R.ワーグナー 楽劇「ニュルンベルクのマイスタージンガー」第一幕への前奏曲

指揮ジュゼッペ・シノーポリ
演奏ニューヨーク・フィルハーモニック
録音1985年10月
カップリングワーグナー 歌劇「さまよえるオランダ人」序曲 他
発売ポリドール(Grammophon)
CD番号POCG-1275(419 169-2)


このCDを聴いた感想です。


 ひたすら分厚く長大な演奏です。
 これは、単にハーモニーが厚いというだけではありません。
 そもそも楽器の音自体が太い上に、メロディーを演奏しているときでさえ、和音がそのまま動いているかのように、重厚な音なのです。
 しかも、このメロディーの歌わせ方というのがまた、大河のように泰然としています。
 そもそもテンポからして遅めなのですが、メロディーは、さらに後ろへ後ろへと引っ張っています。
 もう、「じっくり」というより「ねっとり」と形容したくなるぐらい、ビブラートをたっぷり効かせて歌いこんでおり、これでもかとばかりに重々しく堂々と歌わせています。
 その上に、分厚いハーモニーが重なるわけですから、これはもう、密度の濃い音の塊が次々と押し寄せてくるようなもので、聴いているほうとしては、その圧倒的な音の流れが目の前を通り過ぎていくのを、呆然と見送るばかりです。
 さらに、この演奏のもう一つの面白い特徴として、妙に低音にこだわっている点があります。
 もともと低音はハーモニーの土台を支えるパートですから、特にワーグナーのようなドイツ系の曲では強めなのが当たり前なのですが、この演奏では、そういう強さではありません。
 ハーモニーの土台としての縁の下の力持ちなのではなく、メロディーとして主役を張っているのです。
 単独の音としてよりも、動きが強調され、完全にメロディーパートとして扱われており、その強調のされ方は、場合によっては高音楽器のメロディーを上回るほどです。
 こういう点も、シノーポリの独特の観点に基づくものでしょうか。なかなか興味を引かれる面白い演奏です。(2003/12/6)