W.メンゲルベルク オランダ国歌による前奏曲

指揮ウィレム・メンゲルベルク
演奏ニューヨーク・フィルハーモニック
録音1924年4月14日
発売及び
CD番号
AUDIOPHILE(APL 101.541)
BIDDULPH(WHL 025-26)
Pearl(GEMM CDS 9922)


このCDを聴いた感想です。


 この曲は一体何かといいますと、オランダ国歌(Wilhelmus van Nassauen)をモチーフにした4分強の管弦楽曲で、れっきとしたウィレム・メンゲルベルク本人の作曲した曲です。(わたしは初めウィレムの編曲かと思っていましたが、どうやら本当に作曲者のようです)
 つまり作曲者本人による自演というわけですね。
 なんでも当時のオランダ女王ウィルヘルミナの1898年に行なわれた戴冠式のために作曲された曲との事です。
 ちなみに、この女王ウィルヘルミナが父親の前王ウィレム3世の亡くなったために王位を継承したのは1890年の事で、なぜ戴冠式まで8年も間が空いているのかというと、実は90年に王位を継承したときウィルヘルミナはまだ10歳の子供で、母親のエンマが摂政として補佐しなければなりませんでした。1898年にウィルヘルミナは18歳になったことで一人前として認められて、晴れて戴冠したのだそうです。

 で、曲の内容の方ですが、もう最初から最後までひたすら堂々としています。
 もともとオランダ国歌自体、イギリスの「God Save the Queen」のようにゆったりと堂々としたもので、その雰囲気を延々と引き伸ばしたような感じです。
 とはいえ、国歌のメロディーがそのままの形で登場することはほとんどありません。和音の進行が国歌とほぼ同じため、なんとなく国歌のメロディーがそのまま使われているような印象を受けますが、実際にはかなりアレンジされていて、もしメロディーだけ取り出して聞いたら、案外、オランダ国歌が元になっていることに気が付かないかもしれません。
 また、オランダ国歌は古い時代の曲によくある拍子があまり固まっていない曲で、現在の楽譜にすると、初めの一音は裏拍なので飛ばして次の音からの小節は、順に4,2,4,4,4,2,4,4,3,3,2,4,3,3,3,3,3,3という拍子になっています。
 実際、わたしも楽譜を見る前は、聞きながら拍子を取っていると、いくらやっても途中でずれて行くので、どうなっているのか不思議でした。
 一方、この前奏曲では、一部を除いて、ほぼ全曲4拍子に統一されています。つまりメロディーも4拍子に合わせてあるのです。
 ついでに、伴奏としてティンパニーがひたすら『ダダダダン』というゆっくりとしたリズム(ベートーヴェンの交響曲第5番の第3楽章のリズムと同じです)を繰り返しており、なんだか行進曲っぽくなっています。
 ただ、テンポ自体はかなり遅いので、行進曲は行進曲でも葬送行進曲のように悠然として、長調ですからさらにそれの明るいタイプといったところでしょうか。
 編成もかなり大規模のようで、金管はチューバまでフルに登場し、さらにはピッコロ、ハープ。最後にはチャイムまで高らかに響き渡ります。
 というか、録音の事情によるものだと思いますが、先ほどのティンパニーとハープとチャイムだけやたらと鮮明に聞こえきます。
 逆に弦楽器はほとんど聞こえてきません。
 機械録音なのでこれはもうしょうがないのですが、管楽器はまだよく聞こえてくるものの弦楽器は全くといってよいほど聞き取れず(いや、あるいは弦楽器の音は入っていても弦楽器の音色に聞こえなかったという可能性はありますが)、初めは本気で実は管楽器だけの吹奏楽ではないかと思い、途中でわずかにチェロらしき音が聞こえたので、たぶんオーケストラの編成だろうと推測しました。
 意外とチェロに聞こえたのが気のせいで、実はチェロではなく、本当に管楽器のみの編成だったりして(笑)
 それにしても、本当に機械録音の音では細かい部分や個々の楽器の違いがほとんど聞き取れません。曲の途中でメロディーがカノンのようにいくつか重なっているらしい部分もあるのですが、さっぱりわかりません。鮮明に聞こえる一部の楽器の音を頼りに全体の雰囲気を想像するのがやっとというところでしょう。
 それに比べると後年(1938年)にコンセルトヘボウ管と録音したオランダ国歌は比べ物にならないぐらい鮮明です。この曲もせっかくメンゲルベルク本人の作曲なのですから、これぐらい鮮明な音で録音し直して欲しかったものです。
 もっとも、それだけ酷い音といいながら、機械録音の中ではまだ優秀な方なんです。
 たまたま、メンゲルベルクの最初の録音であるベートーヴェンの「コリオラン」序曲を次に聴いたのですが、その録音の悪さにまた驚きました。「コリオラン」序曲の録音が1922年で、この前奏曲の録音が1924年。たった2年間の違いでここまで大きく差が出るとは思ってもみませんでした。
 機械録音というとどうしても、それだけで一括りにしてしまいがちですが、その中でも格段に技術は進歩していたいう事が改めて実感できました。
 といっても、どっちみち電気録音にはその最初期のものにさえ全く太刀打ちできないが実体なのですが(汗)(2004/9/18)


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