R.ワーグナー 楽劇「ニュルンベルクのマイスタージンガー」第一幕への前奏曲

指揮ウィリアム・スタインバーグ
演奏ピッツバーグ交響楽団
録音1956年4月18日
カップリングワーグナー 「パルジファル」前奏曲 他
発売EMI
CD番号CDM 7243 5 65208 2 0


このCDを聴いた感想です。


 この演奏は、管楽器、特に金管楽器がほとんどハーモニーになっていません。
 ……といっても、音が合っていないという意味ではありません。
 音が合う合わないという点では、ちゃんと、ハーモニーとして合っています。
 では、どういう意味かといいますと、音が響きとしてまとまって聞こえず、各楽器のそれぞれの音が融けあわずにそのまま耳に届いてくるのです。
 たぶん、これは演奏のせいというより、録音かマスタリング、もしくはリマスタリングが原因でしょう。
 もしかして、一つの楽器に対して一つのマイクで録音したかのでしょうか、まるで楽器の目の前で聴いているかのように、生の音がホールの壁面に反射した響き無しに直接、それぞれ単独で聞こえてきます。
 しかも、演奏の方も、音を絞って切り込むように鋭く音を出していて、さらにスタッカート気味にスパッと切っているため、ますますその傾向が強くなっています。
 前半(第40小節)に登場する、金管が『タンタタター』という動きに続いて4分音符で和音を積み重ねていく部分では、あまりにも音を短く切っているため、『タンタタター』は『タッタタタン』になっていますし、続きの4分音符も、音と音との間に休符が入って、8分音符+8分休符に聞こえます。
 この部分は、大抵の演奏では、分厚い和音の豪華さがアピールポイントなのですが、この演奏では、恰幅の良い紳士に対して、筋肉ムキムキで対抗するみたいに、他とは反対に、響きを絞りに絞って鋼のように固く引き締まっている点が、聴き所になっています。
 こういった、短く切った響きと生の音が直接聞こえてくる点は、意外と利点もあり、中間部(第122小節)の木管が冒頭のメロディーをいろいろ展開して行く部分では、同じパートの第1奏者と第2奏者が全く異なる動きをしているぐらい本当に楽器毎に動きがバラバラなのですが、それがちゃんと手に取るように動きが丸わかりという面白さがあります。
 もともと、楽譜の指定からして、スタッカートが多いのですが、この演奏では、それこそレガートの指定がある部分以外は、全てスタッカートで演奏しているみたいに思えるほどです。

 ただ、この演奏で一つ気になったのは、スタインバーグとピッツバーグ響にしては、今一つアンサンブルが揃っていない事です。
 いや、たしかに、曲の中で半分くらいは、アンサンブルもピッタリと揃っていて、さすがピッツバーグ響と満足できるような仕上がりです。
 ところが、その一方で、『こんなところで!?』と思えるぐらい目立つ場所で、大きくずれているのです。
 そのほとんどが縦の線なのですが、それでも一箇所や二箇所の話ではありません。
 揃っている部分が良く揃っているだけに、余計に、ずれている部分が目に付きやすく、聴いていてかなり居心地の悪さを感じます。
 スタインバーグの他の演奏で聴く限りは、ピッツバーグ響はアンサンブルに無神経とはとても思えないだけに非常に不思議です。(2003/9/20)