W.ピストン 交響曲第2番

指揮マイケル・ティルソン=トーマス
演奏ボストン交響楽団
録音1970年10月
発売Grammophon
CD番号463 633-2


このCDを聴いた感想です。


 非常に明快な曲調で、耳に馴染みやすい曲です。
 メロディーが二つ以上が同時に登場することはほとんどなく無く、基本的にメロディー一つに他は伴奏という形式で、しかもメロディー自体も屈託の無い素直なものです。単純といえば結構単純なのですが、わたし自身はこういうあまり深く考えずに楽しめる曲は好きですね。
 全3楽章で、演奏時間は全曲で約25分。それほど長い曲ではありません。
 ぞれぞれの楽章のテンポ指定は、順に「Moderato」「Adagio」「Allegro」で、だいたい「急」−「緩」−「急」という、まあよくある構成です。
 この三つの楽章の中で最も明るく華やかなのが第1楽章です。いや、華やかというより能天気に近いでしょうね。
 始まりこそ、憂鬱そうにゆったりとした雰囲気から始まりますが、ほどなくリズムを強調した跳ねる様な音楽になって行きます。
 コープランドのロデオにちょっと似た感じで、メロディーは一定の拍子を保ちながら自然に進んでいく一方で、その途中途中に、叩きつけるようなフォルテが不規則に連発され変化をつけています。
 不規則なリズムというところはストラヴィンスキーの「春の祭典」に近いのですが、春の祭典のフォルテはもっと野性的で人間の手の届かない大自然の力という印象を受けるのに対して、こちらのフォルテは不規則な間隔も全てが計算されていて、コンピュータにプログラミングされたように寸分の狂いも無く予定された位置に打ち込まれている印象を受けます。ただそれが春の祭典と較べて人為的だから劣るというわけではなく、逆にこの曲の場合は機械のように正確なところに感嘆し、竹を割ったような思い切りの良さが爽快なのです。
 また、途中にはシンコペーションを中心としたラグタイム風(3拍子なのでラグタイム・ワルツ?)なところもあり、なかなかアメリカらしさも感じられます。
 第2楽章は、派手な第1楽章から一転して静かな世界です。
 静かといってもずっとピアノのままではなく、フォルテにもなりますが、動きがほとんどなく、強さだけが高まっています。
 アイヴズの「ニュー・イングランドの3つの場所」の第3楽章に雰囲気が近く、ピアノで始まり、そこからひたすらじわじわとフォルテに向かってゆっくりと盛り上がっていくのです。
 メロディーはあるにはあるのですが目立ったものではなく、潮が満ちるように静かにしかし着実にフォルテに向かって盛り上がり、頂点をしばらく持続した後、今度はピアノへ向かってしずしずと引いていきます。
 華やかで騒々しい第1楽章と第3楽章とは全く逆の荘重な雰囲気の楽章です。
 第3楽章は、一転して激しい楽章です。
 第1楽章に近いのですが、さらにリズムに特化して、メロディーはほとんどおまけです。
 打楽器が派手に打ち鳴らされ金管が吼える合間を木管がヒャラヒャラと細かい音符を演奏している辺りは、なにやらどこかの吹奏楽曲にありそうな雰囲気です。
 明るいというよりも激しい曲調で、展開もめまぐるしく変わって行きます。
 さらに、演奏時間が他の楽章がだいたい10分から11分ぐらいなのに、この楽章だけ半分の5分程度しかありません。息もつかせぬほどの勢いであっという間に駆け抜けてしまいます。
 この曲が作曲されたのは1943年、ちょうど第2次世界大戦の真っ只中です。しかしこの曲、特に第1楽章の能天気ぶりは、とても戦争中の作曲とは思えません。

 ティルソン・トーマスの演奏は、たいへん見通しの良いものです。
 リズムとメロディーがきっちりと分離整理され、スッキリとして聴きやすくなっています。
 リズムとメロディーはそれぞれ分離されることで、形がしっかりと引き締まり、バラバラになるのではなく、逆に互いに引き立てあっているのです。
 豪快ではありませんが、力を効率良く配分し無駄の無い機能性が美しい演奏です。(2005/11/19)


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