R.ワーグナー 歌劇「さまよえるオランダ人」序曲

指揮リヒャルト・シュトラウス
演奏ベルリン・フィルハーモニー管弦楽団
録音1928年
カップリングワーグナー 歌劇「リエンツィ」序曲 他
「Wagner Conductors on record」より
発売Pearl(Polydor)
CD番号GEMS 0024


このCDを聴いた感想です。


 リヒャルト・シュトラウスというと、今では作曲家のイメージが強いのですが、生前は指揮者としても著名だったそうです。ちょうどマーラーと似たような立場ですね。
 ただ、マーラーは1911年には亡くなってしまっているため指揮した録音は全く残っていないのに較べ、リヒャルト・シュトラウスは1949年まで生きていたため、自作を中心にけっこう多く録音が残っています。この二人、年齢としてはリヒャルト・シュトラウスはマーラーのたった4歳年下に過ぎないのですが、なにせマーラーが51歳で亡くなってしまったのに対して、リヒャルト・シュトラウスは85歳まで長生きしています。
 この演奏は、リヒャルト・シュトラウスがまだ64歳の若い(?)頃の録音です。一連の交響詩や交響曲は既に作曲していましたが、歌劇は半分強ぐらい、「イドメネオ」や「無口の女」はまだ作曲する前の頃です。
 さて、演奏の方ですが、即物的な解釈のはしりの指揮者との評判通り、速めのテンポで真っ直ぐに進んでいきます。
 録音が古いこともあって、厚い和音で押すというよりも、個々の楽器が強調され、その動きが絡み合って太い流れを作って進んでいくというイメージです。
 動きは複雑に絡んでいますが、各パートのまとまりは良く、細かい動きまで鮮明に分かれて聞こえ、途中でゴチャゴチャになったりはしません。さらにその一本一本の動きが太く、さすがベルリン・フィルだけあると、納得しました。
 また、基本は即物的な速いテンポでザクザク進みますが、途中でイングリッシュ・ホルンがメロディーを演奏するピアノの部分では、一段階テンポを落とし、メリハリを付けています。テンポを落とすといっても、大げさに天地の差ぐらいつけるのではなく、サード・ギアからセカンド・ギアといった感じで、明らかに差があるもののトップからローに落とすような極端なものではありません。自然に一つ落とす程度で、あまり流れを損なわないようにしているのでしょう。
 ただ、テンポは一段階でも、メロディーの歌い方はそれまでよりだいぶ表情を濃くしています。
 もともとそこより前の部分のメロディー自体、あまり表情を濃く付けるようなものではありませんが、このイングリッシュ・ホルンやそれに続くオーボエのメロディーは、大きく雰囲気を変えて特に念入りに歌わせています。
 面白いことに、それだけ表情を付けて歌っているのにもかかわらず、あまり哀愁とかそういった感情は聞こえません。むしろ、そういった感情は極力抑え、メロディーの動きの魅力を伝えようとしているように聞こえます。ワーグナーと対立するブラームスのように純音楽的に演奏しているようです。
 全体の歯切れの良い進め方といい、細部にあまりこだわりすぎず、全体を見通して一本にまとめ上げているという、構成の上手さを感じました。
 録音も、古めで全体での響きはあまり入っていませんが、雑音は少なく、むしろ個々の楽器についてはなかなか鮮明です。
 1928年の録音ということを考えれば、けっこう良い方ではないでしょうか。(2006/12/9)


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