R.シュトラウス 交響詩「ティル・オイレンシュピーゲルの愉快な悪戯」

指揮ルドルフ・ケンペ
演奏ドレスデン国立歌劇場管弦楽団
録音1970年6月
カップリングR.シュトラウス 交響詩「ドン・ファン」他
「Kempe Conducts Richard Strauss - 1」の一部
発売EMI
CD番号CMS 7 64342 2


このCDを聴いた感想です。


 定評のあるR.シュトラウス全集の一曲で、いかにもドレスデン国立歌劇場管らしく温かみのあるよくまとまった響きのする演奏です。
 R.シュトラウスの曲といえば、音がいろいろ複雑に絡み合っていますが、ケンペの演奏は、それぞれの動きをことさら強調したりせず、全体として一つの大きな音楽がまずあり、個々の動きはあくまでもその大きな音楽を構成する要素となっています。動き同士が鋭くぶつかり合ってドラマチックな音楽を作るのではなく、柔らかく結びつきあって全体で同じ方向を目指して進んでいきます。
 動き同士がぶつからずうまく同居しているため、響きはかなり厚みく聞こえます。しかし、息が詰まるような重苦しさはありません。響きに濁りが無く風通しも良く、空気が良く混ざったアイスクリームのようにフワッとした軽さを感じるほどです。
 メロディーの歌わせ方も題材のわりにそうやんちゃではなくどちらかというと上品です。ソロがある楽器にはD管のクラリネットもあり、他の演奏ではその尖った音色からエキセントリックな点を強調する吹かせ方も多いのですが、この演奏では音色はたしかにD管(使われている楽器はEs管だと思いますが)らしく鋭い音色であるものの、他の楽器による響きの一枚上に軽く乗っかるような感じで、エキセントリックというより軽さとスピード感により存在感を出しています。
 音色がほどよくブレンドされて柔らかくまとまっている中で、個々の楽器の音色という点では、やはりホルンに耳が向きます。
 吹いているのはおそらくペーター・ダムでしょう。冒頭すぐにソロがあって目立つとい事もありますが、深めの音色にうっすらとかかったビブラートがなんともいえない香りを生み出しています。さらに深い音色にもかかわらず動きも軽々としています。15分近くかかる曲ですが、ソロが出てくる最初の1分だけで、もう元が取れたと思ってしまったぐらいです。
 ソロの音色はともかくとして、全体のまとまった響きは、オーケストラの力も大きいのですが、指揮をしているケンペによっているのももちろんです。
 そのケンペの持ち味は、オーケストラの響きだけでなく、テンポの設定にも表れています。
 速過ぎもせず遅すぎもせず中庸の程よいテンポ。なにより音楽の運び方に余裕が感じられます。
 どの場面でも、テンポ主導で音楽を引っ張るのではなく、音楽の流れの方にテンポを合わせています。そのため、テンポ自体は意外と伸び縮みがあり、途中でかなり極端にテンポが落とすところまであるにもかかわらず、全く不自然に聞こえません。まさに音楽の流れによりそのテンポになったというように聞こえるのです。
 なるほど「スタンダードな演奏」とはまさにこういう演奏を言うのだろうと、納得しました。(2007/4/7)


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