R.ワーグナー ジークフリートのラインへの旅 〜楽劇「神々の黄昏」より〜

指揮フリッツ・ライナー
演奏シカゴ交響楽団
録音1959年4月18日
カップリングワーグナー 楽劇「マイスタージンガー」第一幕への前奏曲 他
発売BMG(Living stereo)
CD番号09026 63301 2


このCDを聴いた感想です。


 予めお断りしておきたいのですが、実はわたし、この「ジークフリートのラインへの旅」が含まれている、楽劇「神々の黄昏」を見た事や聴いた事がありません。
 ニーベルングの指輪全体でも、序夜「ラインの黄金」、第一夜「ワルキューレ」と、第二夜「ジークフリート」の途中まではビデオで見た事があるのですが、第三夜「神々の黄昏」に行きつく前に「ジークフリート」で挫折してしまいまして(汗)
 そのため、「神々の黄昏」の粗筋も良く知らず、「ジークフリートのラインへの旅」がどういう状況での曲かという事まであまり分かっていません。
 これがまだ序曲とか前奏曲といった独立性の強い曲ならまだ内容を知らなくても何とかなるのですが、こういう劇の中に入る曲は、大抵の場合、話の筋と音楽が大きく関係してくるので、劇の粗筋さえ知らずに書くというのは、本当はあまり好きではないのですが、たまたま聴いたこの演奏が、非常に印象に残ったのであえて書かせて頂きます。

 わたしが、一体どこがそんなに印象に残ったのかといいますと、演奏のスケールの大きさです。
 ライナーというと、他の演奏では、スケールが大きいとか小さいよりも、筋肉の塊のような引き締まった演奏というイメージがあるのですが、この演奏はそれ以上にスケールの大きいことに驚きました。
 始めの方の辺りなど、モヤモヤとした雰囲気の中から、低音からゆっくりとメロディーが立ち上がって、次々と重なって分厚い響きになるように楽譜がなっているのですが、ライナーの演奏では、楽器の音にしっかりとした芯があり、音そのものが太いため、低音でも音が痩せたりせず、ハッキリとした存在感があります。
 それが立ち上がっていくにつれ、さらに雪だるま式に音が膨れ上がり、酸素中毒を起こしそうなぐらい濃密な響きを形成していくのです。
 さらに、低音の弦楽器から始まったメロディーが次第に厚くなり、それが頂点に達する辺りでトランペットやトロンボーンの金管群がメインになるのですが、この金管群がまた強力です。
 録音の具合もあるのかもしれませんが、音が若干割れ気味で、さらに、ハーモニーも完璧というには少々濁りが生じているのですが、それを忘れさせるぐらい力強さに溢れています。
 こうなると、若干の濁りも、逆にそれがワイルドな魅力に思えてくるほどです。
 音色も、向かってくる敵をバッタバッタとなぎ倒していくかのような、打ち抜いて来る音色です。
 これは、針みたいに突き刺してくるとか、突き抜けて来るというイメージではありません。
 もっと大きいハンマーみたいな物を超高速で発射したみたいなもので、当たる物を全て粉砕して耳にまで届いてきます。
 一方、ホルンは少し異なっています。
 こちらの方は、例えるなら『格好良い』といったところでしょうか。
 雲雀のように高く伸びる音で、曲の真ん中当たりにある6/8拍子の有名なソロはもちろんの事、フォルティッシモ等の音量で他の金管楽器と一緒に出てくる時でも、一段浮き立って聞こえます。
 その上、他の金楽器と異なり音をほとんど割らず、毅然とした雰囲気で登場するため、ピシッとスーツを着込んだエグゼクティブとでも形容したくなってきます。
 これらに、さらに弦楽器と木管楽器が加わるわけです。
 特に弦楽器は、フォルテの際の太く引き締まった力強さ共に、音色の瑞々しさは素晴らしいものがあります。
 この瑞々しさによって、金管がいくら力強く咆哮しても曲から浮いてしまわず、一体感を保ち続けられるため、スケールが大きくなるというわけなのです。(2003/1/25)