矢代秋雄 交響曲

指揮井上喜惟
演奏アルメニア・フィルハーモニック管絃楽団
録音2000年9月14日
カップリングドビュッシー 牧神の午後への前奏曲 他
Japanese Music Festival 2000 in Armenia II
販売アルタス
CD番号ALT-012


このCDを聴いた感想です。


 日本のオーケストラが、外国の作曲家の曲を演奏するのは、極々普通の事ですが、逆に外国のオーケストラが、日本の作曲家の曲を演奏するとどうなるのか?
 この演奏は、そんな好奇心への回答を垣間見せてくれるような演奏です。
 演奏しているアルメニア・フィルは、音楽監督のチェクナヴォリアンのもと、華やかな色彩を放つ活きのよい音楽を数々のCDで聴かせてくれていただけに聴く前から期待していましたが、やはり期待通りの音でした。
 基本的に一つ一つの楽器の音が明るめなので、日本のオーケストラの演奏に較べて華やかな印象を受けますが、その反面、ちょっと響きに締まりが緩いように感じられ、深刻な雰囲気はそれほどありません。
 要は、深刻な雰囲気の代わりに華やかさがあり、日本のオーケストラがどちらかというと深刻さといった精神性に向かうところを、少し視点を変えて色彩的な面からアプローチしているわけですね。
 例えば第2楽章の速いテンポの部分では、楽器の音色の変化が上手く強調されていて、次々と目まぐるしく変わっていく様子は息をもつかせぬほどで、聴いているうちに気分がどんどん高揚してきます。
 しかし、わたしが第2楽章以上に圧倒されたのが第3楽章です。
 この楽章は、速度記号のLentoという指定が示す通り、終始ゆったりとした楽章で、メロディーも確固とした決まったメロディーというより、大河のようなうねる音の流れが、そのままメロディーになったような、ある意味どう掴んで良いのか一瞬戸惑ってしまう音楽なのですが、このうねるような音の流れが素晴らしいのです。
 この音の流れは、細かく強くなったり弱くなったりを繰り返す小さな単位が何回も繰り返され、全体としても強くなったり弱くなったりしていくという、波のような動きなのですが、この演奏では、オーケストラのダイナミクスの広さを存分に活用していて、ピアノからフォルテになってまたピアノに戻ってくるといったような音の強さの変化が大きく、それが音のうねりとの相乗効果で奔流となり、巨大な存在感を生みだしています。
 一方、少しもったいなく感じたのが、第4楽章です。
 リズムが他の楽章に較べて複雑ということもあり、そこかしこにズレが生じています。
 特に、パーカッションがズレているのは目立つだけに痛く、ここぞという場面で決まらないため、何だか落ち着きが悪い演奏になってしまっています。
 やっぱり滅多に演奏しない曲だからでしょうか、楽章の前半は、全体的にどうも音楽に乗りきれておらず、後半からやっと調子が出てきます。
 調子が出てきた再現部とコーダの辺りは、華やかな音色が上手く活きてきて、かなり迫力が出てくるだけに前半部分が惜しいところです。
 指揮者の井上喜惟は、1993年からアルメニア・フィルに定期的に客演しているそうなので、オーケストラの方としても、棒には慣れているのでしょうが、さすがに曲の方は初めてだったのではないでしょうか。(2002/12/27)