R.シュトラウス 交響詩「ティル・オイレンシュピーゲルの愉快な悪戯」

指揮フリッツ・ライナー
演奏NBC交響楽団
録音1952年1月19日
カップリングドビュッシー 小組曲 他
「The Art of Frits Reiner Vol.1」の一部
発売WHRA
CD番号WHRA-6024


このCDを聴いた感想です。


 ライナーはリヒャルト・シュトラウスを得意にしていただけあって、管弦楽曲を中心にシカゴ交響楽団とRCAに多くのスタジオ録音を残しています。しかし定番の管弦楽曲の中で、この曲と「死と変容」だけは、なぜかシカゴ交響楽団とではなくウィーン・フィルと録音しています。「ドン・ファン」などはシカゴ響と2回も録音しているのに、この2曲をなぜシカゴ響とスタジオ録音しなかったのかは不思議なところです。一応、両曲ともウィーン・フィルとの録音が唯一のスタジオ録音ではなく、1950年にRCA交響楽団と録音しています。とはいえ、演奏している「RCA交響楽団」というのは、かなり実態不明の団体で、録音用の寄せ集めとも、既存の団体が契約上名称を出せない場合に変名として使われているとも言われています。その上、年代を考えると99%モノラル録音でしょうから、結局、スタジオでのステレオ録音であるウィーン・フィルとの演奏がライナーにとってこの2曲の代表的な録音ということになります。
 ただ、ティル・オイレンシュピーゲルについては、シカゴ響との演奏が全く残っていないわけではありません。ライブなのでモノラルですが、ウィーン・フィルとの録音(1956年)よりも後の1957年の演奏がCDになっています。そちらは録音状態は正規録音ほど良くないとはいえ、ウィーン・フィルとはまた違うパワーがあります。
 さて、今回取り上げる演奏ですが、今まで挙げてきた3種類の録音とはまた別の4種類目、当時ライナーがちょくちょく客演していたNBC交響楽団とのライブ録音です。
 録音年は1952年ですから、2種類のスタジオ録音の間にあたり、ライブということを考えると最も録音状態が悪そうなものですが、そうでもありません。モノラル録音とはいえ最後期ですし、年代を考えてもかなり良好な方です。ちょうど同じNBC交響楽団をトスカニーニが指揮して、ほぼ半年後に同じティル・オイレンシュピーゲルを録音していますが、その演奏よりも録音はむしろ鮮明なくらいです。特に個々の楽器の分離がかなり良く、細部まではっきりと聞き取れます。
 演奏の方も、分離が良い録音の特性を生かし、さらにライナーの明快な音楽作りもあって、非常に動きがクリアに表れた演奏です。
 しかも、NBC響のパワーもあって、音の一本一本が太く、それがまた集まり、まるでワイヤーロープのように太い線となって、グイッと迫ってきます。
 響きも太いのですが、響きの厚みに個々の動きが埋没することなく、動きの一つ一つが手に取るようにわかり、しかもその動きが楽器から楽器へと次々と受け継がれ、楽器はいろいろ変われども、全体として完全に一本の大きな流れになっています。個々の動きが明快であるため彫が深く、展開も、前の音楽がこうだからその流れで次の音楽がこうなるというのが、R.シュトラウスの複雑な管弦楽法を因数分解したようにピタッと示されていて、まさに説得力のある演奏とはこういうものだと感じました。(2010/12/11)


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