指揮 | クリストフ・フォン・ドホナーニ |
演奏 | クリーブランド管弦楽団 |
録音 | 1988年2月 |
カップリング | R.シューマン 交響曲第1番<春> 他 交響曲全集の一部 |
販売 | DECCA |
CD番号 | 452 214-2 |
クリーブランド管の機能性がフルに発揮された演奏です。 アンサンブルがキッチリとまとまり締まっているのはもちろんのことですが、それ以上に音のキレに驚かされました。 初めの序奏部を別にして、主部のアレグロに入ってからは、テンポ自体が速めということもあり、音の一つ一つにスピードが乗っていて、高速でハイウェイを走っているかのような爽快感があります。 これにティンパニーがまた拍車をかけています。 バランス的にも、ティンパニーがかなり強めで存在感があります。その上、音も硬いため、ますます音楽全体のキレが良くなっています。 このティンパニーの硬めの音は、アタックにも存分に生かされており、ここぞという部分での一発を強く叩き込むことで、音楽を一層引き締めています。 この傾向は、第3楽章のようなゆったりとした部分でも変わらず、多少雰囲気は柔らかくなるものの、ロマンチックな方向性は少なく、音楽が極めて明快に進んでいきます。 そのため情感はあまり感じられないものの、曲の構造が浮き彫りになり、メロディーとそれ以外の楽器の組み合わせの妙などの、また別の楽しさがあります。 ただ、冒頭の序奏部だけは別で、ここだけは非常に柔らかく、朝もやのような神秘的な雰囲気があります。 アクセントも最初の内はアタックをつけず、踏み込んだような重いアクセントで、ボワッとした空気を壊さないようにしています。 それが、次第にテンポが速くなってアレグロに近づくにつれ硬くなって行き、雰囲気もどんどん明瞭になってきます。 そして、テンポが速くなってアレグロの主部に入る頃にはすっかりキレの良い音楽に変わってしまうというわけなのです。 この移り変わりはなかなか上手いと思います。 もう一つ特筆すべき点として、ピアノ(弱音)の透き通った響きがあります。 これはテンポの速い部分とゆっくりした部分の両方に共通するのですが、ピアノの音がとても綺麗なのです。 特にフォルテから急にピアノに落ちるところの扱いは最高で、地面が無くなってもそのまま宙に浮いているような無重力感覚が感じられます。(2002/2/8) |