S.ラフマニノフ パガニーニの主題による狂詩曲

指揮セルジュ・コミッショーナ
独奏P:ピーター・ドノホー
演奏バーミンガム市交響楽団
録音1978年1月14日
カップリングP.I.チャイコフスキー バレエ音楽「白鳥の湖」 他
発売日本クラウン(BBC classics)
CD番号CRCB-6026(SCD-4191)


このCDを聴いた感想です。


 打鍵の力強さが光る演奏です。
 バシッバシッと叩きつけるような打鍵は、それだけで圧倒するような迫力があり、聴いているだけで爽快な気分になります。
 当然、フォルテの部分ほどその特長が生きています。例えば第5変奏(Tempo precedente)などは、非常に激しくパワフルで、同じ和音を3つ連続で叩くフレーズでは、あまりも全力なためピアノが壊れてしまうのではないかと思えてくるほどです。
 終盤の第19変奏(A tempo vivace)以降の速い部分などは、軽やかというよりパワフルで、力で一気に持って行きます。気合いとか勢いとかが前面に出てきていて、微妙な表情の変化を聴きとるという感じではないものの、聴いているだけで圧倒されます。
 また、ゆっくりとしたテンポでピアノが「怒りの日」のメロディーを刻み込んで来る第7変奏(Meno mosso)などは、音が重くというより鋭く、まさに突き刺すように厳しい雰囲気に引き込まれてしまいます。
 一方、音量の小さいピアノ部分では、さすがに叩きつけるような打鍵では無く柔らかく弾いています。しかし優しいというよりも、力を内側に閉じ込めたような音です。落ち着いた安らかな雰囲気とはまるで正反対の、ピアノでもむしろ緊張感はフォルテの時よりも高まっているのではないでしょうか。
 緊張感が高いのは魅力ですが、さすがに、有名な第18変奏(Andante cantabile)辺りは、硬すぎてロマンチックな雰囲気がだいぶ薄れています。こういう曲はもうちょっとリラックスして弾いて欲しいところですが、力が入り過ぎて逆にスケールが小さくなってしまっているのが残念です。
 まあ、この演奏当時、ピアノを弾いているドノホー(1953生)は弱冠24歳で、チャイコフスキーコンクールで第2位を獲得するよりも前ですから、若さが出てしまった面もあると思います。
 でも若さ故に力で押すあたりは、野球で若い投手が速いストレートのみでグイグイと押していくのを見るようで、気分が良いものです。多少コントロールがアバウトで表現が精緻ではなかったりしても、速いストレートはそれだけで三振が取れるのですから。もちろん、だからといってずっと力で押していけるものではないのはピアノも投手も同じで、次第に相応のテクニックを身に付け、将来力が衰えた時には、今度はテクニックでカバーしていくわけです。
 ちなみに、伴奏しているのバーミンガム市交響楽団は、ラトルが常任になるすこし前で、フレモーが辞任する直前の頃です。レベル自体はだいぶ上がっていて、ライブですから多少は乱れはあるものの、ソロを十分にサポートしています。力強いソリストに合わせて、オーケストラも、キレが良く、ピアノとの掛け合いでもピアノに対抗するかのように積極的に音楽を進めていて、互いに緊張感を高め合っています。(2011/6/25)


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