W.A.モーツァルト オーボエ協奏曲 ハ長調

指揮コリン・デイヴィス
独奏オーボエ:レオン・グーセンス
演奏シンフォニア・オブ・ロンドン
録音1960年3月29日
カップリングJ.S.バッハ ヴァイオリンとオーボエのための協奏曲 他
発売TESTAMENT(EMI)
CD番号SBT 1130


このCDを聴いた感想です。


 ソリストのレオン・グーセンス(1897〜1988)は、指揮者として著名なユージン・グーセンス(ヘンデルのメサイアのグーセンス版の製作者としても知られています)の実弟で、戦前からソリストとしても活躍していました。
 おそらく、録音を残したオーボエのソリストの中では、最も古い人の一人ではないでしょうか。
 さて、演奏の方ですが、昔の人らしくというべきか、かなりリズムが揺れる吹き方です。
 現代では当り前の、機械のような正確の吹き方からは大きく外れていて、音が高くなって曲が盛り上がってくるのにつれて前に突込み気味になったり、テンポ自体は一定の部分でもリズムだけは妙に後ろに引っ張ったりと、勢いや曲の流れによっていろいろ変わっています。この変わるというのが、聴いていて、どうも主体的に変えているというより引っ張られて受動的に変わっているという印象を受けました。
 そういう印象を受けた理由の一つは、やはりテクニックかもしれません。
 グーセンスは名手として知られていますが、ホリガーに代表されるような現代のソリストのどんな難しい音型でも簡単そうに演奏してしまうテクニックと較べると、どうしても苦しさが目に付きます。もっとも、それが若い頃からそうなのか、それとも年を取ったためなのか(当時63歳)はわかりませんが。
 その一方で、音色と歌い方はさすがと唸らせるものでした。
 音色は、倍音が豊かな音で、もともとオーボエは倍音の多い楽器ですが、さらに多く、実音に加えてそのオクターブ上の音もハッキリ出ており、ほとんど二つの楽器が同時に動いているかのように聞こえます。
 倍音が豊かということは、表情も豊かであり、それが歌い方にもつながっています。
 ただでさえ曲の流れに合わせてリズムが少々犠牲になっているぐらいですから、メロディーものびのびと歌っているのですが、特に強く印象に残ったのが、長く伸ばしている音です。
 音が伸びるつれて少しずつクレッシェンドとビブラートを強くして行く歌い方で、これは確かに多くのソリストも多少なりともやっていますが、グーセンスは、これがまた、普通これぐらいで止めるだろうという部分を通り越して、はるかに強くやっているのです。
 これは、あまりやり過ぎると下品になってしまうのですが、グーセンスはクレッシェンドとビブラートのバランスを上手く調整して、品を落とすことなく盛り上がりだけどんどん高めています。
 こういう部分を聞くと、なるほど名手といわれるだけあるな、と大いに納得しました。

 伴奏の方で、一つ興味深かったのが楽器編成です。
 この曲の編成は、楽譜上は、弦五部にオーボエとホルンが2本ずつだけのはずですが、この演奏では、なぜかオーボエがフルートになっています。
 そういう変更は、わたしが知っている限りは他には無く、初めて聴いたときは一瞬耳を疑いました。
 他にも、それに加えてファゴットも入っているようで(楽譜上は通奏低音として任意に加えるられるようにはなっていますし、あるいは、そう聞こえただけで別の楽器の聞き違えかもしれません)、第3楽章で管楽器だけになったときなど、響きが大きく違い、どうも少し落ち着かない感じがします。
 ちなみに、指揮のコリン・デイヴィスは当時弱冠33歳、まだデビューしたての頃ということを考えると、その変更はデイヴィスによる希望ではなく、グーセンスの意志なのかもしれません。

 オーケストラの「シンフォニア・オブ・ロンドン」は、最初、ロンドン響の別の呼び方かとも思ったのですが、どうやら全く別団体のようです。
 ただ、そのサイトの活動内容を見ると、映画音楽などの伴奏が主なようで、「本当に同じ団体だろうか?」「もしかしたら同名の別団体ではないか?」と少し疑問に感じる点もあります。
 それでも、同サイトのヒストリーを見ると、設立は1955年ですから、この録音が行なわれた1960年にはちゃんと存在したことになりますし、CDの解説書を読むと、グーセンスは1955年にシンフォニア・オブ・ロンドンの第一奏者についたと書いてあるので、一応、年代的にはピタリと合っていることになります。(2005/1/15)


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