W.ピストン 交響曲第6番

指揮ジェラード・シュワルツ
演奏シアトル交響楽団
録音1989年12月6日
カップリングピストン 交響曲第2番 他
発売日本出版貿易(DELOS)
CD番号26 JPT-006(DE 3074)


このCDを聴いた感想です。


 この曲は、何かのイメージに基づいて描写的に書かれたものではなく、純粋に音楽のみを追求して書かれたものだそうです。CDに付属の日本語解説によると、ピストン自身もこの曲の説明として『この交響曲については前もって申し上げる事はありません。私の音楽は初めて聴く方に予備的な説明を加えて、かえって惑わすような事はしない方がよいと思います。各楽章の初めについている標示がその一般的な性格を現しています』と述べているそうで、先入観を持たずに聴いて欲しいようです。
 その標示は、第1楽章が「Fluendo espressivo」、第2楽章が「Scherzo: Leggerissimo vivace」、第3楽章が「Adagio sereno」、最後の第4楽章が「Allegro energico」となっています。
 第1楽章は、たしかに表現の幅が穏やかな部分から激しい部分まで差が大きく、しかもその変化は急激です。ゆったりとした音楽からあっという間に音を刻み込んでいく激しい音楽まで変わっていきます。短調系の暗めの曲調ですがジメジメとした陰鬱さはなく、湿度は低くパリッと乾燥したキレの良さが表に出ています。メリハリがついていて暗いながらも力強さをより感じる音楽になっています。
 第2楽章のスケルツォは「最上級に軽く活発に」という指定どおり、細かくあちこちに音が飛ぶ、アクロバティックな動きがメインです。時間としては3分半程度の短い楽章で、しかもそのほとんどが弱いピアノで進んでいきますが、音楽は明るく、ちっちゃなリスが急に止まったり急に動き出したりを繰り返しているように、ちょこまかとした動きです。さらに、途中から絡んでくる長い音符によるメロディーは、メインの細かい動きとは対照的に穏やかでのんびりとした雰囲気で、メインの細かい動きを上手く際立たせています。
 第3楽章のアダージョは「穏やかに」とあるように、第2楽章の小さくちょこまかとしていたのとはちょうど正反対です。暗く悲しげで大きく広くゆったりと流れていきます。時間も、全曲で25分程度の中で半分近い11分半近くもあり、曲の中でもおそらく最も重要な楽章でしょう。動きも大きなスケールで動いていきます。ピアノからフォルテの盛り上がりは、第1楽章のように急速に行ったり来たりするのではなく、じっくりとじわじわと時間をかけて盛り上がり、その頂点でしばらく引っ張り、やおらゆっくりと降りていきます。テンポは遅く、音楽も長いスパンで動いていきますが、個々の楽器では意外と細かい動きも多く、スケールの大きな音楽のわりにはいろいろな表情が楽しめます。
 第4楽章は、energicoの指示そのままに元気で力強い音楽です。第1楽章に雰囲気が近いのですが、第1楽章ほどピアノとフォルテを頻繁に行き来したりせず、フォルテならある程度フォルテのまま押して行き、その中に弦楽器の細かい動きと管楽器の力強い伸ばしの音を交互に組み合わせたりと変化をつけています。ただ基本的には明るく情熱的でなにより楽しそうです。まるで真夏の太陽と夏の海という感じで、まぶしいほど輝いています。
 シュワルツの演奏は、どちらかというとアンサンブルを重視した引き締まったものです。
 わたしは、この曲の演奏はシュワルツ以外ではスラトキンがセントルイス響を指揮したものしか聴いたことがありませんが、スラトキンの方が、パワーを重視したより華やかな演奏だったのに対して、シュワルツの方は、オーケストラの響きが少し細く、その分、緻密に揃えた緊張感のある演奏になっています。(2007/8/25)


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