S.S.プロコフィエフ 交響曲第1番 ニ長調<古典>

指揮カレル・アンチェル
演奏チェコ・フィルハーモニー管弦楽団
録音1956年2月11,13日
カップリングプロコフィエフ バレエ組曲「ロメオとジュリエット」
発売SUPPRAPHON
CD番号11 1949-2


このCDを聴いた感想です。


 グリム童話に「狼と七匹の子山羊」という話があります。
 有名な話ですから粗筋は省略しますが、その中に、狼がお母さん山羊に化けて子山羊たちのもとに戻ってくるシーンがあることは、みなさんご存知かと思います。狼がお母さん山羊の振りをして家に入ろうとするものの、変装している事がバレバレというところですね。
 この演奏を聴いていると、なんだかその狼が思い浮かびました。
 古典交響曲は、プロコフィエフが「もしハイドンが現在も生きていたらこういう曲を書いたのではないか」という発想を基に作曲した曲です。たしかに規模は小さく、古典派っぽく、しっかりとした額縁がついた絵のように枠の中に収まっています。しかし、古典派っぽくといっても、プロコフィエフの作曲ですから、伴奏のアクロバティックな動きや大胆な転調はさすがに斬新で、古典派風であっても仕立て直してリニューアルしたという感じでしょうか。
 多くの演奏では、斬新なところと古典派風なところの双方の特徴を一体化させて、上手く整えています。表面上は古典的な雰囲気を保ちながら、内に斬新さを備えている、つまり羊の皮を被った狼というわけです。
 で、アンチェルの演奏ですが、羊の皮を全然被れていません。あきらかに斬新さが皮を突き抜けて表に飛び出しています。
 動きはより激しく、アタックは叩きつけるように全力で、第4楽章のようにいろいろな動きが絡み合う部分などは、調和させてフォルムを保つのではなく、むしろ思いっきり衝突させて高い緊張感を生み出しています。
 メロディーの歌わせ方も「優雅に」とかあるいは「スッキリ」という言葉からは遥かに遠く、一番似合う言葉は「攻撃的」というぐらい、フレーズの最後に向かって一直線に突き進み、最後はアタックを短くバシッと決めて閉めるという、まるで剣道の技のような切れ味があります。
 ゆったりとした第2楽章や第3楽章では、多少は優雅だろうと思いきや、そんなことは全くなく、メロディーの横の流れより、リズムの縦の流れの方が強調されていて、古典派どころか「春の祭典」の方がよほど近い曲に思えてくるほどです。
 第4楽章に入ると、動きの激しさはもう最高潮です。馬のギャロップも同然で、常に静止することなく、上下に激しく動き続けます。聴いていると、自然にヘッド・バンキングしてくるぐらいのノリの良さで、こうなってくると、副題の<古典>なんて遠いかなたへ消し飛んでいます。
 リズムのキレは良いですし、緊張感も高いため、ついこの演奏ばかり聴いてしまい、久しぶりに他の指揮者の演奏を聞くと、「この曲って、こんなに古典派っぽい曲だったのか!」と驚く羽目になるのが欠点といえば欠点でしょうか。
 あと、もう一点残念なのが録音です。モノラル録音なのは、同じ頃(1956年)西欧では既にステレオ録音が始まっていたことを考えると、たしかにちょっと遅れていますが、東欧としてはそう珍しいことではないでしょう。
 問題はそこではありません。
 これはリマスターによるものかもしれませんが、やたら残響が多い点なのです。
 わたしは、残響が多い録音はむしろ好きな方ではあるものの、さすがに多すぎます。ほとんど風呂場の一歩手前で、音楽に締りがなくなってしまうため、こればかりはどうにかして欲しかったものです。(2009/12/19)


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