R.ワーグナー 歌劇「ローエングリン」第1幕への前奏曲

指揮アルトゥール・ボダンツキー
演奏ベルリン国立歌劇場管弦楽団
録音1927年9月9日
カップリングワーグナー 歌劇「リエンツィ」序曲 他
「WAGNER CONDUCTORS ON RECORD」の一部
発売Pearl(Parlophone)
CD番号GEMS 0024


このCDを聴いた感想です。


 この曲は、ワーグナーの序曲の中では珍しく(?)ピアノが中心で、厚い響きになるのは中間の一部に限られています。
 そのため、大音響が不得意な古い録音でも比較的ハンデが少なくてすむわけです。
 この録音も、録音年は1927年とかなり古いのですが、曲のおかげでそれほど古さは目立っていません。
 さて、演奏の方ですが、ハーモニーの雰囲気の移り変わりの妙が最も印象に残りました。
 この曲はみなさんもご存知の通り、初めの方は、弦楽器の首席奏者及びその隣の奏者で構成された弦楽四重奏の拡大版の一群、それからそれ以外の大勢の弦楽器奏者で構成された一群、さらに管楽器群の三つの群が交代に和音を演奏しながら、ピアニッシモから次第に盛り上げていきます。登場する音はその和音だけで、メロディーらしいメロディーは、しばらく先に行かないと登場しません。
 この三つの群の受け継ぎが印象深いのです。
 受け継ぎがスムーズに行なわれるのはもちろんですが、だからといって音色が統一されていて良いと言いたいのではありません。
 むしろ音色としてはかなり違いがあり、そこが良いのです。
 管楽器群は少し輝き気味の明るい音、その他大勢の弦楽器群は、広く暖かいしっとりした音、そこに、ソリスト群が透明な冷たい音でサーッと入ってくる様子は、それぞれの違いが浮き出し、非常に鮮やかな変化を見せています。
 また、音色は大きく違っていても、調子は静かに柔らかくと揃えられているため、その受け継ぎに違和感はなく、その変化は流れるように滑らかです。
 さらに、和音も、明るいものや暗いものなどさまざまな和音が代わる代わる登場しますが、明るいものは希望に満ち、暗いものは灰色に沈むといったように、それぞれ雰囲気が良く出ていて、その移り変わりにも感じ入りました。
 一方、中間部の響きが分厚くなるフォルテの部分は、録音が古い分厳しいところですが、この演奏は、年代にしてはかなり健闘しています。
 さすがにシンバルなどのパーカッションが入ると割れ気味なのはある程度止むを得ないところでしょう。しかし、そこに至るまでの全体の響きは、高音は最初のピアニッシモからあまり強くせず、中低音をどんどん強くして響きを厚くすることで、古い録音にありがちな高音ばっかり目立つ耳にキンキンくるような響きにならず、どっしりと安定した重みのある響きです。
 テンポの方も、少し速めのテンポながら、頂点のここぞという部分では少し後ろに引っ張ってクライマックスを一段と盛り上げたりと、重くもたれず、かといってあまりにも速くてあっさりしすぎることもないという、ほどよい速さを保っています。

 指揮者のボダンツキーは、わたしは恥ずかしながら知らなかったのですが、歌劇の演奏で知られる指揮者だそうです。
 なかでもワーグナーの演奏に定評があった(全曲録音も何点か残っているようです)そうで、なるほどこれだけ雰囲気が上手いのも納得しました。(2004/11/6)


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