V.トムスン 賛美歌の調べによる交響曲

指揮ハワード・ハンソン
演奏イーストマン=ロチェスター管弦楽団
録音1965年5月2日
カップリングマクフィー タブー・タブハン−管弦楽のためのトッカータ 他
販売マーキュリー・ミュージックエンタテインメント
CD番号PHCP-10408


このCDを聴いた感想です。


 作曲家のヴァージル・トムスンは、93歳もの長生きをした作曲家ですが、この「賛美歌の調べによる交響曲」は、彼の長い作曲家生活の中でも名前が売れ出した直後の1928年の作品です。(一応、1926年作の「教会ソナタ」が出世作といわれているそうです)
 タイトルにもある「賛美歌」というのは彼の生まれ故郷であるアメリカ南部のバプティスト教会で頻繁に歌われている賛美歌で、元々はスコットランドの曲らしいのですが、まるでアメリカで作られた曲のように土地に根付いていました。
 トムスンにとっても、子供の頃から慣れ親しんだ曲の一つだったのです。

 でも、トムスンがこの曲を作ったのは、アメリカではなく実はパリでした。
 なんだか、アメリカに移り住んでから故郷のボヘミアを想って「新世界より」を書いたドヴォルジャークを髣髴させるような話ですが、トムスンの場合は、もっと積極的な意思があったようです。
 トムスンは、パリで曲を書いているときも、その曲を聴いた人が、できるだけ故郷のカンザスをイメージできるように考えて書いたそうですし、みんなにカンザスのことをもっともっと知って欲しかったそうなのです。

 さて、肝心の曲の方ですが、賛美歌をモチーフにしているだけあって、メロディーは大変親しみやすいものです。
 「荘厳にしてちょっとノスタルジック」という雰囲気がそこかしこに感じられます。
 また、曲の長さも、楽章はちゃんと四つに分かれていますが、全曲でも20分かからない軽めのものです。
 曲の雰囲気は、ロマン派の音楽とコラール風の教会音楽とアメリカのビッグバンドの音楽が入り混じったみたいにバラエティに溢れています。
 このロマン的な部分と教会音楽的な部分とアメリカ的な部分は、あまり融合することはなく、それぞれの雰囲気を色濃く感じさせる音楽が交互に出てくるという印象を受けます。そのため、かえって同じような調子にならず、それぞれの良さを両方とも味合うことが出来ると共に飽きさせない構成になっています。
 しかも全体的に明るい雰囲気で、楽しい気分になる曲です。

 わたしは、この曲では、第3楽章が一番好きです。
 中でも、楽章の冒頭から現れる低弦で演奏される2小節間という短い単位で繰り返されるリズミックなメロディーが大好きなのです。
 このメロディーは短い単位ということもあり、メロディーというより半分リズムセクションみたいなものなのですが、単純な割に繰り返されていくうちに呪文のように頭から離れなくなってしまいます。
 さらに途中から出て来る木管のシンコペーションのリズムのメロディーも、いかにもアメリカ南部の明るくにぎやかでちょっと粗野な雰囲気が目の前に浮かんでくるようで、思わずニヤッとさせられます。
 ちなみに、この二つのメロディーは第4楽章でも活躍してくれます。

 ハンソンの演奏は、相変わらず決めてほしい点をバシッと決めてくれる嬉しい演奏です。
 特に、この曲のアメリカ的な部分を象徴する、金管主体のパリッとした音楽はハンソンとイーストマン=ロチェスター管の最も得意とするところで、華やかさと余裕が存分に感じられます。
 金管が上手いオーケストラは現在でもたくさんあると思いますが、派手な演奏なのに素朴さを感じさせ、嫌味が感じられないオーケストラというのは他にはなかなか無いのではないでしょうか。(2001/9/21)