R.シュトラウス 交響詩「死と変容」

指揮ウィレム・メンゲルベルク
演奏アムステルダム・コンセルトヘボウ管弦楽団
録音1942年4月14日
発売及び
CD番号
Refrain(PMCD-2)
Q DISC(97016)
NAXOS(8.110161)
ARCHIVE DOCUMENTS(ADCD.118)


このCDを聴いた感想です。


 太く良く響く演奏です。
 フォルテだろうがピアノだろうが関係なく音の線が太く、それが絡み合って響きも太さと厚みがあります。
 横に広がるというより、どちらかというと深く下に広がる響きで、非常に安定感が感じられます。
 響きはどっしりとして安定している一方で、メロディーの表情は濃く、歌い込んでいます。
 これは、多くの楽器が登場するフォルテの部分より、個々の楽器を聞き取りやすいピアノの部分の方が特徴がよく表れています。
 冒頭の部分などがその典型で、ゆっくりと刻むようなリズムに乗っかって登場するヴァイオリンなどの動きは、二つの音の間を行き来するような単純な動きですら、緊張と弛緩を使い分けて大きく表情を付けています。続いて登場する木管やヴァイオリンソロのメロディーは、今度は力をできるだけ抜いて、強さを出さないよう抑えています。しかし力を入れないようにしながらも表情は濃く、伴奏の重い響きから浮かび上がって一つ高いところで存在感を放っています。苦しみの地上に対する天界の救いといったところでしょうか。
 テンポは遅い部分と速い部分との差が大きく、伸び縮みもあり、ポルタメントすら時々入ってきますが、あまり崩れた印象は受けません。全体で大きな枠はきちんと作っておいて、その中で自在に動かしているようです。
 そう感じた理由の一つは、たしかにテンポの速い部分と遅い部分の差は激しいのですが、そのテンポになってからは一定のテンポを保ち、伸び縮みする部分も特に重要なところでの大きなブレーキなど変化が限られていることがあります。
 さらに、これがもっと大きな理由だと思いますが、リズムがはっきりと出ているという点です。
 低音やティンパニーといったリズム系のバランスが強めですし、なにより一音が一音が硬めで粒が明確に表れています。
 これは、全体の響きを引き締めるという効果もあります。全体の響きは下に広がった重いものですが、だらしなく広がったり後ろに引っ張ったりしないのも、リズムが硬くしっかりとしているためではないかと思います。
 リズムがハッキリしているのは、速いテンポやフォルテの部分でも変わらず、音の出だしが硬く、力強い音楽を作り出しています。
 ただ、ピアノと違ってフォルテでは、残念にも録音に限界があり、細かいところまで聞き取ることができません。
 リヒャルト・シュトラウスのような大掛かりな管弦楽ではこのハンデは痛いものです。特に低音などは、いろいろと複雑な動きのをしているにもかかわらず、他の響きに隠されて輪郭があやふやになってしまい、かなりぼやけてしまいました。
 1942年のスタジオ録音ですから、当時の録音では標準、メンゲルベルクとしては録音最晩年でかなり良い方ですが、さすがに後年の録音のようにはいきません。

 メンゲルベルクはR.シュトラウスを得意にしていたわりに、残した曲目はそれほど多くなく、この「死と変容」以外は、「英雄の生涯」と「ドン・ファン」しかありません。
 そのくせ「英雄の生涯」や「ドン・ファン」はそれぞれ二種類ずつ録音が残っていたりしますが。
 いや、実は「死と変容」についても、全曲録音こそ一種類ですが、本当はもう一種類、ニューヨーク・フィルと1924年に部分的に録音したものが残っています。おそらく年代からして機械録音でしょう。
 この演奏、実はちゃんとCD化されているのですが、問題はそのCDというのがニューヨーク・フィルが自主制作で作ったセットの中の一枚なのです。
 全10枚組みで、価格も2万だか3万だかとにかく目の玉が飛び出るような価格でした。
 いくらこれでしか手に入らないとはいえ、たかだか10数分、いや部分録音ということを考えると10分以下かもしれない音源のために何万もつぎ込むというのは、さすがに無理です。
 まあ、10枚中、メンゲルベルクはこれだけですが、他の演奏も聞いたことがないものばかりですし、他も聞いてみたくなった時に、また考えることにしましょう。
 ……とかなんとか言ってのんびりと構えているうちに店頭どころか中古店からも姿を消して、 二度と手に入らない希少盤になっている可能性が非常に高そうですが。(2006/9/30)


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