W.A.モーツァルト 歌劇「魔笛」序曲

指揮ウィレム・メンゲルベルク
演奏ニューヨーク・フィルハーモニック交響楽団
録音1930年1月14日
発売及び
CD番号
Pearl(GEMM CD 9474)
BMGビクター(ORG 1011)


このCDを聴いた感想です。


 メンゲルベルクは「魔笛」序曲の録音を二種類残していますが、一つは以前感想を書いた1942年のライブ録音で、もう一つが今回取り上げる1930年のスタジオ録音です。
 実は、この二つの録音、録音された状態はなかなか対照的です。
 1930年と1942年で録音時期に12年も差があり、片やスタジオ録音で片やライブ録音。オーケストラも、片やニューヨーク・フィル響で片やコンセルトヘボウ管。
 この曲はたった2種類しか録音が無いのに、よくまあここまで対照的な環境が揃ったものです。
 ただ、メンゲルベルク自身、芸風は割と固定されていて、20年代だろうが40年代だろうが大きく変化はしていませんし、しかもモーツァルトということもあって極端にデフォルメした表現もしていないため、ますます差が少なくなっています。
 ただ、それでもここまで対照的な環境であれば、さすがに少なからぬ違いも出ています。
 以前、ライブ録音の方の感想を書いたときに、テンポを動かしたりすることはほとんど無いと書きましたが、こちらのスタジオ録音は、それに輪をかけてテンポをきちんと保っています。
 例えば、ライブ録音の方では、テンポを変えないといっても、曲の途中で冒頭のような金管の和音が出てくる直前、つまり、音楽が一旦止まるところでは、さすがに大きくテンポを落としていますが、スタジオ録音の方では、そこもテンポをそのままで進めています。
 また、テンポ以外でも、響きにも違いがあります。
 これは録音による影響も大きいのかもしれませんが、ライブ録音の方は、フォルテで演奏する部分では周りをかき消すぐらいの勢いで出したり、メロディーを演奏する時もテンポは一定ながら細部まで手を入れて濃い表情をつけたりと、良くも悪くも表現力が豊かで外面に向かって拡がっていく演奏なのに対して、スタジオ録音の方は、後年ほどの濃い表情付けは無く、響きも横に拡がらず固く締まっていて、テンポが一定ということもあって、凝縮された塊が前に突き進んでいるようなイメージを受けます。
 どちらが良い悪いという事は無いのですが、より個性的で、おそらくメンゲルベルクが最終的に目指していたのは後年のライブ録音の方でしょう。
 ただ個人的には、録音が良いという点もあって(これは前回も書きました)、響きが締まって表情付けが薄く、よりスッキリとしているスタジオ録音の方が好みです。(2003/12/27)


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