指揮 | オイゲン・ヨッフム |
演奏 | バンベルク交響楽団 |
録音 | 1982年11月18〜20日 |
カップリング | モーツァルト 交響曲第39番 |
発売 | ORFEO |
CD番号 | C 045 901 A |
この演奏で最も強く印象に残ったのは、メロディーの最後の音の切り方です。 例えば、冒頭から有名なメロディーがヴァイオリンによって演奏されますが、このラソソーラソソーラソソーレー(実音ではEsDD-EsDD-EsDD-H-)というメロディーの最後のレーに上がった時の音に非常に余韻があるのです。 もちろん、音価分以上に伸ばしているわけではありません。 楽譜通りの長さなのですが、他の演奏が、音符が終わって休符に入った途端に、そこで急に音楽が止まってしまうような印象を受ける事が多いのに対して、ヨッフムは、最後の音の切り方に注意を払って音を響かせ、メロディーとメロディーの間の休符の部分まで余韻を残すことで、メロディーがどんどん繋がっていき、途切れることの無い音楽の流れを作り上げています。 これは、録音による影響も大きく、もし録音が古かったら、同じ演奏でもここまで伝わって来なかったかもしれません。 そう考えると、ORFEOの鮮明な録音のおかげともいえます。 全体的に見ると、この演奏は、ワルターからの流れを汲んだ、いわゆる昔タイプのモーツァルトと言えるでしょう。 古楽器の演奏に多い、速いテンポでキビキビしたキレの良い演奏ではありません。 また、大編成のオーケストラだからといって、数に物をいわせて迫力を出すこともせず、少し遅めのテンポながら、メロディーを適度に歌わせ、優しい雰囲気の演奏です。 聴いていると興奮してくる古楽器の演奏も良いものですが、この演奏のように聴いていると安らぎを感じる演奏もまた良いものです。 このモーツァルトの第40番という曲は、よく知られている事ですが、編成にクラリネットが入る版と入らない版の二種類があります。 具体的には、クラリネットが入らない方でオーボエが演奏していた音符を、クラリネットが入る方の版では、クラリネットとオーボエの二つのパートに割り振っているのです。また、オーボエとクラリネット以外の楽器は、どちらの版でも全く同じ楽譜です。 この二つの版は、両方ともモーツァルト本人が書いたもので、現在でも同じくらいの割合で演奏されます。 強いていえば、モダン楽器の大編成のオーケストラでは、比較的クラリネットの入った方の版で演奏されることが多いような気がするのですが、カール・ベームみたいに、大編成のオーケストラでもクラリネットの無い版しか使わなかった指揮者もいますし、決定的な差があるわけではありません。 そもそもこのヨッフムの演奏からして、無い版の方を使っています。 ただ、ヨッフムのこれ以外の演奏を聴いたことが無いので、この時はたまたま無い版を使っただけなのか、それともいつも無い版を使っていたのかはわかりません。 一般的に、無い版を使うと、色彩が薄くなり、よりストイックな感じになると言われていますが、この演奏からは、あまりそういう印象を受けませでした。 ヨッフムの狙いは、もっと別の点にあったのかもしれませんが、残念ながらわたしにはわかりませんでした。(2002/5/3) |