S.ラフマニノフ ピアノ協奏曲第3番 二短調

指揮シャルル・ミュンシュ
独奏ピアノ:バイロン・ジャニス
演奏ボストン交響楽団
録音1957年12月29日
カップリングラフマニノフ ピアノ協奏曲第1番
発売BMG(RCA Living Stereo)
CD番号09026 68762 2


このCDを聴いた感想です。


 バイロン・ジャニスの演奏は初めて聴きましたが、輪郭のハッキリとしたクリアな音が印象に残りました。
 やや強めの打鍵で硬く力強い音ながら、荒れたところが無く、ガラス細工のように、隅々まで整っています。
 メロディーもあまりロマンティックに歌わせたりはせず、むしろ音色の魅力を前面に出し、均整の取れた造形の美しさがあります。
 その一方で、力強さや取り澄ましたような美しさだけではなく、フォルテからピアノに一転するところなどは、ピアノに入ったところで潮が引くようにスッと柔らかくなります。これは、それまでのフォルテ部分の打鍵が強いだけにその対比は大きく、感傷的で、息をのむほどの情感が感じられます。
 もちろん、テクニックもレベルが高く、例えば第3楽章の冒頭の速い部分などは、アクロバティックな動きにあやふやなところがないばかりか、躍動感があり、地面に足をつけて歩かずに、常に宙に跳んでいるような軽さがあるのには驚きました。
 話によると、バイロン・ジャニスはホロヴィッツが唯一、弟子として認めた人物らしいのですが、この演奏聞くと、なるほど頷ける話です。

 さて、伴奏のオーケストラの方ですが、こちらはこちらでミュンシュらしいフランス的な響きのする音を出しています。
 とにかくサラサラとした軽い響きです。まるで白砂のようです。
 特に弦楽器は、ドロドロとした粘ったところが全く無く、ひらすら木目細かく薄く、それでいて蟻地獄の巣のように、一歩足を踏み入れたらどこまでも沈んでいきそうな底の知れない広がりを背後に持っています。
 しかも、低弦楽器がどっしりと構えていないのも、この傾向に拍車をかけています。
 この演奏では、低音は和音を下から支える土台ではなくあくまでもメロディー楽器であるため、高音のメロディー楽器に引けをとらないぐらい流れるように動いて行きます。

 ピアノソロ、伴奏ともに、どちらもロシア的な泥臭さや無骨さからは遥かに遠く、都会的で洗練されています。考えてみれば、このピアノ協奏曲第3番という曲は、アメリカで作曲されアメリカで初演されたのですから(亡命後の作品ではありませんが、ラフマニノフ本人も『アメリカのために作曲した』と言っていたそうです)、こういう演奏も意外と相応しいのかもしれません。

 ついでに、バイロン・ジャニスは、このピアノ協奏曲第3番を、この録音の数年後の1960年前後にドラティ指揮ロンドン響とマーキュリーに再録音しています。
 そちらはまだ未聴ですが、このソロにドラティがどう伴奏をつけるのかなかなか興味深い録音です。いつか聴いてみたいものです。(2004/1/10)


サイトのTopへ戻る