指揮・独奏 | バリー・タックウェル |
演奏 | イギリス室内管弦楽団 |
録音 | 1983年6〜7月 |
カップリング | モーツァルト ホルン協奏曲第1番 他 モーツァルト ホルン協奏曲全集の一部 |
発売 | DECCA |
CD番号 | 458 607-2 |
バリー・タックウェルはモーツァルトのホルン協奏曲全曲を、今までに3回録音しています。 この演奏は、その中で第3番目にして、タックウェル本人が引退した今となっては、おそらく最後の録音です。 註1 予め書いておきますが、3回録音しているといいつつ、わたしがタックウェルの演奏で聴いたことがあるのはこの演奏だけです(汗) 他の人が演奏したのは聞いたことがあるのですが、タックウェルの演奏では名演といわれているアカデミー室内管との演奏も、若々しいといわれているロンドン響との演奏も聞いたことがないので、そのへんはちょっと差っぴいておいてくださいね(笑) さて、本人の指揮のことはおいといて(笑)、独奏のほうです。 音色自体は、いかにもイギリスって感じの割と明るめの音です。 そして、音色以上に特徴的なのは演奏スタイルです。 デニス・ブレインなんかは自由自在といいつつ、それでもかなり丁寧に吹いていました(本人が意識しているかどうかはわかりませんが(笑)) タックウェルも自由自在……というか自由奔放です。 パッと聞くと、とんでもなく適当に吹いてるように聞こえます。 フレーズを大きく取っているので、音楽の流れに乗ってる部分が強調されているのと、表現の幅がかなり広いので、そう聞こえてしまうのです。 特に表現の幅の広さはすばらしく、ほとんど音を割ってるんじゃないかという音色や、他の人では聞くことができないようなキツイアタックを思いっきり使っています。 この演奏の中で、わたしがもっとも好きなのは第3楽章です。 実をいうとちょっとだけカットがあるんですが、そんなには気になりません。 この第3楽章の中間ぐらい(2:15ぐらい)に、付点四分音符で4つ音階を上がる部分があるのですが、ここですごいクレッシェンドを聞かせてくれます。もちろん、アッタクも強烈に効かせていて、「ここまでやるか!?」と驚かせてくれます。 そして、一番の大見得は最後の部分です。 この曲は最後の方に32分音符が6っつの音階が出てきて、そこが難所になっています。 この部分は上手いソリストでも多少ぎこちなくなることも少なくないのですが、タックウェルは一気に吹き上げています。 もちろんデニス・ブレインのような名手もスムーズに吹きこなしているのですが、彼らはそんな難所をいかにも「難所じゃないよ。とっても簡単だよ」というふうに楽々と吹いていきます。 タックウェルの場合は、「ここは難所なんだぜ! だが、俺にとっちゃ見せ場だぜ! どうだい、俺のテクは?」(うーん……タックウェルのファンがこれを読んだら殺されるかもしれない。許してくださいね〜 悪気があるわけじゃないんですよ(笑))と、常人じゃないようなテクニックで吹いているように聞こえます。 で、わたしはこの演奏、この部分が一番好きなんです。(2000/12/1) 註1 わたしの認識不足で、タックウェルは、この演奏の後にも本人の指揮で4回目の録音を行なっていました。 ……残念ながら未聴です。 それから、第2回目のマリナーが指揮して入れた録音を聴いたのですが、どうも今一つでした。 演奏が大人しく、わたしの趣味に合わなかったのと、これはマスタリングのせいかもしれませんが、音が微妙に割れていたためです。(2002/1/11) |