R.ワーグナー 歌劇「タンホイザー」序曲

指揮ウィレム・メンゲルベルク
演奏アムステルダム・コンセルトヘボウ管弦楽団
録音1940年10月27日
発売及び
CD番号
HISTORY(205254-303)
キング(KICC 2055)
Music&Arts(CD-780)
Q DISC(97016)
CANTUS(CACD5.00148)


このCDを聴いた感想です。


 メンゲルベルクが残した3種類の「タンホイザー」序曲の録音のうち、以前、最初の録音をとりあげましたが、今回は3番目の録音、最後の録音にして、唯一のライブ録音をとりあげます。
 第2回目の録音が、1932年でしたので、この演奏は、それから8年もたった演奏になります。
 当然、メンゲルベルクのスタイルも多少変化を見せています。
 以前の2回の録音が、音楽の流れが直線的で、前に進む力が強かったのに比べ、この演奏では、重点を置く部分では、より大げさに強調し、また、それに至るまでの流れを、よりスムーズに導くよう、かなり曲線的な演奏になっています。
 また、ライブとはいえ、40年代の録音だけあって、以前の演奏よりはるかに細かいニュアンスまで聴き取ることができます。
 特に、巡礼の部分とヴェーヌス山の部分の雰囲気の対比は鮮やかです。
 巡礼の部分は、トロンボーンの主旋律と、ティンパニーに重点が置かれており、和音の響きが荘厳な雰囲気を醸し出すといった感じでは全然無く、むしろ力強さの方が目立ちます。
 トロンボーンの主旋律は太く強靭で、それにティンパニーの力強いロールが加わることで、何者にも惑わされないような強さに溢れています。人間的な弱さや迷いとは全く無縁の世界で、「これだったら、巡礼に行く必要ないんじゃないか?」と思ってしまうほどです。
 中でも秀逸なのが、ティンパニーのロールです。ロールが終わりに8分音符が一つ付いているのですが、この8分音符をかなり強めに分けて叩くことで、いかにも「弱さを完全に断ち切りました!」という雰囲気がでています(まあ、感じるのはわたしだけかもしれませんが……(汗))
 一方、ヴェーヌス山の部分では、テンポ指定自体がAllegroと速くなっています。
 メンゲルベルクは、テンポ自体はさほどいじらず、スピード感を保っています。
 しかし、その代わり、メロディーはかなり歌わせた上に、ポルタメントまでつけてるため、いかにもヴェーヌス山! と言いたくなるくらい官能的な雰囲気を漂わせています。
 さらに、速いパッセージのめくるめくような動きと、ダイナミクスの波のような激しいうねりが、その雰囲気に拍車をかけています。
 タンホイザーというと、主人公が愛欲に負けそうになり、その弱さを(姫の)祈りによって、死んで贖うという、人間的な弱さが大きな比重を占めている歌劇だったと思いますが(あってたかな?)、この演奏では、弱さを、祈りによってやっとのことで乗り越えたりするどころではなく、愛欲も何もかも、力によって捻じ伏せる! という、「それじゃ、話が5分で終わってしまうじゃん(笑)」と思ってしまうほどの印象を受けます。
 ……いいのかな〜 わたし、こんなこと書いてて…

 で、録音の方なんですが、わたしは、この演奏は3種類持っています。
 一つが今回取り上げた、10枚で3000円しない! という、とってもリーズナブルなセットの中の1枚で、もう一つが、Music&Arts社のPubulic Performances(CD-780)の中の一枚で、最後が、キングから出ていた「陶酔! メンゲルベルク 不滅のライブ」の中の一枚(KICC 2055)です。
 正直に言いまして、今回取り上げたCDが一番音が悪いと思います。
 音が篭り気味で、楽器間の分離がハッキリしていません。それに、何と言っても、上に書いたティンパニーのロールの最後の強めの一発が全く聞こえません。
 だったら、ノイズリダクションをかけてる所為かというと……これがまた、雑音も三枚の中で一番多いんですよね〜。
 じゃ、取り得は無いのかというと、ハイ、全く無いです(笑)。  ですから、聴くなら、この10枚組みの中の1枚ではなく、それ以外の2枚で聴いていただきたいところです。ただ、この2つとも入手するのが難しくなってるんですけど。
 あ、でも、念のため。これが良くなかったからといって、10枚組に含まれている演奏全ての録音が良くないとは限りませんよ。
 わたしは、他の演奏については、まだ、あまり注意して聞いてないので、もしかしたら、今まで発売されたどのCDよりも音が良い演奏が含まれているかもしれません。(2000/12/22)


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