W.A.モーツァルト 交響曲第38番 ニ長調 <プラハ>

指揮ジョン・エリオット・ガーディナー
演奏イギリス・バロック管弦楽団
録音1988年12月15〜18日
カップリングモーツァルト 交響曲第39番
発売日本フォノグラム(PHILIPS)
CD番号PHCP-1683(426 283-2)


このCDを聴いた感想です。


 肉を極限までそぎ落とし、ほとんど骨剥き出しの硬い演奏です。
 やはり、小編成でしかも響きの少ない古楽器の演奏だからでしょうか。オーケストラ全体が鳴っている時も一つの大きな響きではなく、個々の楽器の音がはっきりと別個に分かれて聞こえてきます。
 楽器の音色も、柔らかく溶け合わせるのではなく、それぞれの音色をダイレクトに聞かせています。しかも、響きが少ないためか音色も個性が強く出ていて、それが少ない楽器数できちんと揃っているため、どの楽器がどういう動きをしているかが、まさに総譜を目の前においているみたいに明確に聞き分けられます。
 いくらピッタリと合っていても、響きが少なくて楽器数まで少ないとなれば、もしかして覇気の無い貧相な演奏かと思われる方がいらっしゃるかもしれませんが、そんなことはありません。
 響きという肉付けの乏しい骨だけ、しかもその骨もたった一本の骨ですが、その骨は充分な太さがあるのです。
 モワッと広がる響きではなく、楽器から出たそのままの硬く輪郭のしっかりとした音が、スピードと勢いを伴って飛び込んできます。
 一番極端なのがティンパニーで、古楽器らしく重さの無い乾いた音ながら、その乾いた音を最大限に生かし、硬く強く、単なるアクセントというよりも完全にその場の主役として存在感を発揮しています。
 実のところ、そういう楽器の音が響きによるクッションをおかず直接耳に聞こえてくるような聞こえ方はクセが強く、拒否感を感じられる方も少なくないと思います。わたしも、慣れてしまった今では面白く聞いていますが、最初はその表現のキツさに違和感を感じたものです。
 また、響きが薄いため、フォルティッシモなどでも分厚い重厚な響きで迫力を出すことはできません。その代わりに、ティンパニーなどを代表とした硬い音のアタックによるアクセントや、音のスピードを速くしてキレをつけることで意外なほど迫力は出ています。まあ、迫ってくるというよりも駆け抜けていくのを呆気にとられて見送っているという方に近いかもしれませんが。
 音のキレで聞かせるというのは、テンポの速い第1・3楽章はもちろんのこと、ゆったりとした第2楽章でも同じです。テンポ自体はそれほど速いというほどでもなく、現代楽器系と較べると多少速いぐらいで、古楽器系の中では並かむしろ遅い方ぐらいですが、メロディーはあまり柔らかくゆったりと歌ったりはせず、スピードのある太い音でしっかりと鳴らしきっています。あまり感情としてはハッとさせられる歌い方ではありませんが、聞いていて、なるほどと納得する歌い方です。
 ところで、この曲、というかこの時代の曲は楽譜にやたらとリピートの指示が多く、第1楽章はテンポが速くなってから以降、第2楽章の前半、第3楽章は前半と後半の両方が指定に入っています。その指示通りだと第1楽章の主部と第3楽章の丸々全部を2回演奏することになってしまうので、各楽章の前半の繰り返し以外、指揮者によってはそれさえも無視することが慣例として行なわれていました。
 この演奏は、そのリピートを全部指示通りに行なっています。演奏時間も第1楽章の18分弱を始めとして、第2楽章では11分半、第3楽章でも、8分近くと、トータルでは38分近くもかかっています。ここまで長いとさすがに聞いていて疲れました。(2006/12/30)


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