み合わせて、英語の単語にして、盤上に並べていくの。で、次の人はそこに並んでる単語の一文字を使って、自分の手持ちのコマを組み合わせて別の単語を作っていくんだって」
「クロスワードパズルを作っていくような感じなのかな?」
「わぁ、お兄ちゃんいい表現。でね。コマはアルファベットごとに点数が決まってて、例えば『L』なら1点とか、『Q』なら10点とか。それで単語を作ってくたびに点数を数えて、最後に集計して一番点数の多い人が勝ちなんだって。そういえば、盤のマス目の方にも、そこに置いたコマの点数が2倍とか単語の点数が3倍とか、お得なマスもあるみたい」
「なかなかおもしろそうだね」
「でしょでしょ。ねぇ、お兄ちゃんやってみようよ〜」
 グイグイ。
 可憐が俺の袖を引っ張ってちょっと上目遣いに見る。
 ううっ。俺はその目には弱いんだーーー
「うーん。じゃ、ちょっとやってみようか」
「わーい。お兄ちゃん、大好き!」
 両手を挙げて喜ぶ可憐。
 こういうところは、まだまだ子供っぽくて可愛いな。
「あら、可憐。このゲームってもう少し人数がいた方がおもしろいんじゃなくて?」
 
 ヒョイッ。
 
 急に後ろから手が伸びてパッケージを取り上げる。
 えっ?
 ビックリして見上げると、いつの間にか咲耶が俺の後ろから覗いていた。
「咲耶お姉ちゃん! それ可憐のよっ!!」
 あわてて可憐が手を伸ばす。
「まあまあ、どうせなら人数が多いほうがおもしろいわよ」
 咲耶は余裕で可憐の頭を押さえ込んだ。
 
 ジタバタジタバタ…
 
 可憐は必死で手を伸ばすが、悲しいかなリーチの差で全然届かない。
「うーー……」
 悔しそうに咲耶を見上げる可憐。
「そうねえ。もう一人ぐらい欲しいわね……あっ! 花穂!」
「なに? 咲耶お姉ちゃま?」
 ちょうど、練習の帰りなのかバトンを持った花穂が通りかかる。
「これからお兄様とゲームをしようかと思ってるんだけど、どう? 花穂も一緒にやらない?」
「わー! やるやる! なにやるの?」
「うん。これなんだけど……」
 とりあえず、俺が咲耶と花穂にルールを説明する。
 一方、可憐はというと………
 
 ツンツンツン……
 
「………ぶつぶつ、せっかく可憐が、お兄ちゃんと遊ぼうと思って開けずにおいた、綺麗なクリスタルのスクラブルなのに。いーのいーの、可憐なんてこうやって一人で遊んでればいいんだから……」
 いつの間にか庭に下りて、どこからか拾った木の枝を手に、しゃがみこんでアリの巣をつついている。
 ……頭痛がしてくる
「おーい、可憐。お前がこなくちゃ始まらないぞ〜」
「はーい♪ お兄ちゃん!」
 俺の呼びかけに、今まで持ってた木の枝をあっさり放り捨て、ニッコリ笑って戻ってくる。
 ……俺だけじゃなく、咲耶や花穂まで頭を抱えている。
「と、とりあえず始めようよ」
 花穂なんて、もう始める前から疲れた声になっている。
 座卓の上にボードを置いて、その周りを4人で囲む。
 それぞれ、袋の中からコマを何枚か取り出して、自分の前のホルダーに、他の人からは見えないように立てて並べる。
「……しかし、こうやって囲んでると」
「まるでマージャンのようね。お兄様♪」
「いうなーーーっっっ!!!」
 思わず立ち上がる俺。
「俺も思ったけど、さすがにそれはベタだと思って我慢したんだぞっっ!!!」
「あらっ、ダメよ、お兄様。ガマンは身体に毒よ」
 そう言って悪びれもせずウインクする咲耶。
「まったく………」
 あきらめて、俺も座りなおす。
「え、えーと、花穂、始めてもいいかな?」
 ホルダーに手をかけたまま、花穂が周りをうかがう。
 そういえば、最初は花穂からだったな。
「始めていいぞ、花穂」
「えへへ、じゃあ…」
 
 パタン
 ニッコリ笑って、花穂はホルダーを前に倒した。
 
「天和(テンホー)ーーーーっっっ!!!」
 
 バタバタバターーーーッッッッ!!!
 
 思いっきりズッコケル俺たち。
 ……可憐なんて座卓に頭から突っ込んでるし。
「あれあれ? みんなどうしたの? ねえねえ、お兄ちゃま起きて〜〜〜!」
 花穂は不思議そうな顔をして、キョロキョロ見渡す。
 ヨロヨロヨロ………
 俺たちが何とか起き上がったのを見て、花穂は安心したように息をついた。
「よかったー。花穂、みんな倒れちゃったのかと思っちゃった」
「……だ、だいじょうぶだよ。花穂……」
「じゃあ4万8千点だから、みんな1万6千オールだよ♪ ハイッ!」
 
 パコーンッッ!!!
 
「ハイッ! じゃないっっっ!!!」
 ニッコリ笑って手を出す花穂を、棒ではたく咲耶。
「……咲耶。いま花穂にツッコミを入れた棒、どっから出してきた……」
「ああこれ? 花穂が持っていたバトンよ、お兄様」
「イタ〜イ。咲耶お姉ちゃま、ちょっとした冗談なのに叩くなんてひどいよ〜」
 頭を抑えてうなる花穂。
 まあ、さすがに今のは、自業自得だな。
「花穂はとばして、私からはじめるわよっ!!」
 咲耶は改めて袋からコマを取り出した。
 花穂もしぶしぶもう一度取りなおしている。
「それじゃ、気分を新たに私から」
 咲耶は盤上に四つの文字を並べていく。
 L…O…
「お兄様に贈る私に一番ふさわしい単語、『LOVE』よっ!!」
 
 ガタッッ!
 
 真っ青な顔で可憐が立ち上がる。
「そんなっ! その単語は可憐の最初の言葉って、決めてたのにっ!!」
「あらっ? 『LOVE』はもともと私の持ちネタよ」
 平然と答える咲耶。
 ……持ちネタってなんだよ
「可憐なんて、イラストストーリーで公約までしてたのに……うわ〜〜〜〜〜〜んっっっ!!!」
 
 タッタッタッ……バキッ! ベキッ!
 可憐は泣きながら走っていってしまった。
 
 ………扉と壁を突き破って
 
 ヒュー
 
「ああ、風が涼しい」
 俺はすっかり風通しの良くなった部屋で現実逃避していた。
「お兄ちゃま! 可憐ちゃんを探しに行かないと!」
 いち早く立ち直った花穂が俺を揺さぶる。
「……俺にはこの爽やかな風が心地よい」
「わー!! お兄ちゃま! 早くこっちの世界に戻って来てーーーっっっ!!」
 結局可憐を連れ戻せたのは2時間後だった……
 
 
「……ふう。やっと続きができる。えーと次は可憐の番か」
「うん。じゃあ可憐は後ろに『L』『Y』をつけて『ラブリ〜』♪」
「……ラブリーって誰が?」
 咲耶が冷たい声で訊ねる。
「え? もちろん、か・れ・ん♪」
 頬に指を当てて、ニコッとする。
「……さあ、次はお兄様の番かしら」
「あ〜ん、無視しないでよ〜」
 ……しょうがないなー
 代わりに俺が可憐の頭を撫でてやる。
「うふふ。やっぱりお兄ちゃん優しいな」
 可憐がうれしそうに声をあげる。
「ははは、可憐は相変わらず可愛いな〜」
 
 ジーーーーー!!
 
 はっ!?
 気が付くと、残りの二人が目からビームが出そうな勢いで睨んでいる。
 俺はあわてて可憐の頭から手を離した。
「うー……」
 可憐はちょっと不満そうだけど、これ以上やってると後でどんな目にあうことやら。
「と、とにかく先に進めよう。俺はこれをくっつけてっと……じゃあ、次は花穂だな」
「うん。じゃあ花穂は……『E』を使って『CUTE』!」
 
 ジローーーッッ!!
 
 可憐と咲耶が一斉に花穂を睨む。
「え〜ん。咲耶お姉ちゃまと可憐ちゃんが怖いよ〜」
 俺の袖にすがりつく花穂。
「よしよし、大丈夫だからな」
 今度は花穂の頭を撫でてやる。
「どうだ、落ち着いたか」
「うん。お兄ちゃまありがとう、花穂うれしいっ!」
 
 ジーーーーーーーーーッッッ!!!
 
 ふと周りを見回すと、咲耶と可憐がさらに目を吊り上がらせてにらんでいる。
 咲耶は、もうすでに横にあるバトンを握り締め、手をブルブル震わせている。
 ……これ以上は、本気でやばそうだ。
 俺は花穂の頭からそっと手を離すと、何事も無かったかのように爽やかに続けた。
「さっ! 次は咲耶だったな! どうぞ、続けてくれ!」
 
 ドゲシッッ!!!
 
「……ちょっと遅かったようねお兄様♪」
 バトンを片手に微笑む咲耶。
 …………とっても痛い………
「気を取り直して、私は『C』を使ってチャーミン……ちぇっ、足りなかったわ」
 どうやらコマが足りなかったらしく、くやしそうに舌打ちする。
「しょうがないわねぇ〜 じゃあ、この単語は可憐へ。はいっ『STUPID』!」
「へっ!? 咲耶お姉ちゃん、その単語ってどういう意味?」
 ……さ、咲耶。そ、その単語は
「あ〜ら、ちょっと『オ・バ・カ』っていうだけよ♪」
「む!? 咲耶お姉ちゃん! 可憐のことオバカだっていうのっ!?」
「何言ってるのよ! 可憐はそこが可愛いんじゃないっ!! おーよちよち」
 可憐を抱き寄せて頭を撫でる咲耶。
 ……いいけど、可憐は無茶苦茶嫌そうだぞ。
「うー! じゃあ、ほーふくこーげき! 『BLUNDER』! どうっ?」
 …………?
「どうっ?っていわれても……可憐。それって『ドジ』って意味よね」
 咲耶は不思議そうに首をひねる。
「うん。そうだよっ」
「それって、私のことなの?」
「ううん。違うよ」
 そういって、可憐はチラッと花穂を見る。
「ええっ! 花穂っ!?」
 花穂は、びっくりした顔で、おそるおそる自分を指差す。
「うんっ!」
 にっこりとうなずく可憐。
「そ、そんな、可憐ちゃん! 花穂は関係ないのにっ!」
「だって、他になかったんだもん。しょうがないよ。ね、お兄ちゃん♪」
 
 俺に振るなーーーーーっっっ!!!
 
「ひどいよ。お兄ちゃま……花穂が気にしてること、こんなあからさまに言うなんて……」
 花穂が半泣き状態で俺を見上げる。
 
 俺かっ! 俺が悪いのかっっっ!!
 
「お兄ちゃんっ! 花穂を泣かせるなんて、なんてヒドイのっっ!!」
 自分の胸の前で指を組み、目をうるうるさせる可憐。
 
 お前がやったんだろうがーーーーーっっっ!!!
 
 ゆらりっ
 
 咲耶が立ち上がる………バトンを片手に…
「……お兄様が、花穂をそんな風に思ってたなんて………見損なったわっっ!!」
「ま、待てっ! 咲耶っ! か、花穂がドジだなんて俺も思ってた…… あ、わわわ、そうじゃなくて、花穂がドジだからといって気にすることはない…… いややや、そうじゃなくて……」
「やっぱり、花穂のこと、ドジだと思ってるのね。くすん」
 花穂はますます涙目になっている。
「い、いや、そ、そういう意味じゃなくてだな……」
 
 ザンッ!
 
「さあ、お兄様。覚悟はいいかしら?」
 咲耶が座卓に足をかけて、俺の方へズイッと身を乗り出してくる。
 
 サッ
 
 その時、俺と咲耶の間に人影が割ってはいる。
「待って! 咲耶お姉ちゃん」
 
 可憐……
 
 両手を広げて俺をかばうように咲耶の前に立ちはだかる。
「どきなさい! 可憐! いくら妹でも容赦しないわよ!」
「ううん。たとえお兄ちゃんがどんな極悪人でも、可憐が守ってみせる!」
 
 可憐……そこまで俺のことを………って俺、悪人かいっっ!!
 
 ……可憐には悪いが付き合ってられないな……よしっ。
「頼むぞ可憐! 俺は花穂と遊んでくるから後はよろしくなっ! さっ、花穂行こうぜ!」
 ニカッと笑って花穂の手を引い……
 
 ………ズゴゴゴゴ
 
 異様な殺気に振り返ると、
「……お兄ちゃん」
 座卓の天板を頭上に振り上げた可憐がいた。
 片足を掛けていた咲耶は、ひっくり返って尻餅をついている。
 
「お兄ちゃんの、ばかーーーーーーっっっっっ!!!!」
 バキッッッッッーーーーーーーーーーー!!!
 
 ……さすが天板、バトンよりも効いたぜ……
 しょーもないことを考えながら俺の意識は闇へ落ちていった。
 
 ……………
 
「………ん」
 
「……ちゃん」
 
「お兄ちゃん!」
 
 はっ!?
 目を開けると、目の前に心配そうな顔をして可憐が覗き込んでいる。
「良かったーーっ! 気が付いたのね、お兄ちゃん!」
「……よう、カール」
 
 バキッ!
 
 横で、同じように覗き込んでいた咲耶に思いっきりどつかれる。
「なにくだらない事言ってるのよ! お兄様!」
「………カールって何?」
 可憐が首をかしげる。
「一時的な記憶の混乱よっ!」
 ちょっとしたお茶目なギャグだったのに……
「本当にごめんなさい、お兄ちゃん。」
 可憐はしょんぼりして俯いている。
「ははは、もう大丈夫だよ」
 俺は腕をグルグル振り回して見せる。
「可憐も俺についててくれたんだろ。ありがとうな」
 そうだよな。可愛い妹を心配させちゃ可哀想だ。
「ううん。それぐらい……そうだ! お詫びにピアノを弾いてあげるね!」
 可憐のピアノか……そういえば最近聴いてないしな
「じゃあ、一曲お願いしようか」
「良かった。じゃあ、サティを弾くからね」
 ピアノの方に向かう可憐。
 エリック・サティか…… ジムノペディか何かかな?
「せっかくだから咲耶も聴いていくか?」
「残念だけど、ちょっと用事があるの。お兄様、私のかわりにちゃんと聴いててあげてね」
 咲耶は肩をすくめると部屋を出て行く。
「ははは、せっかくの可憐のピアノだからな。気合入れて最後まで聴かせてもらうよ」
「うれしい……じゃあ、可憐がんばって弾くから、絶対最後まで聴いててね!」
「もちろんだよ」
 
 ……………………♪
 
 ずいぶんゆっくりした曲だな…
 
 
 
 5分経過………
 
 
 
 10分経過…………
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 30分経過………………
 
 
 
 
 
 
 
 長い曲だな……
 
 しかも、同じメロディーを延々と繰り返してるだけじゃないのか?
 
 
「曲の途中で悪いんだけど、可憐」
「なあに、お兄ちゃん?」
 手をとめずに顔だけこっちに向ける
「この曲ってどれぐらいかかるんだ?」
 可憐は首を傾げてちょっと考える
 
「……んーと、あと16時間ぐらい」
 
「なんじゃそりゃーーーーーっっっ!!!」
 思わず立ち上がる。
「だって、この楽譜、同じところを480回繰り返せって書いてあるんだよ」
 可憐が事も無げに言う。
 
 だーーーーっっっ!!
 そんなの最後まで聴いてられるか!!
 
「だめだよ。最後まで聴いてくれるって約束したよね。お兄ちゃん」
 にっこり笑う可憐。
「……もしかして、可憐、実はまだ怒ってるのか?」
「ぜ〜んぜん♪」
「………………………そうか」
 ………咲耶、上手いこと逃げ出したな
 
 
 俺が、その曲が「ヴェクサシオン」(いやがらせ)という曲名だと知るのは、また後日のことである。
 
 
 〜おわり〜
 
 
あとがき
可憐のBD記念SSということでSPSSさんに投稿した話です。
可憐&花穂&咲耶ファンのみなさんゴメンなさい。
うーん……可憐はこんな性格にするつもりはなかったんだけどなぁ。
わたしの当初の予定では、K○NONの栞やとき○モの詩織みたいに偽善andたくらみ系にするつもりだったんですが、なぜか、K○NONの真琴みたいになっちゃいました。
ところで、スクラブルってどれぐらいみんな知ってるんでしょうね?
わたしも、高校だか中学の時にやったきりなので、どんなルールかも半分あやふやなんですが。
…………あっ、そういえばバニラ出すの忘れてた(汗)
 
2000年9月23日発表
2001年8月2日改訂

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