W.A.モーツァルト 歌劇「魔笛」序曲

指揮ウィレム・メンゲルベルク
演奏アムステルダム・コンセルトヘボウ管弦楽団
録音1942年3月5日
発売及び
CD番号
ARCHIVE DOCUMENTS(ADCD.116)
Q DISC(97016)


このCDを聴いた感想です。


 メンゲルベルクは、モーツァルトの交響曲の演奏は一つも録音を残しておらず、歌劇の序曲も、モーツァルトがあれほど多く作曲したのにもかかわらず、魔笛しか録音に残っていません。
 ただ、この魔笛だけは、なぜかスタジオ録音一種類と、ライブ録音一種類の、計二種類も残っており、今回取り上げるのは、後年のライブ録音の方です。

 この魔笛は、1942年の演奏ですから、ほとんどメンゲルベルクの晩年の演奏と言えるのですが、この時期にしては珍しく、テンポを動かしたりとか、ポルタメントをつけたりといったことをほとんどやっていません。
 この辺りは、やはりモーツァルトが古典派の作曲家であることを意識しているのでしょう。
 しかし、その代わりと言っては何ですが、ダイナミクスやアタックは、とても古典派の曲のものとは思えません。
 ピアノの部分は思いっきり音量を落として、反対にフォルテの部分で金管をフルパワーで開放するのを聴いていると、まるでこの曲がロマン派の曲であるかのような錯覚を覚えるほどです。
 まあ、フォルテの部分で金管ばっかり前面に出ているように聞こえるのは、一つは録音の所為もあると思います。とはいえ、音色もけっこう割れる寸前まで出しているように聞こえますから、メンゲルベルク自身も、しっかりとした音量が欲しかったのではないか思います。
 一方、弦楽器や木管楽器は、金管楽器とは対照的に、古楽器の如く音を短く切って、俊敏な軽い動きを見せています。
 そのため、キレのよいリズムパートとベタッとしたハーモニーパートが同居しているという、なかなか他ではお目にかかれないような面白い音楽になっています。
 実際、弦楽器に関しては、ヴァイオリンからコントラバスまで非常に動きが軽く、フルオーケストラで、ここまでバスが軽いのは、フランス系のオーケストラ以外では珍しいのではないでしょうか。
 わたしも、あまりの軽さに、一瞬、モーツァルトということもあり、弦楽器の人数を減らしているのではないかと思いましたが、金管の鳴らしっぷりを考えると、これは人数を減らしたオーケストラでの吹き方とはとても思えません! たぶんフル編成でしょう(笑)
 ただ、弦楽器がいくら軽くても、金管楽器が上から重石のようにどっかりと乗っかっていますから、曲全体の雰囲気としては、『軽い』とはお世辞にも言えないところが、メンゲルベルクらしくて笑えます。

 この演奏の最大の問題は、実は録音です。
 ライブ録音で条件が悪いのはしょうがないと思いますが、雑音が多く入り、下手したら1930年のスタジオ録音の方が、鮮明に聞こえる部分があるほどです。
 さすがに、音の広がりだけは1930年の録音より遥かに良いのですが、それにしても1942年なんですから、もう少し良い録音で残して欲しかったものです。
 特に良くないのが、音の割れです。
 ピアノはそれなりに良いのですが、フォルテになると音が割れてしまうのです。
 手許にある2枚のCDの中では、Q DISKの方は酷く、それに較べるとArchive Documentの方が、若干マシのようです。
 ただ、どちらにしても聴き辛い事には変わりはありませんが(汗)(2002/3/15)


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