R.シュトラウス 交響詩「ティル・オイレンシュピーゲルの愉快な悪戯」

指揮ヨーゼフ・クリップス
演奏ウィーン交響楽団
録音1972年8月8日
カップリングシューベルト 交響曲第9番<ザ・グレート>
販売ORFEO
CD番号C 234 901 A


このCDを聴いた感想です。


 上品な雰囲気の中にも楽しさが感じられる演奏です。

 無闇に力を入れすぎたりしないで、適度に抑えて響きを重視した演奏なので、堅苦しい雰囲気にならずユーモラスな曲調によく合っています。
 また、メロディーもよく歌っているのですが、粘らせて歌わせて曲の楽しさを損ねるようなことはありません。あくまでも明るく楽しさに溢れ、華やかな雰囲気があります。
 しかも響き重視とはいえ、クリップスはバランス的にメロディーを少し浮き立たせ、横の流れを重視しているため、テンポ感がとてもノリの良いものになっています。

 この曲には、使われる機会の少ないD管のクラリネットが使われています。
 実際に演奏する場合は、もしかしたらEs管のクラリネットで代用されているのかもしれませんが、このD管のクラリネットは、一般的に使われるB管やA管のクラリネットと較べて管が短いため音域が高く、音色的にも、よりエキセントリックな目立つ音色です。
 この曲でD管のクラリネットは、ティル・オイレンシュピーゲルの人をくったような性格を象徴しているかのように、軽快な上に曲の流れに逆らうかのようなちょっと変わったおどけた動きをしています。
 この演奏のD管のクラリネットもそういう性格を強調したような演奏で、鋭く目立つ音色でオーケストラの中から浮き立たせています。
 しかも、全体は響きを重視した気品ある雰囲気のため、このクラリネットが余計に特徴的に聞こえます。

 演奏しているウィーン交響楽団は同じ場所にウィーン・フィルがあるため比較されてどうしても低いレベルに見られがちですが、実はヨーロッパでも有数の技術を持つオーケストラだと思います。
 この演奏は、サヴァリッシュが常任指揮者を辞任して次にジュリーニが来るまでの常任指揮者不在期間という、レベル的には不安定な時期の演奏のはずですが、ライブの演奏にもかかわらず、アンサンブルの乱れはほとんどみられません。
 さらに楽器の音色やメロディーの歌い回しなどは、ウィーン・フィルと良く似ていて、やはり技量・雰囲気等全てに渡って、音楽の都であるウィーンの中心的オーケストラとして相応しいものだという事が強く感じられます。

 実はわたしは、以前はこの「ティル・オイレンシュピーゲルの愉快な悪戯」という曲はあまり好きではありませんでした。
 メロディーの一つ一つは魅力的だったものの、全体としてはどうも捉えどころがなくゴチャゴチャしているような印象があったのです。
 しかし、横の流れを重視したこの演奏を聴くことで、この曲のおもしろさが朧げながらわかってきたような気がします。(2001/9/14)