S.S.プロコフィエフ 交響曲第7番 嬰ハ短調 <青春>

指揮ジャン・マルティノン
演奏パリ音楽院管弦楽団
録音1957年10月29日・11月2日
カップリングプロコフィエフ ロシア風序曲 他
発売ポリグラム(DECCA)
CD番号POCL-4557(460 880-2)


このCDを聴いた感想です。


 最初の音を聴いた瞬間から、その音の薄さには驚きました。
 ロシア(ソヴィエト)の曲とはいえ、演奏しているのがパリ音楽院管で指揮者もマルティノンですから、ロシアと聞いて反射的に想像するような固い大地のような重厚な演奏ではないだろうとはある程度予想していましたが、実際にはわたしの予想を遥かに上回っていました。
 高音も低音もちゃんと出ているのにもかかわらず、上下の厚みはほとんど感じられず、音が全て中空の、ある一つの面に集められているかのようです。
 まるで、立体をペタッと平たくして2次元の面にしたような感じなのですが、上下が無い代わりに、この面には横の広がりがあります。
 金箔が可能な限り薄くして表面積を稼いでいるように、この響きは上下に薄い分、横へは限りなく、それこそ地平線の彼方までどこまでも広がっていくように感じられます。
 そして、この薄い面を彩ってアクセントとなっているのが音色です。
 特に管楽器は、和音としての響きよりも、楽器の固有の音色を目一杯強調しています。
 ビブラートを強くかけたりしてメロディーをよく歌ってもいるのですが、それ以上に、音色だけで大きな存在感があり、強く印象付けられると共に、豊かな彩りを添えています。
 ただ、その反面、ただでさえ薄い響きのところに各楽器の個性も強く出ているものですから、統一された響きというのはほとんど求める事ができません。
 ついでに、アンサンブルの精密さの方も、これもパリ音楽院管の伝統なのでしょうか、大枠では揃っているものの、どうやら細かい事には拘らない性質のようです(笑)
 さらに、「憂い」とかそういった精神性とも無縁です。
 第3楽章は、この曲の中でももっとも感傷的な性格が強い楽章なのですが、そんな楽章すら、根底に明るさがあり、ふと立ち止まって情感を感じるような雰囲気ではなく、流れるように曲が進み、どこか楽天的です。
 これが他の楽章ではさらに華やかで、フォルテで楽器が増えるほど色彩が鮮やかになっていき、第2楽章の最後なんかは、あまりにも入れ替わり立ち代り楽器が交代し、その度に音色がくるくる変わるので、サイケデリックで目が回りそうになってきます。
 しかし、これだけ明るく華やかなのですが、不思議とお祭り騒ぎのような熱狂性はあまり感じられません。
 これも音が薄いからなんでしょうが、地面に足をつけているような人間性がさほど無く、別に神々しいわけでもなんでもありませんが、どこか宙に浮いてカラッと乾いた、そう、汗臭さを感じさせない明るさです。
 といっても、明るい事には変わりは無く、曲の終り方について、二つある版のうち、派手に盛り上がって終る方の版を採用していますが、この演奏にはそれがよく合っていると思います。

 おまけの話ですが、このCDには副題の「青春」がしっかりと標記されています。
 しかし、実際のところ、この副題って、どれぐらい世間に認められているものなんでしょうね(笑)(2003/7/26)


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