R.シューマン 交響曲第1番 変ロ長調 <春>

指揮オットー・クレンペラー
演奏ニュー・フィルハーモニア管弦楽団
録音1965年10月
カップリングR.シューマン 交響曲第2番 他
「シューマン交響曲全集」より
発売EMI
CD番号CMS 7 63613 2


このCDを聴いた感想です。


 クレンペラーらしい遅めのテンポで堂々とした演奏です。
 音の一つ一つががっしりとした非常に骨太なのですが、音と音の間を埋める響きが少なく、柔らかさや丸みはほとんど感じられません。建物でいうと鉄骨むき出しで床もコンクリート打ちっぱなしといったところです。
 音同士を馴染ませて見栄え(聴き栄え?)を良くしようなどという飾りは一切無く、妥協無しにギリギリまで音をぶつけたような厳しい響きで、まさに質実剛健以外何物でもありません。
 響きをほとんど取っ払ってしまっているため、各パートの動きは驚くほどクリアに聞こえます。もともとクレンペラーはメロディー以外の動きも重視するタイプな上に、オーケストラの並び方もヴァイオリンが1stと2ndが左右に分かれる旧タイプですから、ますます動きが鮮明に浮かび上がります。この曲には、同じメロディーを一回目は2ndヴァイオリンが弾いて、二回目は1stヴァイオリンに引き継いで弾かれるというパターンが結構登場しますが、その移り変わりもしっかりと聞き取ることができます。
 ただ、さすがに左右に完全に分かれていると距離があり、受け渡しにわずかにズレが生じていますが、これはこの並び方である限りある程度はしょうがないところでしょう。
 クレンペラーの厳格さは、メロディーの歌い方にも表れています。
 もっとも重視されているのは正確なテンポ。気持ちを込めすぎてテンポを伸び縮みさせるなんてとんでもないことです。
 そのため、メロディーから自由とか楽しさはあまり感じられません。とても「春」などという楽しい副題が付いた曲だとは思えないほどです。
 ただ、だから良くないと言いたいのではないのです。逆に、この演奏は、メロディーがきっちりと規律正しいところが魅力なのです。
 硬く、どうだとばかりに堂々としていて、これほど立派な歌い方は他ではお目にかかれません。
 伴奏も一回一回念を押すようなリズムの取り方で、まるで一歩ずつ踏みしめながら歩いているみたいに重みがあります。
 たしかに、胸のすくようなスピード感やはつらつといった気分が高揚するような演奏ではありませんが、堂々と、それこそ座敷で大黒柱を背に座らせても絵になる、どっしりと威厳が感じられる演奏です。
 聴き応えという点では、これに勝る演奏はちょっとないのではないでしょうか。(2005/12/24)


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