W.A.モーツァルト 交響曲第39番 変ホ長調

指揮フェレンツ・フリッチャイ
演奏ウィーン交響楽団
録音1959年11月29・30日、12月8日
カップリングモーツァルト 交響曲第29番 他
「W.A.Mozart Symphonies」の一部
発売Grammophon
CD番号00289 477 5807


このCDを聴いた感想です。


 とにかく第2楽章が強く印象に残りました。
 まずはそのテンポの遅さ。そもそも演奏時間が、他の演奏では概ね8分台からかかっても9分台前半のところを9分46秒と10分近くかかっていることからも明らかに遅さがわかりますが、その演奏時間すら、聴いた後では、「あれっ? 他の演奏とそれくらいしか変わらないのか」と不思議に思えるほど、さらに遅く感じます。
 一つ一つの音を確かめながら進むようなじっくりとした歩み、その上、フレーズの最後ではじらして楽しんでいるかのようにテンポを一段と落として余韻を残します。
 テンポが遅くても、お経のように抑揚の無い一定のテンポではないので、聴いていてだれてくる事はありませんが、あまりのじわじわとした進み方に、楽章が終わった時には、まるで一曲全部聴いたかのような気になってきます。
 もっとも、そう感じるのは、遅いためだけではなく、中身が濃厚だからでもあります。
 遅いテンポでも音楽が間延びすることなく、むしろ遅いテンポを最大限に活かし、細かい音符一つ一つに至るまで感情を込めてしっかりと弾き切っています。
 なにより感情の豊かさは他の演奏を周回遅れで置いてきぼりにするほどの大きな差があります。
 何しろどの音も、次の音に移るのが惜しいかのようにギリギリまで歌い、そこからようやく次の音に移るので、聴いている方も、音が変わる直前まで緊張し、次の音に入ったところでやっと息をつき、そうしているうちにまた音が次に移るので緊張し、といった緊張と緩和が次々と訪れます。もうハラハラドキドキの連続で、心を捉えて放しません。
 最初から最後まで集中して聴くことになるので、楽章が終わった時には一気に疲れが出てしまうわけです。
 しかし、この楽章だけでも十分に満足できる演奏でした。
 ちなみに、第2楽章以外の他の楽章も、第2楽章ほど極端ではありませんが、基本的に同じ傾向です。
 第3楽章で面白かったのは主題部です。この部分はメロディーは8分音符で動くヴァイオリンのはずで、たしかに最も前面に出てきていますが、聴いていると目立って聞こえるのは、メロディーのヴァイオリンではなく、木管を中心とした4分音符による和音の伴奏です。この4分音符の和音が妙に自己主張が強く、和音の移り変わりがハッキリとわかります。そうするとなんだかこの4分音符の和音の方がメロディーでヴァイオリンは細かい動きで伴奏しているかのように聞こえてきて、これはこれで結構それらしく、なんだか新たな発見をした気分になりました。
 この演奏で一つ惜しいと思ったのが録音です。
 ステレオ録音なのは幸いですが、1950年代ということもあって、まだ響きに上下が無く薄く聞こえます。演奏からするとおそらく響きも本当はなかなか厚かったのではないかと思えるだけに残念です。さらに、生々しさももう一つで、少しささくれたような乾いた音になっているのも惜しいところです。(2007/6/23)


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