W.A.モーツァルト 交響曲第41番 ハ長調 <ジュピター>

指揮ヨーゼフ・クリップス
演奏イスラエル・フィルハーモニー管弦楽団
録音1957年4月
カップリングモーツァルト 交響曲第39番 他
「Historic Decca Recordings 1950-1958」より
発売DECCA
CD番号473 121-2


このCDを聴いた感想です。


 大編成のはずなのに、まるで室内管弦楽団みたいな響きがします。
 早い話が「薄い」のです。
 これは、録音による影響も大きいのかもしれません。
 ステレオ初期の録音に多かった、必要以上に左右の分離が良く、個々の楽器も鮮明に聞こえるという、まるで楽器一つ一つに対して一本ずつマイクを真横に置いたような音で、個々の楽器の音は良く聞き取れても、全体の響きが入っていないのです。
 弦楽器なんて、ほとんど一パート三、四人かぐらいで弾いているのではないかと思えてくるほどの薄さです。一応、三、四人の音の背後に薄っすらと背景のようにかすかに他の奏者の音が聞こえてくるため、実際にはもっと大きな編成だと推測できますが、その背後の響きがもっと小さかったら、本当に小編成の演奏だと思うところでした。
 ただ、響きが薄いイコール表情の乏しい演奏というわけではありません。
 室内管弦楽団の演奏が表情が乏しくないのと同様に、個々の楽器の音がクローズアップされて聞こえることで表情が直接伝わり、むしろ味のある演奏となっています。
 その一方で音の扱いは室内管弦楽団とは異なり、小編成の演奏に多いスマートなキレのある音ではなく、大編成でしかも昔風の重めの柔らかい音で、アタックは叩くのではなく置くように、その分、音に入ってからはしっかりと力を入れて弾いています。
 厚い響きでぐいぐい押してくるような演奏ではないこともあり、全体の響きがメインの厚い録音よりも、こういう薄い録音の方が、クリップスの持ち味である自然で柔らかい歌がよくわかります。
 第4楽章の最後の、メロディーがいくつも同時に登場してゴチャゴチャと複雑に絡み合う部分では、この響きの薄さが効果を発揮しています。音が出てくる時の頭のアタックは決して強くないのに、それぞれのメロディーが明確に聞き取れて、複雑に入り組んでいるはずなのに単なる立方体のフレームみたいに構造がよくわかります。音の頭が強調されていないのにそれだけクリアに聞こえるというのはちょっと驚きでした。
 この演奏は、クリップスでは少し珍しい、イスラエル・フィルを指揮したものですが、オーケストラの技術はなんだか今一つ怪しげです。
 それは特に弦楽器で感じました。
 おそらく個々の奏者のテクニックはあるのでしょうが、どうもニュアンスの統一が不十分なのです。細かい部分でバラつきがあり、パート全体が一つにまとまって聞こえてきません。まあ録音が薄いだけにどうしても統一感を感じにくいというのはありますが、オーケストラの方にも問題がありそうです。
 イスラエル・フィルは弦に定評のあるオーケストラと聞いていただけになんだか意外でした。
 逆に、管楽器は音色の良さが光っています。
 良いというか、要はわたしの好みに合っていたというだけなのですが、そのなかでもオーボエは、明るめで柔らかい音色といい、表情豊かな歌い方といい、印象に残りました。特に第3楽章などでのスタッカートを軽く柔らかくつないでいく歌い方は非常に魅力的でした。(2006/7/29)


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