R.ワーグナー 歌劇「タンホイザー」序曲

指揮エーリッヒ・ラインスドルフ
演奏コンサート・アーツ交響楽団
録音1957年11月1〜3日
カップリングワーグナー ワルキューレの騎行と魔の炎 他
発売EMI(Capitol)
CD番号CDM 7243 5 65613 2 8


このCDを聴いた感想です。


 一本ではすぐ折れてしまう細い矢も何本も揃えば太く折れない。その諺をそのまま実践したかのような演奏です。
 演奏しているコンサート・アーツ交響楽団という団体は、ラインスドルフやその他二、三の指揮者と共演した録音で知られる程度で、詳しい実態はさっぱりわかりません。当時の録音しか残っていないことを考えると、某コロンビア響のように録音のために編成されたオーケストラか何かで現在は存続していないのでしょう。演奏技術の方もそれなりといったところでしょうか。個々の音の響きは浅く、頼りがいのあるものではありませんし、アンサンブルも厳密に揃ってはいません。
 しかし、全体揃うとこれが驚くほど厚い響きになるのです。
 これは演奏の精度が高いからではありません。全員がどういう音楽を目指しているのかがよくわかっていて、一丸となって一つの雰囲気を作り上げようとしているために、効果が増幅されて響きに厚みが出ているのです。
 これは全体で動いて強弱とつけていくという部分での一体感としても表れています。
 例えば、前半にクラリネットが巡礼の主題を演奏する少し前に、それまでの短調から長調へと変化する部分があります。この部分での、フォルテからピアノへと引きながら最後にストンと長調へ落ち着く変化は素晴らしいものでした。まるで一つの生き物の変化のように全体が結びついています。この一体感は他の第一級のオーケストラでもなかなか感じられないのではないかと思います。
 そこに一本太い柱となっているのがチューバです。
 チューバが入るだけで響きがさらに厚さを増します。いや、単に厚くなるだけではなく、チューバを中心に一体感が出てくるのです。
 こういう曲のチューバですから常に登場しているわけではありません。しかし登場した瞬間に、大きな存在として全体をグイグイ引っ張っていきます。
 このチューバによって、他の演奏とは一味違う、独自の聴き所を備えた演奏となっているのです。(2005/11/26)


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