V.トムスン 組曲「河」

指揮レオポルド・ストコフスキー
演奏シンフォニー・オブ・ジ・エア
録音1960年
カップリングトムスン 組曲「平原を破壊する鋤」 他
販売VANGUARD
CD番号08 8013 71


このCDを聴いた感想です。


 この「河」という組曲は、もともと映画音楽として作曲された曲を編纂したものらしいのですが、肝心の元の映画についてはどうもよくわかりませんでした。
 そのため、以下の感想は、あくまでも組曲として聴いた印象ですので、宜しくご了承お願いします。

 さて、この組曲は全部で四つに分かれていて、それぞれに副題がついています。
 まず、第1曲目<The Old South>(日本語に訳すと「歴史のある南部」ぐらいでしょうか?)
 いきなり曲の冒頭から聞き覚えのあるメロディーです。
 よくよく思い出してみれば、「賛美歌の調べによる交響曲」の第3楽章で使われていたメロディーでした。
 このメロディーは、低音主体で重さがあるくせに妙にリズミックで、しかも同じリズムが何回も繰り返されるような特徴的なもので、曲の冒頭に序奏も無しで出てくると結構インパクトがあります。
 しかし、これだけインパクトがあるからといって、このメロディーが第1曲目のメインの主題かと言いますと、実はそうでもありません。
 このメロディーが出てくるのはほとんど冒頭のみで、その後はいろいろなメロディーが次から次へと登場してきます。
 といっても、出てくるメロディーは基本的に民謡調で耳に馴染みやすいものばかりです。
 なかには、日本でも愛唱されているルソー作曲の「見わたせば」(どちらかといったら「結んで開いて」と言った方が通りが良いかもしれませんが(笑))まで出てきます。しかも最初は短調で。
 他にも聞いたことが有るような無いようなメロディーが多く登場しますが、どのメロディーも田舎風ののんびりした雰囲気は共通しているため、次々と移り変わっていっても、あまりコロコロ忙しなく変っているような感じは受けず、なんとなく統一感があります。
 それに、アイヴズみたいに、多くのメロディーが同時に演奏されるのではなく、一つずつですから、単純ではありますが、その分安心して雰囲気に身を委ねて聴く事ができます。

 次の第2曲目は<Industrial Expansion in the Mississippi Valley>(日本語に訳すと「ミシシッピ川流域の産業(工業)発展」といったところでしょうか)
 曲調は、第1曲よりも大分調子良くなります。
 第1曲がゆったりとした農村風なのに較べて、より都会的といいますか、都市とまではいきませんが、よりテンポの速い町中を連想させます。
 その一方で、曲が明るい事は第1曲と共通していて、部分的に短調になる部分はあっても、基本には明るさがあり、町の人々が気力に満ち溢れ積極的に商工業に勤しんでいるようなイメージが感じられます。

 次の第3曲は<Soil Erosion and Floods>(日本語に訳すと「土壌の侵食と洪水」……ですかねえ?(汗))
 この曲は、今までの二曲とは打って変わって、ゆっくりとした暗い曲調の曲です。
 いや、暗いというより悲しげという方に近いかもしれません。
 中間部の激しくなる部分では、不協和音が多く使われ、まるで悲しみで泣き叫んでいるかのようです。
 やはり、タイトルの洪水は悲劇的な状況を表しているのでしょうか。わたしなんかは、「河」と「洪水」というと、ついナイルみたいなイメージがあって、人々に恵みをもたらすありがたい現象という意味かと思っていたのですが、どうやら全然違っていたようですね(汗)

 最後の第4曲は<Finale>(これは日本語に訳しても「終曲」で間違いないでしょう(笑))
 これまた冒頭は聞いたことがあるメロディーなのですが、こっちは第1曲の冒頭と同じ「賛美歌の調べによる交響曲」の、第4楽章の方で使われていたメロディーでした。
 この辺りの共通する部分もあって、この組曲「河」は、「賛美歌の調べによる交響曲」(こちらの方が9年ほど前に作曲されています)との繋がりについて、多くの人より指摘があったようです。
 この第4曲は、終曲だけあって、一番力強い曲調です。
 もともと、ここで使われているメロディー自体がそういう傾向が強いのですが、それに加えてオーケストレーションもメロディーを強調していて、より華やかに盛り上げるように金管楽器と高音楽器が主体になっています。
 さらに、最後の最後は、第1曲の冒頭のメロディーが戻ってくるところなんかは、トムスンのこのメロディーに対する拘りが感じらますし、このメロディーが大好きなわたしにとっては非常に嬉しい演出です。

 全体としてみても、親しみやすいメロディーがふんだんに登場する明るい曲という印象が強く残ります。
 メロディーが強調されている事もあり、オーケストレーションはかなりシンプルなのですが、単純ではあっても単調ではなく、退屈しない曲です。
 それに、何と言っても明るく楽しい曲ですからね(笑)(2002/11/15)