R.シューマン 交響曲第4番 ニ短調

指揮ジョン・バルビローリ
演奏ニューヨーク・フィルハーモニック交響楽団
録音1937年11月7日
カップリングP.I.チャイコフスキー 交響曲第5番
発売DUTTON
CD番号CDSJB 1007


このCDを聴いた感想です。


 バルビローリのニューヨーク時代の遺産の一つです。
 オーケストラとバルビローリ本人双方にとって不本意な時期で、半ば黒歴史に近い扱いを受けているようですが、この演奏や、同じCDに収録されているほぼ同時期のチャイコフスキーの第5番を聴くと、なかなかどうして、評判が今一つの時期とは思えないくらい立派な演奏をしています。
 ニューヨーク・フィルというパワーのあるオーケストラの力を上手く生かした、力強くしかもキレのある演奏です。
 特にそれがよくわかるのが第3楽章です。
 楽章の冒頭から登場する力強いメロディーで、まず刻んでいく音自体が、一つ一つクッキリとした輪郭で粒が際立っています。そのキレのある音で、真っ直ぐ勢いを保ったまま突き進んでいくのです。まるで機関銃の弾を跳ね返して進む戦車のように、重量感とパワーを兼ね備えて、テンポを伸び縮みさせたくなる多少の抵抗など踏み潰して力で押し切っています。途中で第2楽章のメロディーが戻ってくる部分は、あまり表情をこめて歌いこんだりせず、バルビローリにしてはサラッと軽い印象を受けましたが、この辺りも、曲の勢いを重視しているのかもしれません。
 第1・4楽章も、キレの良さが最も印象に残りました。
 なにより音の粒がピシッと立っていて、しかも少人数のオーケストラのように細く鋭いのとは違って、太くズシッと響く重みを備えています。
 これが非常にテンポ良く突き進んでいるのですから、聴いていても非常に爽快な気分になってきます。
 それにしても、こういうキレのある演奏というのは、わたしのバルビローリのイメージからはちょっと想像できないものでした。
 バルビローリというと、どうしても戦後のじっくりと歌わせた演奏のイメージがありまして。
 まだ若い頃なのでそういう傾向があったという事もあるのでしょうが、一つ思い浮かんだのが、前任者のトスカニーニの影響です。
 キレがあって力強いというのは、考えてみればトスカニーニの演奏そのものです。トスカニーニ時代の空気がまだオーケストラに残っていたのではないか……まあ、あくまでも勝手な推測です。
 さすがに、後年のNBC響改めシンフォニー・オブ・ジ・エアみたいに、「誰が指揮者として前で振ろうが関係ない。俺たち(演奏者)はただトスカニーニの音楽をやるだけだ」ってことは無いとは思いますが。
 例えば、ゆったりとした部分でのメロディーの歌わせ方も、トスカニーニのようにあからさまに歌いこむのではなく、だいぶアッサリと自然に近い形ですし。
 本当は、トスカニーニとバルビローリの別のシューマンの演奏を聴けば一番ハッキリするのですが、トスカニーニのシューマンは第2番とラインしかないようで、バルビローリに至っては、もしかしたらこの演奏以外にシューマンの交響曲の録音は無いのではないでしょうか。数多く録音を残しているバルビローリがシューマンだけ録音してないというのはちょっと信じられないのですが、いろいろ探しても見つけられなかったのです。
 そう考えると、実は、意外と貴重な録音なのかもしれません。

 そういえば、この第1・4楽章は(第3楽章もそうですが)どちらも、きちんと繰り返しを行なっています。戦前の演奏、しかもライブで全て繰り返しをしている演奏という点でも、ちょっと珍しいのではないでしょうか(2006/1/28)


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