W.A.モーツァルト 交響曲第41番 ハ長調 <ジュピター>

指揮ラファエル・クーベリック
演奏バイエルン放送交響楽団
録音1985年5月10日
カップリングモーツァルト 交響曲第40番
発売ORFEO
CD番号C 498 991 B


このCDを聴いた感想です。


 この演奏はライブでの録音ですが、クーベリックは、5年前の1980年に同じバイエルン放送交響楽団と共に<ジュピター>をスタジオ録音(SONY 22DC 5577)しています。

 この二つの録音を較べたときに、最初に気が付くのは繰り返しをするしないの違いです。
 このCDの演奏の場合は、繰り返しは全て楽譜通り律儀にやっていますが、1980年の録音では、第2楽章の繰り返しと、第4楽章の2回目の繰り返しがカットされています。
 もっとも第2楽章の繰り返しと、第4楽章の2回目の繰り返しは、特に現代楽器のオーケストラにおいてはやらない場合の方が多く、第3楽章以外は全く繰り返しをやらない指揮者も少なくないことを考えると、第1楽章の繰り返しと第4楽章の1回目の繰り返しをやるだけでも、どちらかというと繰り返しをキチンとやる方の指揮者と言えるでしょう。
 ましてや、このCDのように全て繰り返す演奏というのは、古楽器や室内オーケストラの演奏では普通ですが、現代楽器のフル編成のオーケストラとしては珍しいのではないでしょうか。
 特に第4楽章の2回目の繰り返しは、現代楽器のフル編成のオーケストラで他にやっている演奏というのは聞いたことがありません。

 演奏の方も、スタジオ録音とライブの差がハッキリとでています。
 ライブの方は、とても生き生きとした演奏なのですが、アンサンブル等に粗が見られます。
 反対にスタジオ録音の方は、カッチリまとめてあるのですが、生きの良さという点では、ライブより少し劣っています。
 ただ、クーベリックという指揮者は、基本的に生き生きとした音楽が大きな特長なので、ライブより劣るといっても、他の指揮者と比べるとスタジオ録音とは思えないくらい十分に生き生きしています。

 このCDでは、ライブ録音であることが大きくプラスに働き、音の一つ一つがまるで意思をもっているかのような生命力が溢れています。
 一音一音に強烈なエネルギーが感じられます。
 特に第4楽章は破壊力抜群で、全部繰り返しをしているので12分近くあるにもかわらず、息つく隙も無いほどの激しい展開を見せ、とてもそれだけ長いとは思わせないぐらい惹き込まれます。
 メロディーの歌わせ方も、スケールが大きくなり、波のような大きなうねりにのって聴き手に迫ってきます。
 また、クーベリックはこの時代の指揮者にしては珍しく、オーケストラの配置を対向配置(弦楽器が下手から1stヴァイオリン、チェロ、ビオラ、2ndヴァイオリンという古い配置方法)にしているのですが、この並び方のおかげで、ポリフォニックに展開されていくメロディーの流れが手に取るようにわかります。

 ただ、逆にライブのためにアンサンブルが大幅に乱れている部分もあります。
 いきなり冒頭からしてそうですし、オーケストラがバイエルン放送響なので、酷いというほどではないのですが、あやしげな部分はちょくちょくあります。
 一番危ないのが、第4楽章の2回目の繰り返しが終ってコーダに入ったところで、ここでクーベリックは何を考えたのか急にテンポを落とすのですが、さすがのバイエルン放送響もついてこれず、アンサンブルがバラバラになっています。半分破綻しかけていると言ってもよいでしょう。
 しかし、その次の木管のハーモニーの部分でキッチリ復活するところはやはり大したもので、最後のいくつものメロディーが複雑に絡み合うところも、メロディーの一つ一つが自己主張していながらも全体としては見事に調和がとれていて、ただただ圧倒されるばかりです。(2001/6/8)


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