W.A.モーツァルト 交響曲第35番 ニ長調 <ハフナー>

指揮エドゥアルト・ヴァン・ベイヌム
演奏ロンドン・フィルハーモニック管弦楽団
録音1950年5月
カップリングシューベルト 交響曲第4番 他
「Decca Recordings 1948-1953」より
発売Universal(Decca)
CD番号473 110-2


このCDを聴いた感想です。


 キリモミのように回転しながら突き進んでいく、勢いのある演奏です。
 スピード感があるといっても、疾走するような鋭く軽いものではありません。
 辺りのものを巻き込みながら、それでもなおスピードが全く落ちずに突き抜けていくみたいで、重さと力強さがあり、鋭いのですが、それは針のように細いものではなく、ドリルのように太さがあるものです。
 よくある古楽器の演奏を、大編成の人数と音の太さを3倍くらいにしたものを想像して頂ければ、結構近いのではないかと思います。
 さらに特筆しておきたいのが、異常なほどのテンションの高さです。
 冒頭から既にラストスパートに匹敵するぐらいの勢いで、これで本当に曲の最後まで調子を保てるのか不安になってくるほどです。
 このハフナーという曲は、この時代の曲にしては珍しく、第1・4楽章に繰り返しがありませんが、それが幸いで、もし繰り返しがあったら、最後は息切れしてしまったかもしれません。
 例えば、第2楽章なんかはゆったりとした楽章なので、少しは柔らかく優雅な雰囲気がありそうなものですが、ところがところが、この演奏では、他の楽章に較べるとまだ多少は落ち着いているぐらいで、太陽のような燦々と輝く明るさがありながら、硬く緊張感に満ちていて、優雅とはまったく別の方向に音楽が向かっています。
 ましてや他の三つの楽章の緊張感の高さは、強迫的な雰囲気さえ感じられるほどです。
 思う存分出せるフォルテだけでなく、ピアノの部分でさえ、音は小さいのに、まるで弾けそうになるパワーを無理やり抑えているかのような緊張感があります。
 ただ、もともとの曲調が明るいため、それほど狂的な印象は強くなく、血管が切れそうなぐらいテンションが高いのに、意外と健康的に聞こえます。
 さらに、緊張感が高いような印象を受ける、もう一つの要因は音のバランスです。
 これは演奏というより、録音かリマスタリングの時の影響によるのかもしれませんが、妙に高音が耳につくのです。
 別に低音が弱いというわけでもなく、ちゃんとしっかりと下から支えているのに、高音ばかり周りから一段階浮かび上がって聞こえます。
 しかも、この高音がザラザラした金属的な音なのです。
 このため、音が一層硬くなり、実際以上に緊張感が高い硬い演奏に聞こえるのかもしれません。
 もっとも、もし録音上の問題が無くても、それは程度の差で、あくまでも他の演奏より遥かにテンションが高いことには変わりは無いと思いますが(笑)(2004/3/13)


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