指揮 | コリン・デイヴィス |
演奏 | ドレスデン国立歌劇場管弦楽団 |
録音 | 1981年11月 |
カップリング | モーツァルト 交響曲第41番<ジュピター> |
発売 | PHILIPS |
CD番号 | 410 046-2 |
とても優しい雰囲気の演奏です。 古楽器等に代表される最近の演奏では、テンポを速くし、鋭いアタックで小気味よく進めていくものが多くなっています。 もちろん、そういう傾向の演奏も好きなのですが、このデイヴィスの演奏は、まるっきり反対に聞こえます。 テンポは遅めで、極端なダイナミクスをとることもありません。 しかし、それ故に暖かくて優しく、心安らかな気分で聴ける演奏です。 特に、メロディーは丸く柔らかく、丁寧に歌いこまれていて、心に素直に入ってきます。 ここまでの話だと、大人しいだけの角が丸くなりすぎた演奏と思われたでしょうが、フォルテ部分の音もキレも素晴らしいものがあります。 この演奏は、小編成のオーケストラならではの針のように突き刺すような鋭さを持つアタックはありませんが、音の輪郭がハッキリ出たスピードのあるフォルテを聞かせてくれます。 大編成のオーケストラである強みを生かし、質量をもった厚い音であるため、どっしりとした迫力を伴っています。 そのため、柔らかいピアノ部分と迫力のあるフォルテ部分にほどよい差が生まれ、単調な演奏になることを免れています。 いや、免れているだけではありません。この差が丁度良いところに、この演奏の一番の魅力があるのです。 メロディーの歌わせ方、雰囲気、ダイナミクスの差、この全てがわたしにとって丁度よいのです。 プレーンオムレツのように、初めて聞いた時はどうということは無いように思えても、実は何度聞いても飽きがこない魅力的な演奏だったのです。 余談ですが、この第39番は珍しくオーボエが出てきません。 そして、その代わりなのかはわかりませんがクラリネットが入っています。 実は、わたしは後期の6大交響曲の中で、この第39番が一番好きなのですが、オーボエ吹きであるわたしには出番がありません。 ステージの外からこの曲を聴く度に残念でなりません。 まあ、その恨みを第41番で晴らしているという話もありますが(笑) もっとも、第39番にはクラリネットならではの部分があります。 それは、第3楽章のトリオの2ndクラリネットの分散和音です。 他の部分については、オーボエで代用しようと思えば、思いっきり目をつぶれば不可能ではないと思います。 しかし、この分散和音だけは、いくら上手く吹いたとしても雰囲気を真似することは不可能でしょう。 こういうところは、楽器の向き不向きというものが露骨に出てくるようです。(2001/3/9) |