V.マッコイ アフリカン・シンフォニー

岩井直溥 編曲

指揮岩井直溥
演奏東京佼成ウィンドオーケストラ
録音1997年4・5月
カップリングハムリッシュ 「追憶のテーマ」 他
「ニュー・サウンズ・スペシャル 25周年記念盤」の一部
発売東芝EMI
CD番号TOCZ-9288


このCDを聴いた感想です。


 吹奏楽の世界では良く知られている曲ですが、普通のクラシック好きの方にとってはそれほど馴染みのある曲では無いと思います。
 しかし、一部だけで愛好されているのは正直言って惜しい。そこであえて取り上げました。
 ただ、この曲を聴くのにはいくつか条件があります。その条件を満たさない方には残念ながらお勧めできません。
 その条件とは。

 一、『侘び』とか『寂び』といった精神と無縁の方。
 一、音楽に哲学など高度な精神を求めない方。
 一、『壮大』とか『迫力』といった大げさな音楽を好まれる方。
 一、繊細さが無くても一向に構わない方。

 だいたい、以上の条件を満たせれば大丈夫だと思います。
 ちなみに、わたしは全ての条件を立派に満たしています(笑)

 まあ、だいたい条件から想像がついたと思いますが、派手で破壊力のあるパワフルな曲です。
 一言で言えば『燃える』曲といったところですね。
 アフリカらしく(?)タムタムなどが入ったリズムセクションは、力強く、それでいて跳ねるようにリズミックで、精神をどんどん高揚させていきます。
 そして、何といっても主役はホルンです。
 派手な曲というと、きっと金管がこれでもかというほどに出て来るかと思われたでしょうが、実はホルン以外はそれほどでもありません。
 トロンボーンはいくらか見せ場があるのですが、トランペットに至っては「そういえば、曲の後半でメロディーを吹いていたっけかな?」と記憶の海から引っ張り上げなければならないほどで、ほとんど印象に残っていません。
 いや、正確にはトランペットもそれなりに出て来てはいるのです。しかし、全てはホルンの圧倒的なインパクトの前に影が薄くなっているのです。
 なにしろ、曲の後半でトランペットがメロディーを吹いている部分は、ff(フォルティッシモ)で思いっきり吹いているのにもかかわらず、途中で入ってくるホルンの合いの手の方が、遥かに存在感があるのですから。
 そのホルンは、高音でメロディーを朗々と吹いたり、象の「パオーン」という吼え声のような合いの手を入れたりと、格好良く目立つ要素が目白押しです。
 しかも、全員、血管がぶち切れそうな勢いで吹き鳴らし、異常に分厚いサウンドを生み出しているのですが、それがまた曲に合っているのです。
 わたしは、高校時代にこの曲を演奏した時に、「もしかして、この曲のホルンはいくらでも人数を増やせて、しかも多ければ多いほど良いんじゃないだろうか?」と思ったのですが、このCDでは、実は岩井直溥が再編曲して、本来はたしか4本だったホルンを14本に増やしており、「なるほど、編曲者もやっぱりそう思っていたのか」と思わず納得してしまいました。
 そりゃ、14本もホルンがいれば目立つはずです。
 ついでに、あまりの迫力に、聴いている方も演奏している方も、とても冷静ではいられません。
 わたしが演奏した時の経験だと、演奏者全員が興奮のあまり、最後の方になるとどんどんテンポが速くなってしまい、指揮者に何度注意されてもなかなか直らなかったぐらいです。
 いや、頭ではわかっているんですが、どうしても体がついつい先へ行ってしまうのです(笑)
 この演奏はプロの演奏なのでもちろん速くなってしまうことは無く、最後は逆に大きくテンポを落として終わるのですが、それはそれで流れに逆行しているみたいで今一つ納得できなかったりもしますが。

 ちなみにこの曲は、タイトルに「シンフォニー」とついていますが、クラシック音楽かというと微妙……いや、これはクラシック音楽ではないでしょう。少なくとも原曲は、CD店に行ってもクラシックのフロアには置いてありません。
 作曲者のヴァン・マッコイ(Van McCoy 1944〜1979)は、代表曲「ハッスル」をつくるなど、ポップスやダンス系の作曲家で、このアフリカン・シンフォニーも、原曲はもっとリズムの要素が強い、ノリの良い曲です。
 ただ、演奏は「ヴァン・マッコイとソウル・シティ・オーケストラ」であり、バックは実はオーケストラです(他にもバックコーラスやらいろいろ加わっているようですが)。
 このオーケストラは、聴いた感じからいっておそらくポール・モーリアのグランド・オーケストラみたいなものだと思うのですが、それでも弦楽器が入っていますし、吹奏楽版ではなくオーケストラ版に編曲したら、意外と原曲の方により近い雰囲気になるのかもしれません。
 この原曲自体も、昔のFM番組のテーマソングに使われていたりと、有名な曲ではあったのですが、この演奏の指揮者でもある岩井直溥が吹奏楽曲に編曲した事で、さらによく知られるようになりました。
 わたしも、この吹奏楽版で知ったクチで、前々からこの感想で取り上げたいとは思っていたのですが、原曲がポピュラー系の曲と知り、取り上げるかどうかかなり迷いました。
 しかし、よくよく考えてみれば単なるマイ・ルールなのですから、別にポピュラー系の曲を取り上げてはいけない理由などありませんし、なにより、わたしはこの曲が好きなので、ここは欲望に素直に従いました(笑)(2004/1/24)


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