W.A.モーツァルト 交響曲第41番 ハ長調 <ジュピター>

指揮リヒャルト・シュトラウス
演奏ベルリン国立歌劇場管弦楽団
録音1926年
カップリングモーツァルト 交響曲第39番 他
発売KOCH
CD番号3-7076-2 H1


このCDを聴いた感想です。


 キビキビとしてしなやか。それに謎のテンポ変化がこの演奏の特徴です。
 現在では作曲家として有名なリヒャルト・シュトラウスですが、生前は指揮者としても活躍していました。その演奏スタイルは、ベートーヴェンの交響曲第9番「合唱つき」を、通常なら最短でも一時間以上かかるところを、たった45分で終わらせたという、怪しげな伝説がまことしやかに語られるほどハイテンポで知られています。もっとも、ことスタジオ録音に関しては、当時の録音技術がまだ低く、一度に録音できる時間がかなり短かったため、無理やり押し込もうとして、速いテンポにせざるを得なかったという理由もあるのかもしれません。
 この演奏はテンポ自体は、他の指揮者の演奏と較べてそれほど速いというほどではありません。しかし、音はまっすぐ伸び、切れ目はスパッと短くといった感じにテキパキと進んでいきます。細部まで針金を通したように明確で、しっかりとしています。録音の貧しさもあるのでしょうが、響きが横に広がらず、音楽が常に前へ前へと向かう、勢いの感じられる演奏です。
 第2楽章のように遅いテンポの楽章でも、テンポはそれほど遅くならず、基本的に直線的な音楽はそのままです。しかし、メロディーは軽く膨らませて、ほどよく丸みを帯びています。直線的なすっきりとしたスタイルは生かし、メロディーはフワッと歌わせることで、音楽が無機質にならず、表情が感じられる音楽になっています。
 さて、ここまでは普通に良い演奏なのですが、聴いていて、なんだこれは? と、愕然としたのがテンポ変化です。
 第1楽章から第3楽章までの間は、いくらか片鱗が見られるものの、まあ他の演奏でもありそうな誤差の範囲の変化です。
 第4楽章は、出だしからそのロケットスタートに驚かされます。よくこんなテンポでオーケストラがついていけるなと思えるほどのハイテンポです。ただ、もともとリヒャルト・シュトラウスは速いテンポで有名ですし、キビキビとした音楽のそのままなので、基本的なスタイルは変わらないな、と思っていたら、繰り返しを越えてオーボエとフルートに速い動きのソロが出てきた辺りで、突然テンポがそれまでの8割ぐらいに落ちたのです。
 その変化は、信号機でも付いていたのではないかと思えるほど、急激でした。ちょうどオーボエとフルートのソロが出てくる部分だったので、もしかして速いテンポだとソロが吹けないから落としたのではなかろうかと邪推したくなったほどです。
 その遅いテンポは、冒頭と同じジュピター音型が出てくる部分になると、これまた唐突に元の速いテンポに戻ります。
 なんだか、途中で遅いテンポに変わったのが幻のように、何事も無かったかのようにキビキビと進んでいきます。
 その後も、断層のように遅いテンポが、速いテンポの間に突然挟まるというパターンが続くのです。
 たしかに、曲調からすれば、テンポを落とすとすればそこしかないという場所でしたが、いくらなんでも、その変化が急でしかも極端なのではないかと。
 いやまあ、インパクトという点では十分でしたが。
 それにしても、それだけ急なテンポ変化にもかかわらず、オーケストラはほとんど乱れず、しっかりと付いていっています。たしかに、スタジオ録音ですからリハーサルを徹底させることは可能でしょうが、その点を考慮しても、やはり当時のベルリン国立歌劇場管はレベルが高いものだと感じました。(2009/8/1)


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